プロローグ
「なんでなんだよ!そんなのオカシイじゃん!」
目の前の父親と母親に向かって怒鳴り声をあげる。
「親の都合で15年前に連れて来られて、今度も親の都合で連れて行かれるのかよ。1ヶ月だけなんとかならないのかよ。」
こんな事を言っても何にもならない事ぐらい自分でも分かっていた。けど、こんな事って…
夕食後、いつもはやかましくてにぎやかな父親とおっとりした母親がいつになく真剣な顔で俺に話しかけてきた。
「ナニ?俺、何も悪い事してないよ?そりゃぁ、学校の中にはdrugやったり、盗みやったりしてる奴いるけどね」
俺はいつものように冗談混じりで両親のことをあしらったが、両親は真剣な顔で俺のことを見てきた。
「ホントだって!」
確かに今まで警察のお世話にこそなったこと無いが、かなりやんちゃだったような気がする。でも、俺そんな悪いことしたか?
「あのな、慶。」
いつも夕飯のときには酒を飲んで、この時間は酔っぱらっている親父がこの日はシラフだった。何となく、雰囲気で何か重要なことを話すんだなということが分かった。
離婚か?親父のリストラか?母親の妊娠か?母親もそんな歳じゃない。俺は、覚悟を決めた。何が起こってもいい覚悟を。
「日本に帰るぞ。」
親父が言った。
「は?」