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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

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3-1:猫と汚染の拡大 脳筋はね、搦め手に弱いの

 人間どうしようもない状況に放り込まれた時って、全然関係ない事が頭の中に浮かんだりするよね。

 先週は三人で遊んで楽しかったなぁとか、鍋美味しかったなぁとか。

 あの焼き肉屋さんに皆でまた行きたいなぁとか。

 次は依城さんが好きなものを作ってあげたいなぁとか。


『マスター。どうするの?このまま待ち構えてたら流石にヤバいんじゃ?』


 クロの少し焦った声が頭の中に響く。とりあえず強化魔術の強度は上げてるけど・・・苦戦は免れない感じかな?僕もね、自分がターゲットにされる状況って始めてだから、ちょっと焦ってたりするんだよ。


 今の状況、場所はちょっと古めの5階建て雑居ビルの4階、荷物も入っていないし誰もいない、とても広々とした空間!そして、なんと!このビル!中に入った人が逃げられないようになる特性の結界付き!!中の生き物の魔力をチュルチュルと吸って維持するタイプで持続性と強度もバッチリ!

 もちろん、お客様(僕)を歓迎するためのスタッフもたっぷり用意されています!例の薬の行きついた先、真っ白の筋肉質な何者かになり果てた元人間が5人ほど。

 最後にダメ押しで火まで付けられちゃってさぁ・・・


 マジで殺しにかかってるよね。そこまで恨み買ってたかなぁ・・・





 前回の会合?打ち合わせ?に呼ばれて以来、僕とクロは毎日ダラダラとした生活をしていた。ダラダラといっても朝はちゃんと起きてるし体も鍛えるけど、まぁ、それだけ。仕事をしていないと違和感というか、なんか物足らない感じがある。このまま生きてて良いのだろうか?的な。先週末は依城さんも遊びに来なかったし(流石に東京から毎週来てもらうってのも厳しい)驚くほど単調な毎日。


 楽で良いと言えば良いんだけど・・・働かなくていいのかな?体を鍛えていざという時に備えておくってのも大事だとは思うけど、結構な額のお給金も貰ってるし、なんだか落ち着かない。

 そう思っていた矢先だった、その仕事の連絡が来たのは。


 毎度おなじみ、いきなり電話が来て「ここに行って来い」のパターンだったのだけど・・・また例のお薬絡みのお仕事だった。というかさ、ここで働きだしてから薬関連の仕事しかしてないよ?もっと他に何かあるでしょう??どんだけ薬物汚染が広がってるのさ???


 とは言え、愚痴を言ってても始まらないし、働いてない事への罪悪感もあったので即了解して全身黒づくめの都市伝説(笑)スタイルに着替え、頭にクロをのせて行ってきます。



 なんだか考え無しに動いて痛い目に合うってのが僕の定番になってるけど、今回は流石にしゃーなしよね。そもそもの依頼の時点で仕込まれてたって事は、協会ごと騙されてるわけなのだから。そこまでされてしまえば僕と猫さんでは抗う事も出来ないしね。せめて依城さんがいたら、違うかったのかも知れないけど・・・まぁ、それも言っても仕方がない。



 依頼内容は「お薬の回収に反対している団体が残っている。現地で回収部隊と揉めているので場合によっては武力でよろしく」というものだった。

 そして、のこのこアホ面を晒して(フルフェイス被ってるから晒しているわけではない)指定された場所に向かって、何も気づかないまま現場の雑居ビルに入ったところで結界に閉じ込められて、キャストに囲まれ、火まで放たれたというこの惨状。


 わりとマジ悲惨。僕が何をしたというのだろうか(心当たりがあり過ぎて原因がどれか分からん)

 それはそれとして最初に考えるべきは脱出について。本格的な結界みたいだし面倒そうな予感。


「クロ、結界の中心はどこにある?さっさと壊して逃げよう。最悪、白いのは放っておいてもいいから」


『・・・さっきから調べてるのだけど、どうも上の階みたい。流石にあの白い人達から逃げながら、どんな形をしているかも分からない結界のカナメを探すのは』


 うん、そらそうだよね。ボコられて死ぬか、結界で弱って焼かれて死ぬか、好きな方を選んでね、って事だよね。

 しゃーなし。結局、僕に出来るのは力づくで突破する事だけなわけで。にしても、白いの5人もいるけど、こちらに全然興味を示していないご様子。自意識とか、もう溶けてるのかな?案外、横をそっと通り抜けたら素直に上の階に行かせてくれたり?僕はただ結界を壊して外に出たいだけなんです。あなた達と喧嘩する気はないんですよ、みたいな。


 そろりと歩き出す。最上階への階段は白い人たち?の後ろ側。そっとそのまま擦れ違おうとしたら


「■■■ぁ■っぁぁ!!!!」


 奇声とともに5人全員がこちらに飛びついて来た!


 とりあえず、大きくバックステップを行い、距離を開ける。

 5人とも先ほどまで僕がいたところにほぼ同時に突っ込んで衝突事故の真っ最中。・・・意識と思考が溶けてるから反射的に動いただけ?


 ・・・これ話に聞いているより随分と弱いのでは?


