即位式
スリンは、部屋に戻り、数多くの衣装と格闘していた。普段着ている服の何倍もの重ね着をするこの服は、とても着づらい。
侍女たちも手伝ってくれたが、やはり時間はかかってしまっていた。
何とかスリンが着替え終わり、やるべきことを再確認していると、侍女の一人が呼びに来た。
「王女殿下、時間でございます」
「分かりましたわ」
スリンは答え、精霊たちをこっそりと呼び寄せた。
「どこで、精霊狩り、フェリア狩りがあるかがわからないから、ずっとそばにいて」
七人の精霊は一斉に頷いた。
それだけのことを済ませると、スリンは部屋から聖堂まで続いているであろう真紅の絨毯の上を歩き出した。その後ろに侍女たちが付き従った。
スリンの足音は絨毯に吸い込まれ、何の音もしない。
王宮内の一番高い塔の一番てっぺんに、聖堂は、ある。そこまでスリンは徒歩で階段を上らなくてはならないのだった。
その階段の下まで来たとき、スリンはさすがにうんざりした。細くて急な螺旋階段で、装飾はとても美しく施されているけれど、それだけで何の役にも立たない代物だった。
「少しは上る人のことを考えてよね」
そう、文句を言いながら、スリンは階段を上る。最上階まで登り切ったとき、スリンは息切れを起こしていた。
「はあ。ここで、少し、息を整えてもいいわよね」
聖堂の前で呼吸を整え、豪奢な扉を開けた。
聖堂の中では、多くの貴族がスリンが現れるのを今か今かと待ち望んでいた。
スリンは聖堂の中央まで進み、聖壇の前で跪いた。そして聖夫がスリンの頭の上に王冠を乗せた。
「リュウア・スリン。そなたはこれより、我が国の王位を継承するものとなる。
スリン陛下、万歳」
聖夫がそういうや否や、貴族たちも万歳と叫んだ。
普段は静かな聖堂に、多くの声がこだました.
「わたくし、リュウア・スリンは、これより、王となり、この国をよき道へ導くと約束しよう」
スリンがそういい、聖夫は、これより、民衆へのお披露目をする、といったので、貴族の多くは広場の近くにある席へわれ先にと急いだ。
本来はお披露目の儀式は馬車に乗ってするものなのだが、スリンが拒否をしたため、馬に乗ってお披露目をすることになった。
スリンは誰にも気づかれないようため息をついた。
それに気づいたジルフェは咎めた。
「スリン様。民衆の前でそのような姿を見せることがありませんよう」
スリンは力なく笑い、それに答え、馬に飛び乗った。
従者の一人も連れずお披露目をするのはかなり異例である。
スリンは広場に向かって馬を進めた。そして民衆の前に姿を現した。
民衆は歓声をあげた。




