始まり
「おはようございます、陛下」
一人の少女がスリンの部屋に入ってくる。
「ありがとう、レイナ」
そういってスリンはレイナが持ってきた茶器をとる。
「今日は、なんでも陛下からお話があるとか」
スリンは曖昧にほほ笑んだ。
「ええ」
「楽しみですわ。陛下のお話が伺えるなんて」
そういいことかどうかは分からないけど、とスリンは心の中でつぶやく。
「さあ、早く支度をしてしまいましょう。みなさんがお待ちですよ」
広間に出ると、宰相や大臣たちがスリンの到着を待っていた。
「ついに腹をくくられましたか」
「ええ。そうでないとやっていられないでしょう?
私は人より暗殺される心配も少ないの。頼りになる精霊たちがすぐそこにいるから」
窓の外には、民衆が大勢集まっていた。
スリンは微笑んで、民衆に向かって手を振った。
「わたくしはこの間、襲われました。
それはわたくしが精霊使いだからだったのです。
今この国で精霊狩りが蔓延っているそうですが、わたくしすら襲うほど、彼らは手段を選ばなくなっているのです。
それはおかしいことだと思いませんか?」
民衆がざわつき始めた。
「わたくしが彼らに言いたいのは、精霊使いだからといって襲うのはやめていただきたいということです。
それぞれを見てください。その人がどんな人なのかは話してみないと分からないでしょう。周りに左右されて自分の考えも持たずにある種の人たちを襲うのはおかしいと思いませんか。
わたくしからは以上です。みなさんが賢明な判断をすることを祈ります」
女王の真摯な言葉は、民衆の胸に届いたようだった。
その次の日から精霊狩りは徐々に減っていった。
完全に無くなるのは遠い未来になりそうだが……。
これは、スリンの輝かしい治世の第一歩だった。
やっと終わりました。ですが、これは後編じゃなくて中編になりそうです。
まだまだ回収しきれていない伏線がいっぱいあるので。
更新が2年近く開いてしまったことをお詫び申し上げます。
最終話三話前で更新が終わっていたことに最近気づきました。
精霊たちをこんなに出すんじゃなかった…と後悔しております。




