スリンの捕縛
「それにしても、お父様はいったい何をさせたかったのかしら」
自分を犠牲にしてスリンをかばい、その結果スリンを追われし者にした。それによって守りたかったのは、スリンか、王女か。
もし王女だったら哀しいと思ってしまう。
「お父様。もしお父様なら、今のわたくしに何をさせるのでしょうね」
そう、呟いた瞬間。
「スリン様。拝謁したいという方がいらっしゃいますが、いかがなされますか」
「どなたですか」
慌てて入ってきた侍従に、スリンは落ち着いて尋ねた。
「イレサイン・メルーナーと名乗っております」
「通して」
短く、かつ鋭く放たれた言葉に侍従は一瞬驚いたが、すぐにひれ伏すと廊下をかけていった。
「もう少し落ち着けないのか」
しばらくして、スリンのもとに尋ねてきたメルーナーは開口一番そう発した。
「わたくしが気にしていないからいいのよ。
それにしてもほかに言いようがあるでしょうに」
メルーナーはそのスリンの言葉を鼻で笑った。
「この場合、あなたが気にしているか否かは関係ないのではないか」
「イレサイン・メルーナー。いまわたくしはそういう話をするために通したわけではない。さっさと要件を言いなさい」
ともすれば冷淡ともとれる態度でスリンは言い放った。
「察しのいい王女殿下ならばすでにわかっていらっしゃると思いますが、今一度ご説明申し上げたほうがよろしいでしょうか」
スリンはため息をついた。
「回りくどい言い方は飽きたわ。とっとと用件だけ言いなさい。それ以外の話は聞かないわ」
メルーナーは笑った。
「それでは要件を申し上げましょう。王女殿下、あなたを精霊使い(フェリア)として、とらえさせていただきたく存じます」