 衝突事故で転倒し、まだ立ち上がれず転がっている一体の足を後ろから踏み折ってみる。「バキリ」とコンクリートか何かを踏み砕いたような妙な感触と音が響き渡る。


 そして、もう一度距離をとる。


 他の4体はノロノロ立ち上がり、こちらをゆっくり見るだけで何もしてこない。


 あれだ。様子だけ見るとまるで昔の映画のゾンビみたい。しかも、攻撃してくるのも、こちらが近づいた時だけという劣化版ゾンビ。


 なるほど。こんなのを戦力にしようと思ったから「敵から傍に来てもらう状況」が必要になったってわけか。それで、わざわざこんな配置・・・失敗作なのでは?この白いの。試しに足を折った奴も別に回復するわけじゃなく、そのままズリズリしてるだけだし。痛みとかは無さそうだから、そこは注意しとかないと危ないかもしれないけど。


 まぁ、細かい事はいいや。さっさと片づけよう。いくら強化魔術を使ってても焼かれたら僕も普通に死んじゃうし。まぁ、その前に酸欠で動けなくなりそうだけど。


 と言うわけで、相手の力が強かろうが、多少普通の人間より硬かろうが、連携もせず技巧を凝らした動きも出来ないなら、やる事は今までと何も変わらない。


 まず、スタンロッドが効くか試してみる。

 一番手前の奴の目の前まで一息で踏み込み、魔力を込めたロッドで顎を下側から全力でかち上げる。まるでコンクリ塀を殴りつけたかのような鈍い音がし、ロッドから軋む音が聞こえてくる。だが、それを無視し力任せにロッドを振り抜いた。


 白いのはそのまま仰向けに倒れこんだが、ロッドの中央に大きく罅割れが走っている。打撃力としての効果はあったようだけど、白いの相手では強度が足りないようだ。


 ロッドを部屋の端に投げ捨て、こちらに飛びかかってきた2体目・3体目の処理に取り掛かる。


 右側から飛び掛かってくる奴の軌道を避けつつ、もう片方の下顎に掛け値なしの全力で右フック。

 生き物を殴ったとは思えない破砕音とともに下顎が抉り取れた。

 が、意識を奪うどころか、そのまま何事も無かったかのように掴みかかってくる。


 こちらの首を両手で掴もうとしてくるが、動物的なその動きには隙しか無い。


 今度は眉間をそれなりの力で一撃する。大きく頭蓋が陥没し、白い巨体が崩れ落ちた。


 そして、飛びかかりをすかされ、こちらに向き直そうとしている3体目のこめかみを殴り飛ばす。コンクリでも殴りつけたような妙な感触、僕の拳は白いヤツの側頭部を大きく抉り取っていた。


 とりあえず頭を損傷させると動けなくなるようで、他の個体と同様にその場でぐちゃりと崩れ落ちた。白いのは頭が弱点。覚えましたし。「まだ残りの一体が」そう思い、近づいて来ない個体を見やってみると、何故か最初に足を折った個体をガブガブしているところだった。共喰い?

 動けなくなった個体の首筋に一生懸命食らいついてる。血は出ない代わりに、何か白い繊維の屑のようなものが周囲に散っていた。


 二体ともウワウワ声を出していて実に気持ち悪い。・・・いつまでも見ていても仕方がないので噛んでいる方から順に頭を潰していく。次いで他の個体の頭も念のため丁寧に潰していく。


 金属かプラスチックの塊を破壊したかのような妙な感触。零れ出す中身もまるでグラスウールか何かの切れ端のよう。とても生き物とは思えない。


 それにしても・・・妙に気分が悪い。


 そう思いながらも全ての個体の処理を行った。もう上に行こうか考えていると


『スタンロッド、壊れちゃったわねぇ・・・』


 クロの声はとても残念そうだった。

 気に入ってたのか。なら、とりあえず回収だけはしとこうか、直せるかもしれないし。直せるかな?結構、大きな罅があるけど。よく考えたら殴ると武器が壊れる相手を、何故素手で殴り倒しているのか?武器が素手より脆い?意味が分からんぞ?・・・とりあえず、今度、別の武器も作ってもらおう。もっと硬い奴。あるいは壊れない奴。


 さて、ゆっくりしてたら蒸し焼きになるだけだし、さっさと結界を壊しに行かないと。


「前の時の結界は殴ったら壊れたけど、今回のもそれで行けるのかね?」


『たぶん大丈夫だと思う。マスターの非常識な強度の魔術なら十分に壊せるはず』


 ついに非常識と来たか。なんかこう客観的な指標とかが無いから、自分がどの辺りで何をしているか分からない。スカウターとか無いのかな?


『今回の依頼自体がマスターを亡き者にするための物だとすると、これだけで終わりとは限らないわね。それこそ上の階に行ったらラスボスが待ってたり』


「いやいや、まさかそんなベタな事はせんでしょ?足止めして結界張って火をつけたら十分って普通は考えるでしょ?なんだかんだで僕なんて下っ端だし。それに、ほら、成功したところで使ったコマは全部焼け死んじゃうから大損は確定だし」


『それもそうね。流石にそこまでするのも変よね』


 結界のカナメのある5階に到着。

 防火扉が閉まっていたので、力ずくでこじ開けた。


 そして扉の向こうから押し寄せて来た爆炎に僕たちは飲み込まれた。

 


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