表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/69

1-3:猫と危ないお薬 蚤の市は放置という事で

「やっと当たりを引けたわねぇ。ところで、どうするのこのポーション?強化魔術みたいな効果があるんだっけ?飲んでみる?」


「いやいやポーション違うし、証拠品だから僕が使っちゃダメだし」


 やっとこさ自分の仕事を終え、今はお片付け班が来るのを待っているところ。僕達の目の前にはガラの悪い人達が整然と寝かせてある。そして、クロは特に意味も無く一番手前で倒れている人のスキンヘッドを肉球で撫でまわし遊んでいる。

 ついさっき殴り漏れてた人がいきなり出てきてビックリしたけど、他にはもういないみたいだし、ぶっちゃけ暇な時間。ひょっとしたら逃げた人もいるかも知れないけど、別に何も知らない「ヤ」の付く人に用事は無いし、それはそれでかまわない。


 というわけで、時々うめき声が聞こえて来るけど概ね静かな良い環境。

 待機時間だけど仕事中。何もしていないけど仕事扱い。実に気分が良い。働いてるって感じだ。


「このクスリ・・・ポーション・・・ポーション擬きは後で専門の人達で調べるらしいよ。なんでも先月に実際使われた現場ではエライことになったとか」


「ふーん。ただの強化魔術で?変なの」


 僕も強化魔術しか使えないんですけどね?・・・強化魔術を使えるだけの脳筋が一人暴れた結果、暴力が専門の人達が蚤の市になってるわけで。わりとマジでヤバい。

 ・・・・・・

 ・・・まぁ、別にどうでもいいか。

 それはそれとして


「ねぇ、そろそろヘルメット脱いでいい?強化魔術使ってないと外がうまく見えないし、とはいえずっと魔術使ってるのも落ち着かないし」


 そう、バイザーの遮光具合が強すぎて魔術が切れると周りがよく見えないのだ!設計ミスかな?でも柏木さんは『特注品だから、これでいい』って言ってたよ。本当かな?


「ダメよ、マスター。現場では我慢して。もし何処かから望遠鏡で見られたりしたら今のお家に住んでられなくなるわよ。周りの人達は『普通の人』なんだから」


「はいよー、了解」


 うちの猫さんは厳しい。でも賢くて正しい。きっとスキンヘッドの隣の角刈り頭をパシパシ叩いているのにも何か意味があるのだろう。

 何が楽しくて寝ている人の頭を叩きまわしているのかは分からないけど、それをぼんやりと見ているのは何故か楽しい。ほっこりする。ネコかわいい。

 そうこうしているうちに証拠回収&お片付け部隊の人達がやって来た。もちろん、到着の際に「もうちょっと穏便に出来ないのか」とのお小言を頂く。そらね、3回目だからね。毎回全員殴り倒して鎮圧してるものね。そら、怒られるよね。分かってはいるのよ?でもね、僕にはこれしか出来ないの。

 そんな風に一人で少しだけ反省していると崩壊した(させた)事務スペースから大きな唸り声が聞こえてきた。


「ウォゥォォッォォゥゥ!!」


 唸り声というか奇声?鳴き声?さっきの魔術師風の人が復活して頑張ってなんかしてるんでしょけど。「クロを呼ぶまでも無いか」そう判断し自前の強化魔術のみを使用した状態で突貫する。


 事務スペースの空いた扉から踏み込み、奇声を上げるスーツ野郎を発見。

 そのままスタンロッドで頭部を殴りつける。

 小さな障壁のような物があった気がするけど、ロッドの軌道は変わらず進みこめかみに直撃した。


 スーツ野郎は殴られた勢いで事務スペースの壁に叩きつけられる。はい、これにて終了・・・おや?まだ意識がある?いや、意識があるというか・・・あるといえばありそうだけど、正気はないな?これ。

 スーツ野郎だが、目の焦点は合わず白目がち、顔には得体のしれない感じに太い血管が浮き出て、肌も全体的に白っぽい。


 なんか全体的にキモイな・・・ヤバい薬を使ってるみたい。というか、あれか、ポーション(擬き)か。

 やっぱ、やばい薬かー。そら回収急がせるわけよね。というわけで、放っておいてもややこしそうなので


「えいえい」


 二回ほど魔力を込めたスタンロッドで殴っておいた。薬を使った人にも普通に効くみたいで何よりです。


「あら、たいした事無かったみたいね。やっぱり薬で魔術を再現するってのに無理があったのかしら?」


 いつの間にかクロが後ろから覗いていた。


「うん。そうだね。正直、強化魔術と言っても何を強化してたのかサッパリ分からない感じで」


 普通の人が1回殴られてアウトのところを3回殴られたらアウトになっただけ?耐久力3倍みたいな?ヤバそうな薬を使ってそれだけ?

 また、ここも外れだったのかな。流石にこんなしょぼい効果なわけは。


「赤松さん。すみません。その倒れている魔術師をサンプルとして連れて行きたいのですが」


 灰色のツナギみたいな服を着た回収部隊の人が「仕事の邪魔だなぁ」みたいな感じで話しかけてきた。

 そう言えば、他の人達は遠巻きに見ているだけなのに、この人はちゃんと話しかけてきた。目の前で唐突に振るわれた暴力に怯まないとはガッツがあるな!気に入った!!


 とはいえ話かけて邪魔するわけにもいかないので、クロと一緒に大人しく事務スペースから出た。クロは早速ヘルメットの上で器用に寝る体勢になっている。もうする事ないもんね。

 粛々と現場から証拠物が回収され、魔術師(だいぶ白い)と取引相手っぽい倒れたままのおじさん(悪そう)も連れて行かれた。ちなみに蚤の市状態で綺麗に並べてある人達はそのまま放置していくそうだ。・・・過去2回も同じように放置していったからネットで謎の怪人の噂が広まったわけで・・・いや、全員海に沈めてしまえとか、そんな話でもないのだけど。


「では、本日は撤収という事で。お疲れ様でした」


 さっきのガッツある人が締めてくれた。他の人達も凄く統率が取れた動きで各々の車に乗り込み「あっ」という間に去っていった。残されたのは黒い怪人と猫と蚤の市のみ。うん、殴り倒してからは完全にボンヤリしてただけだったね、いつもの事だけど。さて帰るか、クロも寝たままだし。


 倉庫から出ると外は未だに真っ暗だった。夜勤は気分的にしんどいなぁ、そう思いながら僕は寂しく帰路についた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