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第2話:出立

 師匠を亡くしてから、次に棒を人に向けた時は村を離れる時だと決めていた。それから三年、師匠の喪があけるまでその必要はなかった。この時期に村を出て行くことになったのは天命というものなのか。

 森に棒を振る音が響き渡る。林昭を連れて行くことにはしたが、物見遊山に行くわけではない。山を降りるまでに少しでも鍛えておきたかった。

 あまり体は大きくないわりに体力はあった。少々のことでは倒れないだけの気力もあった。風彪ふうひゅうにはそれが林昭にもともと備わっていたものなのか、流賊になってから身についたものなのかは分からなかったが、とにかくその点ではついていた。何かを守りながら戦うことほど難しいものはない。

 武術について心得は無く、それまで我流で槍を振り回していたようだった。基礎から鍛えなくてはならないので、少々時間がかかるかもしれない。


 風彪は教えられることはあっても教えることはなかったので最初は戸惑ったが、この五日間で教える側も教えられる側も随分、様になってきた。

 朝、食事の前に二刻(一時間)ほど棒を振らせ続ける。一つ一つのまず型を体に覚えさせるのだ。誤った動作があるとすぐ棒を飛ばす。矯正のためだが、相手の棒をかわす訓練でもある。

 驚いたことに林昭は始めこそまともに打たれたものの、それからは風彪が打ってもまともには打たれなくなった。無意識に体が反応して急所を外すのである。誰もが出来ることではない。風彪ですら師匠との訓練の中で長い時間をかけて習得した技だ。これもまた流賊の中で生きてきたために身についたものなのかもしれなかった。

 「林昭、飯だ」

 荷物の中から蒸餅(味をつけた小麦粉を発酵させ、蒸したもの)を取り出す。村を出る時に持ち出した食べ物はこれだけだ。他に風彪が持っているのは二本の棒と鄭範ていはんが置いていった路銀、それに弓矢一揃い。山を降りてから装備を整えなくてはならない。

 「はい、師匠」

 林昭は風彪のことを師匠と呼ぶ。一度はふさわしくないと言って断ったが、いっこうにやめようとせず、結局そのままになっている。

 林昭が流賊の中で過ごしてきたにもかかわらず、これほど真っ直ぐな性格をしているのが風彪には不思議でならなかった。だが、誰にでも人には知られたくない過去がある。無理に詮索しようとは思わなかった。何より林昭の目がそれを拒んでいるようにみえた。それに、自分にも明かせない過去がある。

無言のまま食べ終わると弓矢を取り出した。林昭が目を見張るのが分かった。

 「師匠、それは?」

 驚いて当然だ。この弓は山奥の武芸者が持っているような代物ではない。見事なつくりだ。漆塗りの弓身に花が舞い、その中を燕が飛んでいる。「‘飛燕ひえん’だ」

 並の男なら三人がかりでなくては弦も張れない強弓でもある。何よりこれは自分にとっては過去との唯一の絆である。

 師匠が死んでから三年間、飛燕を引かずに過ごしてきた。師匠の喪に服す間は弓を引くまいと決めていたからだ。だがこれからはそんなことは言っていられない。本当に必要になるまでに少しでも感覚を戻しておきたかった。それに、知人への土産が欲しかった。 弓を左手に、矢を右手に持って耳を澄ます。あたりはまだ薄暗い。隣にいる林昭の息遣いだけが聞こえる。緊張が伝わって来る。狩りをするときはあちこち動きまわるときもあれば、一ヶ所で待ち続けることもある。今日は何故か動かない方がいいような気がした。

 どれほど時間が経ったのだろう。背後にかすかな気配を感じた。振り返る。鹿だ。目があった。見つめ合う。お前に俺が射てるか。その目はそう言っていた。射つ、射ってみせる。矢をつがえて引き絞る。

 そのとき、世界は自分と相手だけのものになる。指先に、そしてその先に感覚を集中させる。何かが弾けた。次の瞬間、矢は風彪の手を離れ、乾いた風の音を残して鹿の眉間に突き立った。

 飛燕も自分も鈍ってははいない。ふと空を仰ぎ見ると、陽は中天にさしかかっていた。

 「急ぐぞ、日が落ちるまでに安陽に入りたい」


 森を抜けて安陽に着く頃にはもう暗くなりはじめていた。

 安陽は大陸の都市の中でも古い方に属しており、大陸暦二世紀あたりから史書に顔を見せる。

 東西に長い菱形のような形をした大陸には、ちょうど中央に巨大な山脈が南北に走っている。これは大陸東部で衝嶺と、西部ではミディス山脈と呼ばれる。この山脈により長い間東と西とはほとんど交流を持たず、それぞれ独自の文化を築き上げてきた。

