スリンの決断
王宮で、スリンは、大勢の侍女に外出を妨げられていた。
「いけません。王女様。王様の許しなく王宮を出ることは禁じられております」
「ええ、その決まりは知っているわ。でも、今はわたくしが王の代わりだわ。
父上の喪が明けたらわたくしが王になるのだもの」
「ですが」
なおも言いつのろうとしたスリンをそっとオンディーヌが引っ張り、スリンに耳打ちした。
「わかりました。それではおとなしく部屋に戻りますので」
態度が急変した王女に戸惑いつつも、侍女たちはスリンが部屋に戻るのを見ていた。
部屋に帰ったスリンは返ってきたウムスに向かって、心から安堵の笑みを見せ、抱き付いた。
「よかった。とっても心配したのよ」
ウムスは、突然のことに目を白黒させながらもうなだれた。
「ごめんなさい」
「いいえ。こちらこそ、ごめんなさい。このご時世にあなたを一人で外に出すんじゃなかったわ」
ウムスは表情を硬くした。
「……それは、僕が光を失っているから?」
「そういうわけじゃないわ。精霊狩りが横行しているこの時に、わたくしの大切な友人を一人で歩かせるべきじゃないということよ。
あなたは確かに力がある。それこそわたくしなんかよりもずっと。でも、わたくしが知らない間にあなたになんかあったら、わたくしは後悔してもしきれないから」
それを聞いてウムスは安堵半分、悲哀半分といった表情を見せた。
「本当に、僕はひねくれものだね」
「あなたに何があったか知らないけれど、あなたがひねくれているとは思わないわ」
スリンの言葉に、ウムスは心から安心してスリンに身を預けた。
「今なら、聞けるかもしれない」
オンディーヌがスリンにそっと耳打ちをしたが、スリンはかぶりを振った。
「今はまだその時じゃない。ウムスは話したくなったら自分で話してくれるわ」