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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

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2-1:猫と飼い主の友達 友達が遊びに来るなんて普通の事ですよ?

 土曜の朝九時半、私は朝一の新幹線を使い赤松さんのお家を訪れました。


 前の仕事が一段落した事はレポートで確認しています。そして今は何のお仕事も入っていない事も確認済みです。ひょっとしたら何処かに出かけているかも知れませんが、まぁ、彼の事ですし、土日、しかも朝からわざわざ出かける事は無いはず、そう判断しました。


 だから・・・つまり・・・ちょっと遠方から友人兼同僚が訪ねて来ても何も問題は無いはずなんです。

 お土産もちゃんと買いましたし(東京駅で定番のチョコレートのやつ。食べた事無いですけど)、事前の連絡は・・・なんだか踏ん切りがつかなくて今回も出来てませんけど・・・その程度で嫌な顔をするような人ではありませんし。

 ・・・・・・

 ・・・

 少し時間はかかりましたが意を決してマンション入り口のインターホンから赤松さん家を呼び出します。

 あれ?・・・よく考えたらどうやって切り出しましょう??


「遊びに来ました?」


 いやいや、いい年の大人が発するセリフじゃないですよね、これ。


「ちょっと仕事で近くに来たもんで?」


 朝から何のついでか?まずい、もう少し練るべきでしたか。


『あれ、依城さん?どうしたの?遊びに来たの?』


 !!


 インターホンから赤松さんの声が?!

 しまった!最近のインターホンは映像付きだ!!バレた!!

 ・・・・・

 ・・・

「えと・・・その・・・・・・・来ちゃいました」


 結局、最高に馬鹿丸出しの言い方しか出来ませんでした。



 久しぶりに訪れた赤松さん宅は、相変わらず物が少なくてこざっぱり。


「連絡くれたら迎えに行くのに。いつ頃こっちに来たの?」


「九時過ぎ頃に着きました。朝一の新幹線使って、そこからは普通に電車を乗り継いで。四時間もかからないし、意外と楽でしたよ」


 予想通りというか何というか、特に文句も言わず赤松さんは快く家に迎えてくれました。ちなみに朝ご飯中だったようで、食卓には小さなボウルとコップ。そして、小皿が置いたまま。

 なんだか前にも同じような事があったような気がします。・・・次からはちゃんとアポ取るようにしないと。

「すぐに片づけるから待ってて」そう言われソファーに座っているよう促されました。革張りの良いソファー。赤松さんが買う物にしては違和感。もっとこう「座れるならなんでもいいよ」みたいなチョイスになりそうな感じがするのですけど。


「そのソファーいいでしょ?なんか有名なブランドのやつらしいよ?クロがネットオークションで展示品か何かを見つけて来てさ」


「へぇ、どうりで。というか、ついにネットオークションをする猫が生まれましたか・・・あれ?そう言えばクロちゃんは?」


「あっち」


 赤松さんの指し示す方を見てみると、そこには和室の真ん中で香箱の姿勢で眠りこけるクロちゃんの姿が。


「朝ごはんのカニカマ食べたら、いつもああやって寝てるのよ」


「・・・使い魔ですよね?」


「まぁ、いいんじゃない?猫だし。それに最近は協会に提出する用の書き物もしてくれてるし、結構、働いてくれてるのよ。我が家はちゃんと二馬力だから安心して」


 猫なのに馬力。ん?クロちゃんが書き物???


「赤松さんが書くのでなく、クロちゃんが書いてるんですか?」


 どういう事?


「あぁ、確かに。説明しないと意味不明よね。なんだか最近クロが一段と賢くなってね。タブレット端末を使って色々やってるのよ。協会に出す資料も作ってくれるし、役所の手続きもネットで出来るものは全部やってくれるし。

 あとでフリック入力で文章を書くところを見せてもらうといいよ。速くて凄いんよ!ササって!!まさに高速の肉球さばき!!」


 片付けを速攻で終えた赤松さんは寝ているクロちゃんを撫でながらニコニコ語っている。確かにタブレット端末を使う猫は凄いですけど、そもそも猫では無いわけで。ん?となると今までの報告は・・・


「レポートは全部赤松さんの名前で提出されてましたよね?」


 その時、赤松さんの表情が急に曇った。


「・・・ごめんなさい。ずっとクロに書いてもらってた。文章書くの苦手で」


 なるほど。ゴーストライター。報告書を書く猫。シュール、実にシュール。

 タブレット端末を駆使し報告書を仕上げる猫と、それを横から眺める飼い主。なんて愉快な光景でしょうか。


「・・・まぁ、別にいいんじゃないです?ほら使い魔なんだし、仕事を頼んでも問題ないじゃないですか?」


 赤松さんの顔がパッと明るくなった。


「そうだよね!別にいいよね!苦手なとこを互いに補うって感じでいいんだよね!」


 いいのでしょうか?果たしてそれでいいのでしょうか?報告書ぐらいは自分で書けるようになった方が、いえ、私も人の事を言えるレベルではありませんが。


「そうそう、それぐらい頼ってくれたらいいのよ。そんな大した手間でもないし」


 いつの間にやら目を覚ましていたクロちゃんが欠伸をしながら赤松さんを甘やかす。


「でも、そうねぇ、最近色々書いてたし、そろそろ感謝の気持ちを形にしてもらうのもいいかもしれないわね?」


 凄いこと言い出したぞ、この猫。甘やかしたと思ったら、今度は即座に自分が甘えるとか?!

 あれか、悪女か?それとも玄人か?私には、こんな事とても口に出す勇気はありません!凄いぞ!クロちゃん!!参考にさせて頂きます!!・・・学んだところで私には出来そうに無いですけど。


「なるほど。何か食べたいものでも?」


「流石、マスターね。よく分かってらっしゃる!わたし本物のカニが食べてみたいわ!毎日食べてもカニカマは美味しいんだもの!きっとカニも美味しいわよ!!ねぇねぇ、ナギはカニって食べた事ある?」


「はい?そりゃ、ありますけど」


 何故ここで私にふる?


「そうなんだ!わたしもマスターも食べた事無いからよく分かんなくて!」


「赤松さんも無いんですか?」


「ないねぇ。なんかお金持ちの食べ物ってイメージがあって」


 グラム当たり単価なら『ほぼカニ』の方が高級なのでは?そう思いましたが、それを口に出すのはやめておきましょう。無意味に衝撃が大きそうですし。


「じゃあ、今晩は皆でカニ鍋でも食べませんか?たぶん近くのイオンでも売ってるでしょうし」


 そしてさり気なく「今日は一日いますよ」というアピールを入れ込んでおく。お昼を一緒に食べて「楽しかったね。バイバイ」ってなったら悲しいですし。


「うん、そりゃいいや。昼ご飯を食べに行くついでに買って来ようよ」


「鍋の材料どころか鍋から買わないといけないわね。あそこに売ってるのかしら?」


「イオンなら何でもあるんじゃない?」


 こっそり入れ込んだ誘導の効果があったのか無かったのかは分からないですけど、夜までは居てもいい流れになりました。


 やったぜ。

 


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