 加えて寒冷な気候のため、文明が発達しても人の行き来はほとんどなかった。それが千年ほど前から緩み始め、山を越える旅人の数がだんだん増えてきた。

 山脈の南部を水源として東へ流れる安水のほとりに安陽はある。山脈の東側の旅人たちの中継地として発展した。そして人の行き来が盛んになると同時に物流も活発化し、また安陽は山脈だけでなく海に近かったこともあって東西交易の中心地となった。

 更に、安陽は交易都市としてだけでなく、木材や鉄の産地としても知られる。周りを山に囲まれた安陽では古くから木材の生産を行い、安水を使って下流に運ぶことで栄えてきた。加えて上質な鉄を産する鉱脈が上流で見つかってからは多くの鍛冶職人が集まる名工の町としても有名になった。彼らは自らの腕に絶対的な自信を持っており、たとえ相手が誰であろうと信念を曲げない硬骨漢でもある。

 それを示す逸話がある。


 第三帝国が大陸の西部を統一し、帝号を用いるようになるよりも遥か昔、帝国暦で紀元前一千年から八百年頃、つまり今から千四百年ほど前から千二百年ほど前まで、大陸の東側はれいという王国が治めていた。大陸で最も古い王国であり、第一王国とも呼ばれる。その国王がある時、全国の名工に王にふさわしい宝剣を作るよう命じた。

 その頃、王の庶兄、公子并が王位を継げなかったことを不服として、同調する公子(王の直接の子だけでなく王の弟や庶兄など王族を広く指して公子という)や卿、大夫と共に反旗を翻し、禮は建国以来最大の危機に陥っていた。この反乱は公子并に従った公子が四人いたことから公子并と合わせて‘五公の乱’と呼ばれる。

 王は自ら兄を断罪するつもりで、そのための剣を求めたのだといわれる。

 事情はどうあれ、その中で選ばれたならば大陸一の鍛冶職人として名を揚げられるとあって、誰もが持てる技術の全てを注ぎこんで剣を打った。

 ところが名工として知られていた安陽の王隆という職人は、王の命を受けて素人目に見てもとても名剣とは言えないなまくらを献上した。

 王は激怒し、王隆を捕らえて処刑しようとした。刑場へと曳かれる前、刑吏が言い残すことはないかと問うと王隆は落ち着き払ってこう言ったという。

 「王は自らにふさわしい剣を、とおっしゃった。だから私は王にふさわしい剣を献上したのだ。それなのに王は私を刑に処そうとなさる。やはり、王はあの剣にふさわしい」

 刑吏の報告を受けた王は一旦刑の執行を遅らせて自らその訳を問い正した。すると王隆はこう答えた。

 「真の王が天下を治めるのに武器は不要である。何故ならそのような王は徳をもって世を照らすからである。今、王は自らの武によって従わぬ者を討とうとなさっている。それでは真の王とは言えない。武は人を遠ざけることこそあれ、近づけることなどない。それも分からぬ王に我が剣は似合わぬと思ったまで」

そこで王は言った。

 「しかし今、反逆者が天下を脅かしている。武を用いずして鎮めることが出来ようか」

 王隆は考えた。いかに賢人ぶって見せても所詮は鍛冶屋の親父、この言葉もとっさに浮かんだ言葉ではない。(鍛冶屋の)王家に代々伝わる家訓のようなものである。だが、ここまで来て退く訳にはいかない。どうせもともと斬られる身だ、と腹をくくった王隆はこう言ったという。

 「それは私が考えることではない」

 彼がこの後どうなったかは史書に記述されていない。

 しかしこの時期を境に王の政治はがらりと変わる。ともすれば軍事を優先し、民に負担をかけるような政事は大きく変わり、当時賢人として知られていた公孫慶を招いて内政に力を入れ、禮の最盛期を築き上げたのである。


 王は死後、皓王こうおうおくりなされた。彼は今でも名君として人々に慕われている。


 安陽に入ると風彪はとある鍛冶屋の前で足を止めた。見ると両隣の両替商や飛脚屋よりも大きな店構えである。屋根は夕陽を受けて鈍く光っている。どうやらまだ新しいようだ。見上げると入り口にかけられている額には一文字‘王’と書かれてあった。

 中から出て来る者がある。人のよさそうなまるっこい顔をしている。番頭だろうか。

 「これは風彪様、お久しぶりでございます。今日はどういった御用で?」

 「おう、穆累ぼくるい。変わりないか?」

 「ええ、おかげさまで繁盛しておりますよ。」

 穆累が顔をほころばす。

 「そうか。戦だからな」

 「そういう言い方はよして下さいよ」

 今度は急に膨れっ面になる。

 「冗談だ。親父はいるか?」

 「今ちょうど工房から戻ってきたところですよ」

 「そうか。では上がらせてもらおうか。悪いが鹿を運んでおいてくれ」

 「はい、かしこまりました」

 風彪はまるで自分の家にいるようにずんずん奥へ行ってしまう。林昭も慌てて後を追う。

 奥まった部屋で‘親父’と対面する。

 「久しぶりじゃな。去年の秋以来か」

 「まだ耄碌もうろくしてはおらんようだな」

 親父の顔がほころぶ。よく見るとその熊のような顔には、過ぎ去った年月の跡がしっかり刻まれていた。

 「当たり前じゃ。そんなことではご先祖様に申し訳が立たん。お前こそ何をしに来た?まさか年寄りをからかうために、わざわざ下りて来たわけでもあるまい。また農具の修繕か?」

