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いち

気がついた時、辺りは森だった。

そりゃもう文句の付けようもない位森だったとも。観光客のために整備されたようなものでもなければ畑山でもない。まさしく自然の、森。

私、夢遊病か?徘徊癖でもついたのか?と疑うが、明らかに日本の森ではない。というより見たことない樹?やら草やら花やらが盛り沢山。


そして私と言えば、ジャージの上着にジーパン、スニーカー。日本の街中にいる分には在り来りたがどこか分からぬ森の中では明らかに浮きすぎであろう。むしろここ、登山グッズいるんじゃね?というレベルである。コンビニに行こうとしていた身としては財布くらいしか持ち合わせていない。

というより、コンビニに行こうとドアを開けた瞬間からの記憶がない・・・寧ろ直結?いつから私の家のドアはどこでも行けるドア(略しはしない)になったのか。しかも一方通行かよ。後ろを振り返るも自分の家の玄関ではなく果てしなく森。


さて、どうするか。

普通迷子になればその場を動かないが鉄則ではあるが神隠し的な何かに巻き込まれたようなこの状況ではまず消極的自殺行為であろう。が、しかし動くにしてもどこに行けばいいのか分からない。対した装備も食料も持たない以上動いても更なる遭難が待っている。


そっと座り込み、地面に耳を付ける。何も聞こえない。当然である。別に私は超人でもなければ特殊な訓練を受けた人間でもない。

仕方なく身体を起こそうとするが、すると、音が聞こえた。

水の音とか足音とか、小説なんかである地面に付けたら聞こえる音なら良かったのだが、生憎今回聞こえたのは背後の草ががさりとなった音。人であればよい。のだが、聞こえこえてくるのは荒い息遣い。野生動物か?

ギシリと身体が固まるがギギギと振り向かせる。


そこにいたのは、犬。ここで野犬の類であればやばいことだろう。群れで行動しているだろうし下手をすれば変な病気を持っている。グルグルと唸り声をあげ、血走った目でこちらを見、今にも襲いかからんとしている犬。


目が3つに角があっても犬っていうのかは疑問だが。


「う、わっ!」


ビクリと身体に震えが走り、犬らしきものが突っ込んできた。固まる身体を叱咤し咄嗟に避けるも直ぐさま立ち直って再びこちらを狙って来やがる。額から突き出る角がメインらしく頭を突き出すように体当たりしようしてくるので転ぶように避ける。パニック状態に陥っていた私だったが、何度目かの体当たりの時、身体が勝手に動いた。

ぐるんと宙を回った犬もどきを地面にたたき付け、仰向けの状態で抑えつける。こう聞くとまるで私がどこかの小説みたく突然力が湧いたとかチートな力を付与されたと勘違いされるかもしれないが、残念ながらこれは単なる反射と反復である。

過去学生時代は柔道に明け暮れ青春を費やした人種であったため、たまにその時の記憶が身体を動かす。とはいっても今まで役に立ったのは自転車で派手にすっころんだ際に受け身を取り傷一つなかった時くらいだが。

それはともかく、犬もどきだ。寝技の要領で地面に押さえ込み、首を足で圧迫。やがて犬もどきは動かなくなった。落ちた。一応こう見えてまともな動物であったらしく、首筋にちゃんと頸動脈があり、さらに絞めて落とせたようだ。・・・死んでね?

まぁ相手は獰猛で見た目変だが犬である。マジな人間の力なら簡単に骨も折れるし圧迫死させられるだろう。初めて生き物を殺した身としては罪悪感に苛まれたりするものなのかもしれないが、それ以前に驚くことが起きた。

犬もどきが消えたのである。逃げたとかそんなものではなく、文字通り、解けるように消えた。

しかも、その後には何故かコインと角。

え、これなんてRPGですか?

とりあえず角を片手にその場から離れる。犬もどきのモンスター?である以上、習性的に近くに群れがいる可能性もあるからだ。


のちの生活の糧になるであろうコインはしっかりと財布に突っ込んだ。お金は大事だね。




その後宛てもなく歩き続けてみるが、全く人や森の出口にはぶち当たらない。やっぱ本格的にやばいのか。やたらと犬もどきや草もどきやその他もろもろに襲われるし。

あ、でも先程言った言葉は訂正しとく。なんか身体能力上がってるようだ。正確には重力が地球の半分とかそんな感じ。いや、だって私、確かに柔道とかやってたけど、そんなの高校の時だけで大学は思いっ切り引きこもりしてたし。

だらけきった生活により体力は減り筋力は少なくなり当時ですら重量級であった身体はどんどん体重を増やし締まりをなくした。今や○○キロを誇る私の身体が、軽い。

これだけ歩き回っているのに疲れない。(いや流石に休憩をいれているので一概に言えないが)

試しに石というか岩を持ち上げてみる。多少重いが持ち上がらない事はない。

ジャンプすると60cmくらい上がる。いや、意外と人間単にジャンプしただけじゃ30cmくらいしか上がらないから。低いとか言わないそこ。という訳でこの世界、というか星は地球の重力の半分位と仮定。身体能力強化やチートな力を付与された訳ではないのだが一般より能力が高くなっている可能性がある。いや他の人間も相応の能力である可能性もあるけど・・・むしろこの星に人間は存在するのか。そこが問題の気がしてきた。いたとしても重力半分だしめちゃくちゃ細長くて背の高いのとかだったら・・・十分有り得るから何も言うまい。

自分のこの星への適応性を心配しつつ、以外と犬もどきや草もどきを退治しながらコインや素材?を着々と集めている辺り心配は不要な気がしてきた。

まぁ、一番の心配と言えばさっきからぐぅぐぅとなる腹だろうか。お腹すいた。そもそもコンビニにご飯を買いに行くはずだったのだ。あれから半日以上。当然お腹はすく。今まであまりにも突然の展開に麻痺していたが一度自覚すると堪えがたいものがある。

しかし、私が食べられるものは存在するのか。今現在息も出来ているし重力以外に不調らしきものもないあたり、この星の環境は地球と似た大気や環境と思われるし、犬もどきをみる限り哺乳類も存在しそうである。(最後に消えてコインになる辺りは理解出来ないが)

となれば私が食べられるものもあるとは思うが、もしかすると毒になるものかもしれない。身体の構造が同じとは限らないからである。考えていると、正しく目の前に、私の知っている林檎に似た果物。・・・これ食えるんだろうか。とりあえず犬もどきを捕まえると鬼畜ばりに口の中に突っ込んでみた。無理矢理飲み込ませ様子を見るが、私の腕から逃げようともがくだけで変化は見られない。ん、食べられそうだ。

しゃくり、とみずみずしい音を立ててるかじるとじわりと甘い果汁が。林檎だ。食べるものも一応一種類は確保出来た。犬もどきどもも初めての邂逅以後は割と簡単に倒せている。気温も暑すぎず寒すぎず野宿も出来そうだ。


できる限り野宿は避けたいが、意外とこの生活何とかなりそうである。


というわけで、取り合えずの生活を確保出来た私の目標は人間発見になりそうだ。宇宙人でないことを祈る。






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