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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
序章:猫との出会い

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幕間2:初めての気持ち

 私は単調な仕事の連続に倦んでいた。


 秋葉原駅前の大型オフィスビル。その高層階に歴史ある魔術協会の極東支部は入居している。昔ながらのオフィス街に構えていた古式ゆかしい事務所をバブル期に追い出され、地主と縁があった秋葉原を紹介され、近代的なビルへと移転。そのまま今に至るまで入居を続けているとの事。


 魔術協会っていう浮世から相当に離れた組織が、普通にオフィスビルに入居しているなんて実に現実感が無い・・・だけど、それにも慣れてしまいました。

 ここに勤めだして早や三年。傍から見れば、一見普通のOLにしか見えないでしょうけど、もちろん私も協会の所属メンバーであり、一流の魔術師・・・のつもりです。だけど、私が業務として行っているのは、所属している魔術師の管理と一部管理区域の保全・・・・それだけ。勤務内容から考えると普通のOLそのものだったりします。


 魔術師としての能力には自信があるのですけど、残念ながら、それが役立った事は、この三年で一度たりとも無かったりします。魔術協会と仰々しい組織名ではあるものの、実際の業務はほぼ事務作業。非常に安定した、だけど退屈な職場。それが今の私のいるところ。


 20年と少し前には業界全体を揺るがすような大事件があったそうですが、それも私がまだ小さい頃の話なので実感は何もありません。今はとてもとても平和ですから。ちなみにその頃に働いていた人達の武勇伝も記録としては残っているのですが、当人達は既に職場を去っており、なんだか遠い物語の中のようにさえ感じてしまう状況です。

 いつまでも何も起こらない監視網のチェック。ほとんどメンツの変わらない名簿の更新作業。あとは単純な経費処理。それだけが私の仕事。


 別に魔術がそれほど好きなわけではありません。ただ家業を引き継いだだけという感じではあります。でも、今までの人生をかけて打ち込んできたものではあるわけで、それが全く活かせない環境というのは、正直ツラいものがあったりします。あと事務作業って凄く苦手なので解放されたいって思いもあったり。


 最近は、仕事の最中も頻繁にそんな事ばかりを考えています。五月病みたいなものなのかも知れませんし、若手サラリーマンが何故か三年ぐらいで辞めてしまうのと同じ現象が起こっているのかも知れません。まぁ、端的に言えば、変化が欲しいだけなのですけど。


 そんな事ばかり考えていたからでしょうか。それに気づいた時は思わず独り笑みをこぼしてしまいました。

 ずっとルーチンで続けていた管理区域の保全業務。具体的には「管理区域に誰も干渉していないかを現地で監視している使い魔」の状態チェック。この作業で異常が見つかったんです。3年目にして初めての異常。


 正直、嬉しかった。


 各地に配置されている使い魔の状態が分かるように、遠隔監視用の霊装を置いてあるのですけど、そのうちの一つが木っ端みじん。ちょっと異常があるどころか木っ端みじん。

 最初は外部からの侵入を疑いました。けど、盗られた物も無いみたいですし、そもそも侵入の痕跡も見つかりません。私は一通りの確認が完了して、やっと理解出来ました。


「そっか、現地の使い魔が破壊されたんだ」


 初めての異常事態。そして恐らく初めての敵。やっと、やっとです。魔術師としての仕事が出来る機会が私のところにやって来ました!しかも破壊されているのは最も厳重な監視下の地域のもの。


 二十四年も生きて来た私ですが、この日生まれて初めて胸が高鳴るという事が、どういう事なのか分かりました。


 初めて魔術師として活躍する事が出来る。初めての敵に会える。

 それが堪らなく楽しみに思えました。

 


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