リィナに怒られる
「これが僕がアストフェリになったゆえんだ。精霊主様の言葉は正しかった。だって僕は精霊主様にそういわれた数年後に心から信じられる人に出会ったのだから。
それが僕の前の契約者だ。
――もう今となっては君だけどね」
スリンはウムスを抱きしめた。スリンの瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた。
「話してくれて、ありがとう」
ウムスはスリンに抱き付いた。
しばらく二人はそのままだった。
そののちに、スリンを呼びに来た侍女が扉をたたく音で二人は慌てて離れた。
ウムスの姿はただ人には見えないので、他の人から見ると、怪しい人と思われてしまうからだ。
「陛下、入りますよ」
侍女のリィナはそういって部屋に入った。
「いったい何なのですか、宰相を決めずに終わらせてしまうなんて」
開口一番、リィナはスリンにそう言った。
スリンは反論しようとしたがリィナに一にらみされた。
「大体どうして陛下はそんなにのんびりしていられるのです」
そういうとリィナはスリンの前に山ほどに文書を積み上げた。
「はい。明日までに終わらせておいてくださいよ」
「これってまさか……」
スリンはリィナを盗み見た。
「はい、そうです。本来ならばこれの半分は宰相閣下にやっていただくことになるのですが、陛下がお決めにならなかったのですべて陛下に回ってきているのですよ」
スリンは嘆息した。
「分かったわ。宰相を決めればいいのでしょう」
リィナの顔が輝いた。
「そうですわ、まさか陛下、まだお決めになっていらっしゃらないとかはありませんよね」
「本当はカンディにしようと思っていたんだけど」
リィナはようやく合点が言ったようだった。
「ああ、それでまだお決めになっていらっしゃらないのですね。
わかりました。お待ちいたしますとも。
その代り、しっかりお仕事はお願いいたしますね」
リィナにいいようにあしらわれた気がしつつもスリンは頷いた。
「それでは失礼いたします」