 風彪は少し躊躇い、そして親父を真っ直ぐ見つめて言った。

 「親父、いや王圭おうけい殿。私のために剣を打っては下さるまいか」

 空間を沈黙が支配した。それは一刻(三十分)にも二刻にも感じられた。長い静寂の後、先に口を開いたのは親父、王圭の方だった。

 「遂に、行くか」

 「はい」

 「ならばお前を止められるものはない。明日の朝、旅立つその時に剣を授けよう」

 それを聞いて風彪が怪訝けげんそうな顔をした。そんな風彪を見て王圭が笑う。

 「実を言うとな、お前の師匠が死んだと聞いた時から準備はしてあった。それを鄭範が十日程前に来て仕上げておけと言ったからな、もう出来上がっておる」

 「そうでしたか。いや、かたじけない」

 風彪が深々と頭を下げる。林昭も頭を下げた。

 一瞬、間をおいて王圭が尋ねた。

 「ところで風彪、隣におるのは誰じゃ?」

 風彪が反応するよりも早く口を開く。

 「風彪様の弟子、林昭でございます」

 「弟子?風彪は弟子など取らんと思っておったが?」

 「押し掛け弟子だ」

 風彪はそう言って苦笑しながら林昭が旅の道連れになった経緯を説明した。

 「そうか。いい目をしておる。この世間知らずをよろしく頼むぞ」

 「親父」

 風彪の抗議の声と王圭の笑い声が重なり合う。林昭もこの親父が好きになった。ふと目を移すと燭台にはいつの間にか明かりが灯っている。振り返ると陽はすっかり沈んでいた。


 その後は風彪が仕留めた鹿を肴に宴となった。席に連なっているのは風彪、林昭、王圭の三人だが、席はあと二人分ある。外からも声がするところをみると、宴はここだけではないのだろう。穆累がいないので彼が指揮を執っているのかもしれない。

 「一人は仕事で遅くなると連絡があった。もう一人はこの町にいるかも分からんが、念のためじゃ。先に始めることにしようぞ」

その言葉を合図に三人は料理に箸をつけた。

 「風彪、行くと言ったがどこへ行く?」

 「まだ何も決めていない。しばらくは各地を見てまわるつもりだが」

 「ふむ。最近は戦続きで国境の警備も厳しい。‘武芸者とその弟子’では通れぬやも知れんぞ」

 「その時はその時だ」

 「相変わらず世間知らずもいいところだな」

 聞き覚えのある声だ。声のした方を見やると、いつの間にか暗闇の中に人影が現れていた。

 「鄭範、穆累は知っておるのじゃろうな」

 「あぁ」

 鄭範は適当に返事を返すと席についた

 「うまい。風彪、お前猟師になったらどうだ」

 「どういうことだ」

 「言ったままの意味だ。お前が獲って来た獣はみんなうまい。高く売れるぞ」

 「鄭範」

 「お前何もなしで昌を出られると思っているのか?」

 風彪は黙りこむ。

 「今、帝国は昌に対してかなり締め付けを強くしている。昌から来たというだけで監視の対象になる。この間も霊丘で大きな戦があったところだしな」


 霊丘は安陽から見て北東にある都市で、昌の重要な拠点の一つである。帝国との戦争の最前線であり、その先はもう帝国領だ。

 昌が帝国と直接国境を接しているのは北側のみ。東と南は共に海で西は帝国自治領と接している。山脈の北側は距離はあるものの、比較的なだらかで越えやすい。そのため西部の統一に一応の完成をみた帝国は北から東部へ進出した。

 逆らう国は滅ぼし、従う国は自治領として領土を縮小させた上で存続を認める。それが先帝の治世にはじまる帝国の手法である。

 そうして帝国は小国が乱立していた大陸北東部を約二十年で統一した。残るは昌一国。

 その昌と境を接している自治領は一つだけではない、がしかしここではそのうちの一国、オストマルクについてのみ触れておく。

 そもそも帝国自治領は完全な帝国の支配下にあるというわけではなく、せいぜい帝国には逆らわない、程度のものでしかない。ただし、軍事的な権限は一切ない。行政権の方は帝国に納めている税の多少によって決まる。

