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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

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3-5:猫と汚染の拡大 いざ会うと我慢出来ないもんですね

 サクサクと小気味良い音を響かせながら一人歩いていく。刺し穿たれた白い物の欠片たちがあちこちに散らばり、まるで雪のよう。・・・いえ、そんな綺麗なもんじゃないですね。わりと原型残してるし。


 黒い針で刺し貫かれた白い人擬きは少し経つと全て動きを止めてしまった。そして、その体をポロポロと崩し始めている。


 というか、脆過ぎなのでは?こんなの数を揃えたところで・・・これなら竜牙兵の方がまだ丈夫だし使い勝手も良さそうな気がしますね。あれは簡単にたくさん作れるみたいだし。


 まぁ、そんなのは別にどうでも良いのですけど。

 ぷらぷらサクサク歩いていくと、この場所の事が少しづつ分かってきた。

 真新しいプレハブの中で何かの実験か儀式かをしていたみたい。建物に隠蔽のための魔術がかけられている。そのせいで気が付かなかったけど中から弱っちい魔力の反応も感じますし。

 それに・・・敷地の少し奥の方にある建物からは、他のよりか少しマシな魔力も感じ取れる。

 たぶん白いのに侵入者の処理を任せて、お家の中に隠れて嵐が過ぎるのを待つつもりだったんでしょうね。


「来い、朱天」


 今はもう名前も忘れてしまった短刀を抜き、私の使い魔を呼び出す。

 私の使い魔もクロちゃんと同じように黒いけど・・・可愛いところなんて皆無の威圧感ばっかりの嫌な奴。


 右手にぶら下げた短刀でプレハブ小屋の方を指す。それだけで朱天は私の意図を汲んで動き出す。

 前もって朱天が持つ抜身の太刀に強化魔術をかけておく。赤松さんが使うような極端に出力の高い物ではないけれど、これで十分に用は果たせるから。


 朱天が大きく振りかぶりプレハブ小屋の入り口辺りを切りつける。

 破砕音が響き渡り、小屋は一撃で半壊した。


 障壁は張ってなかったみたい。中の人は生きてるか死んでるか分からないけど、まぁ、いいや。

 そして同じ調子で他の二軒も破壊しておく。

 最後の一軒は壊した後もまだ薄っすらと魔力が感じられた。つまり、誰かが生き残っている。良かった、良かった。あとで係の人に尋問してもらおう。


 さて次は・・・一番奥まったところにある少し豪勢な建物か。

 これは他のより大きめ、というか何軒分か連結しているタイプの建屋。ちょっと強めの魔力も漏れてるし、安藤さんがいるとしたら、ここじゃないかなって感じ。


 まず、とりあえずはジャブから開始。先ほどと同じように朱天をけしかけた。真正面から太刀をぶち当てようとするが、金属音が発生し、一瞬太刀筋が止まる。


 おぉ、障壁だ。


 だが朱天は、そのまま刃を押し込んだ。太刀は軽々と障壁を砕き、小屋の壁を砕き、地面に衝突し轟音を響かせた。


 抵抗の意味無かったですね。それにしても・・・ふむ・・・誰も出てこない?

 今更隠れおおせる事なんて不可能なんだから、さっさと出てきて討ち死にしてくれたらいいのに。・・・どうしても出て来ないなら、このまま終わればいいけど。


 朱天に二撃目を振るわせる。

 今度は障壁が張られる事もなく、何の抵抗なく小屋は破壊された。

 そして三撃目、四撃目と繰り返し粛々と小屋を破壊していく。

 五撃目に移ろうとした時、朱天の足元で小さな爆発が起こり、そのまま赤黒い火が具足を少し炙った。


 おっ、やっとこさ反撃が来ましたね。そうそう、死に物狂いで噛みついてくればいいのよ。何か大事なものがあるんですよね?死ぬ気で守ってくれないと。


 さて反撃してくれたのは誰かなー?少しウキウキした気分で小走りで駆け寄った。

 そこには崩れかけた小屋の中から這い出してきた安藤さんの姿があった。あちこち血濡れになりながら醜く肥えた体を地面に投げ出している。


 その薄汚れた顔を見ていると

 ・・・・・・

 ・・・

「おまえがぁぁぁぁぁ!!!」


 指向性も持たせぬままの魔力を足元から吹き上げ、安藤さんを周囲の瓦礫ごと宙に巻き上げた。

 大量の瓦礫と供に彼は抵抗も出来ず宙を舞った。


 このまま落として殺してもいいが・・・まだ聞くことがある。

 ふぅ、つい私らしくもなく激昂してしまいました。巻き上げるのに使った魔力のコントロールを一部取り戻す。まずは瓦礫ごと安藤さんの落下速度を「落ちても死なないレベル」まで緩めてあげる。

