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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
序章:猫との出会い

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5/27

2-3:猫と海 まずはやってみる事が大事

「ねぇ、質問だけど走って逃げれそうかな?」


 上半身だけとはいえ人型になってしまった鬼火擬きを見ながらクロに質問する。なんか禍々しくてヤバイ感じがビンビン伝わってくる。一目散に逃げたい。


「さっきの攻撃の射程を考えると、ちょっと難しいんじゃないかしら?」


 クロは胸元に抱かれたまま、砂浜に刻まれた二本の溝を見てそう言った。

 確かに余裕で10メートル以上はある。あちらさんが手を振り下ろすのと、射程外まで走って逃げるのと、どっちが早いか。

 そもそも手が一本とは限らないし、他の攻撃手段が無いとも限らない。・・・こりゃ、ダメよな。詰んどる。


「鬼火擬きが固まってくれている内に対策を思いついたら教えてね」


 とりあえず、彼?はこちらに一発かましてきてから動きを止めている。目線はメッチャこっちを見てるけど。

 ただ、クロが動く度に手らしき部分がピクピク動いてるから、たぶん動いたらやられるとか、そういう状況っぽい。恐らくは『未知の敵であるクロ(とオマケの兄ちゃん)を警戒してるが故の束の間の均衡』と言ったところでしょうな・・・状況としては、未だ見ぬクロのアイディアに賭けるしか無いって感じ。


「・・・どうもわたしを狙ってるみたいだから、別々の方向に走ればマスターだけなら射程外に逃げられるかも?」


「却下で」


「・・・・そう、それなら、わたしが魔術を使って片づけるしかないけど、一人だと無理で」


「よし、それで行こう。僕は何をしたらいい?」


 方針は決まった。後はなんとかするだけだ。細かい事を考えるのは専門家のクロさんに任せるけど。


「マスターって、異常に決断早いわよね、やっぱり。でも、助かるわ。ありがと。わたしもまだ死にたくないし。

 じゃあ、早速説明するわね。わたしの使い魔としての能力はマスターの魔術の補助と強化。本来の使い方とは違うけど、あえてマスター経由で魔術を発動して、それを更に増幅させる事でアイツを仕留めるだけの出力を出してみるわ。

 使用する術式は、さっきまで使っていた方法の強化版〈略奪の術式〉を考えてるの。この術式は強力だけど、発動には相手のどこかに触れる事が必要なの。だから、マスターがあいつに直接触れて、わたしが魔術を発動、同時に増幅っていう方法を取る必要があるわ。無理をさせて悪いけど、先に強化魔術も合わせて・・・」


 クロは僕の顔を胸元から見上げ、気遣わしげな様子で一生懸命説明してくれていたけど、残念ながら時間切れっぽい。鬼火擬きの様子が変わった。


「ごめん。いきなりだけど時間が無いみたい。その方法で行こう。じゃあ、早速頼む」


 少し前から鬼火が震えている。そして、その震えと共に揺らいだ炎のような輪郭がじわりと整いだしている。

 こっちが何もしてこないのに気が付いたのだろう。なら、その状態で次に何をしてくるか。さっきと同じ砂浜を切り裂いた攻撃か、あるいは、それ以外の他の何かか。具体的には分からないけど、ろくな結果が待っていないのは間違いない。


 だから、ぶっつけ本番、説明も途中だったけど、クロのアイディアで現状を乗り切るしかない。正直、何が何だか全然分かってはいないけれど、それに賭けるしか道は無い。


 クロが霊体化し胸から頭の上に移動した。そして、もふっと手を僕の頭についた。


「ごめん、マスター。・・・行くわよ。疑似魔術回路、形成開始」


 クロがぼそりとそう言った瞬間、


「ッ!!!!!」


 何かを頭に打ち込んだような鋭い痛みが走る。

 痛い。痛くて気持ちが悪い。痛みで立っていられない。

 わけがわからない。鬼火か?鬼火が何かしたのか?

 いや、あいつはまだ何もしてないはず?

 なんで?なんで??何故!何が!!!!


 その次の瞬間、嘘のようにスッと痛みが消えた。一瞬ただ立ち尽くしていただけのようだ。・・・なんだ、これ。


「回路形成成功。すぐに使えるのは・・・・四本ってところね。マスター、頑張って。さぁ、行くわよ。」


 何が起こっているか聞きたいところだけど、クロはすぐさま次の工程に入った。


「強化術式注入」


 一瞬警戒したが、今度は痛みも走らず実に無風。だけど、痛みの代わりに、まるで酩酊しているかのように思考がちりじりになる。


 自分が何を考えているか、ここが何処かも一瞬分からなくなる。そんな中でも、何かが、自分にとって未知の何かが、知らないはずの知識が、外から押し込まれて来ているのが分かる。そう、少しずつ分かり出して来た。自分の中に、外からの知識が溶け込んで、思考にも混じり始める。何処までが自分の知識で、何処からがクロに押し込まれたモノかが曖昧になって来る。自分が何をされているかも理解出来るし、かなり無茶な状況に自分が置かれている事も理解出来てきた。使用可能な魔術回路はクロも言ったように僅か4本だけ。使える魔力量も本来使用可能な物と比べたら極わずか。レイスの出来損ないを始末する間ぐらいなら十分にもつだろうが、一般的な魔術行使すらままならない。いきなり何故ここまで追い込まれているのかが分からないが、どうせ自分の思慮のない行動が原因なのだろう。あと二日もあれば余裕をもって対処できたものを。そもそも魔術回路の*********し、魔力も本来の****なら***********************


 ふと我に返った。なんだ、これ。マジ怖いな。途中から完全に思考がどっか行ってた。

 他人の記憶と経験の上書きって事か。ぞっとするけど、おかげでクロの言っていた強化術式とやらの使い方は分かった。というか、もう強制的に発動させられてる。


 この術式は、筋肉とか骨格とかそういう単位でなく、肉体の機能全てを魔力で強化している。小難しい事を考えなくても扱える素晴らしい魔術だ。例えるなら、全身を強烈にドーピングしているようなもの。速く強く動ける。効果としては、ただそれだけ。でも、その効果は絶大。

 術式の効果で時間感覚さえ加速しているから、鬼火擬きさんの動きも実にゆっくり。

 うん、よく見ると手が二本になってますね。いつの間にか、もう一本生えてます。でも、まぁ


「これならやれるか」


 不思議と自信はある。手段と知識は与えられたわけだし、最後はうちの猫が決めてくれるのだから。

 僕がやる事は腕二本の動きを避けながら、鬼火擬きのどこかにタッチするだけ。しかも、体はばっちり魔術で強化済み。使い方も知識面では完璧。実践はしてないけど、負ける要素なんか何処にもない・・・・たぶんね。


 そう思いながら、あるいはそう思い込みながら、まずは魔術の感触を確かめるように、僕は大きく最初の一歩を踏み出した。

 


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