 オストマルクはもともと大陸西南部で強勢を誇った国であり、自治領となってなお繁栄し大幅な自治権を持っている。山脈のすぐ西にあり、当然東側との関係も深く、またそもそも繁栄の基は東部との交易であるため昌に対してあまり締め付けを行っていない。

 帝国も自ら自治権を認めた手前、今のところそれを容認している。更に言えばオストマルクが納める莫大な税無しに対昌戦争を続けていけないためでもある。


 風彪は下を向いて黙ったままだ。鄭範に尋ねてみる。

 「昌から直接帝国へは行けないということですか?」

 「そういうことだ」

 「回り道はありませんか?」

 「もちろんある」

 風彪が顔を上げる。

 「カフカス家に護衛を紹介してやった。トラキアとラルフという名だ。明日の朝、来ることになっている。オストマルクへ行く荷の護衛だ」

 カフカス家といえばかなり名のある大商家である。

 「それで、俺たちはどうしろと」

 鄭範や王圭が世間知らずだという理由がよく分かった気がした。風彪は疑うことを知らない。

 「私がラルフ、風彪様がトラキアということでいいですか?」

 「話が分かるな。名前はどちらでも構わん」

 「ちょっと待て」

 風彪にはまだ話が見えていないようだ。

 「鄭範は偽名を使えと言っておるのじゃよ」

 帝国は山脈の西で起こり、今でもその中心は西側にある。

 山脈の両側に住む人間に、特に山脈のすぐ近くに住む人間に外見的な特徴の違いはほとんどない。もともと同じ人種であり、東西交流が盛んになってからは混血が進んだためである。

そんな状態で出身地の決め手になるものの一つは名前である。

 今でこそ東で発達した表意文字と表音文字を組み合わせた大陸共通語があるものの、以前は東西で違う言語を用いていた。その名残が名前に残っているのである。

 東側では‘風彪’のように名前は漢字で表記される。先の字が姓で、もう一方が名を表す。古い伝統を持つ貴族の中にはそうした本名の他にあざなを持つものもある。

 西側では‘カルマ=カフカス’のように仮名で表記される。こちらは前が名を表し、後ろが姓を表す。本来は千年以上前、古代西部で用いられた表音文字を用いて表記するものだったが今ではほとんど使われない。

 このように東西での名前の違いは明らかである。


 「そういうことだ」

 そう言って鄭範は必要ないだろうがと言いつつトラキアとラルフを綴ってみせた。

 「トラキアは‘Trachia’、ラルフは‘Ralph’だ」

 「分かった」

 「林昭、お前は頼りになる。風彪から目を離すなよ」

 「はい」

 「お前ら…」

 その後は他愛ない世間話が続いた。そこへ穆累が来客を知らせてきた。


 「カフカス様が見えております」

 「おお、ちょうどよい。お通ししてくれ」

 「ちょっと待て、俺や親父はともかく風彪と林昭はその格好じゃまずいだろう」

 確かに自分と風彪は村を出てからずっと襤褸ぼろ一枚。

 「構わん。わしの家じゃ。わしがよいと言えばそれでよい」

 林昭はそこではじめて王圭があの王隆の子孫だと知らされた。いくらカフカス家でも鍛冶屋の王家に逆らうと安陽で商売することは出来ないのだとか。

 では、と一言残して穆累が下がる。ほどなくして最後の来客がやって来た。

 「王圭殿、お久しぶりです」

 隙のなさそうな目をしている。着ているものは商家の人間にしては華美を抑えた質素なものだ。

 「おや、シバス殿もご一緒でしたか。こちらのお二人は?」

 そう言いながらこちらに視線を向けてくる。その青い目には多少侮蔑の色が混じっているようにも見えた。

 「トラキアとラルフじゃ」

 「というとシバス殿が護衛にというのは」

 「この二人じゃ。腕は保障する」

 「そうですか、王圭殿がそうおっしゃるなら」

 と言ってカルマはこちらへ向き直って一礼した。

 「何か技を見せて下さいませんか?」

 その顔はまだ納得していなかった。


 最初は風彪たちの身なりを見て疑っていたカルマも風彪の弓を見て護衛として雇うことを決めた。

 「風彪、しばらくはトラキアだぞ」

 「分かっている」

 囲炉裏の炎が風彪の顔に影をつくる。目は虚空を見上げている。そこに映る炎は気炎なのか、それとも憎悪なのか。

 「鄭範、俺はこれからどうすればいい?」

 「好きにすればいい。親父の言う通り、誰もお前を止められやしない」

 風彪がうつむく。炎がはぜる。その瞳は何も映してはいない。

 「その目で世界を見て来い。それから何が出来るか考えればいい」

 遠くで鎚を振るう音が響いている。それに混じって時折強い風の音がする。風彪が立ち上がって出て行った。

 後に残った鄭範はそれからまだしばらく火を見つめていた。

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