 そして、次にイメージするのは高速回転で何もかもを削ぎ落していくグラインダー。そんな危ない物を一瞬だけ現出させ、またすぐに魔力に戻す。


「ぐがあぁっ!足がぁぁぁ!足がぁぁ!!!」


 両膝から下をざっくり切り落とされた安藤さんがギャイギャイ喚いている。防御も妨害も無いからサックリいきましたね。

 ・・・うるさいから魔術で痛みを消してあげましょう。ついでに焼いて出血も抑えてあげましょう。なんて優しい私。でも、安藤さんは引き続き地面でコロコロしています。血も止まったんだから転がってないで怪我ぐらい自分でサクサク治せばいいのに。


「落ち着きましたか?聞きたい事があるんですけど」


 優しく問いかけてあげる。


「・・・・・・」


 だが返事が無い。怯えた目でこちらを見つめるばかり。

 さっき使い切れなかった魔力を辺りに放置したままでしたので、それを使って焼き切ったばかりの足をやんわり圧迫してみました。空気の密度を上げるイメージでギュッギュッとね。


「話す!話すからやめてくれ!!!」


 痛みは無くても断面が潰れていくのを見るのは辛いですよね。さぁ、キリキリ吐いてもらいますよ。


「赤松さんはどうしたの?」


「知らない!ビル一棟使い潰したのに逃げられた!」


 なるほど。良かったです。そうなるとやっぱりどこかに潜伏してるのかな?ケガを治してるとか、なんか後ろにいる組織を見つけて潰そうとしているとか、あるいは別の敵が出てきたとか?

 何にせよ、彼が無事なら、他はどうでも良い事です。

 じゃあ、正直もう帰りたい感じですけど、一応お仕事もしときますか。


「なんでこんな薬使ったんですか?大して効果があるわけでもないのに」


「・・・・お前らには・・・お前らみたいなバケモンには分からんよ。お前、アレだろ。何年か前に話題になった『魔女』だろ。なんでお前みたいな奴が普通の人間のふりして男と」


 話す気が無いようなので、また魔力を使って足を握りこむ、今度は強めに。

 ふむ、ちょっと汁が出て来ましたね。


「分かってるよ!しゃべるって言ってるだろ!!お前からしたら効果が薄く見えようがな、俺には魔力回路を強化する手段なんてアレしか無かったんだよ!

 お前らに分かるか?!魔術なんていう超常に頼っても何も出来なかった人間の無力感が!!あとほんの少しの力が足りなくて何も出来ない人間の無力感が!!お前みたいな化け物に分かるわけが無いだろうが!!!」


 うるさいですねぇ。要は『自分には使えない魔術を無理やり薬の力で使いたかった』ってだけの話でしょ?そんなの普通に話せば伝わるのに。


 あぁ、そうか、合点がいきました。新幹線の中で読んだ資料に何か書いてありましたね。


「そう言えば難病の息子さんがいるんでしたね」


 安藤さんの顔が恐怖に引きつった。


「・・・・なぜ知っている。戸籍上は他人の子供にしてあるし、何の記録も残していないはずなのに」


「そりゃ、関係団体の人間関係ぐらいはおさえてますよ、仕事ですもの。息子さんの病気を治すために魔術を使いたかったんですね?」


「そうだ。神経を器用に弄れるような魔術は俺の力では扱えなかった・・・だから・・・」


「ふーん、そうですか。それなら赤松さんに相談してたら、どうにかなってたかも知れませんのに。神経とかそういうのこそ強化魔術の使い手の得意とするところでしょうに。

 まぁ、どうでも良い事ですよね。全ては済んだことですし。これからの取り調べに協力的だったら、息子さんに悪い事が起きたりはしないと思いますよ。頑張って下さいね」


 こんなものかな?今日の成果としては赤松さんがどこかで生きている事が分かったぐらい。つまり、十分ですね。あれ?そういえば?


「そういえば柏木さんって知ってますか?」


 ・・・・・・

 ふむ。返事が無い。心が折れたかな?

 じゃあ、次は右手でいいか。先ほどと同じように高速高温でシャッと焼き切った。


「知らねぇよ!!そんな奴知らねぇよ!!!クソが!!この魔女が!お前みたいな奴が」


 もう聞きたくないので、痛みを抑えていた魔術を止める。叫び声は聞こえますけど、意味のある言葉は聞こえなくなりました。これで良し。


 じゃあ、後の処理は地元の人達に任して、私は一足先にご飯食べて帰るとしましょうか。

 今日はよく働きました。お疲れ様でした。

 


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