表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/69

プロローグ

 夏が終わり、僕の服装が半袖Tシャツから長袖Tシャツに変わる頃、僕とクロは新居への引っ越しを行った。5年近く務めた仕事も無事に円満退職し、後顧の憂い無く、新しい生活を開始する事が出来そうだ。というか、凄くあっさりしてて、それはそれで少し残念だったかも。

 引っ越しは柏木さんが手伝いを申し出てくれたけど、いかんせん男の一人暮らし、ろくに荷物も無く重い物も自分だけで持てるので丁重にお断りをしておいた。実際、引越屋さんに依頼する必要さえ無く、アマゾンの発送でよくお世話になっている例の猫のところのサービスで十分だったり。


 ちなみに新居は同じ市内のマンション。場所は前居住地から電車で1時間程度の埋め立て地。高級住宅地らしくマンションの狭い部屋でも家賃12万からという地域。縁が無さすぎて気にした事も無い場所だったり。


 だけど、僕はここに!なんと!無料で住むことが出来るのだ!!!


 簡単なお仕事をしているだけで給料だけでなく住居まで提供されるのだ!!


 持つべきものは友達だ!ありがとう依城さん!!(僕の知らないところで条件交渉とかしてくれたみたいです)


 しかも、この社宅、なんと間取りが!


 憧れの!!3LDK!!!

 ワンルームから3LDKへの華麗なる転身!!

 いいんでしょうか?こんな贅沢していいんでしょうか?

 だって3LDKですよ?

 キッチンとは別に和室が一つ、洋間が二つもあるんですよ?

 こういうのはお金持ちが家族のために買う物件なのではないでしょうか?何も成し遂げていない私が住まわせて頂いてもよろしいのでしょうか?


「ねぇ、マスター。そろそろお昼にしない?」


 独りで舞い上がっているとクロが和室の真ん中で寝そべったままご飯の要求をしてきた。

 なんか態度が本当に猫みたいになってきたけど・・・使い魔としては、これでいいのかな?そう思いながらも引っ越しの荷物とは別に持ってきた「ほぼカニ」のパッケージをあけ、皿に並べていく。

 和室で二人でお昼ご飯。僕は最寄り駅近くにあったお店のパン。妙に高かったけど、やけに美味い。飲み物はマンションの一階にあった自販機の水。これは普通。


 よきかな、よきかな。なんかこの世の春って感じ・・・するわぁ。新しい家は綺麗し、なんか広いし。もちろん、家具をまだ出してないから、より広く感じるってのもあるだろうけど。

 いいわぁ。快適な家っていいわぁ。

 綺麗なおうち。可愛いペット。美味しいごはん。

 いいわぁ。


「ご機嫌ね、マスター」


「おうよ・・・なんか全てを手に入れた気分」


 多幸感さえあるかも。


「確かに広いお家は素敵だと思うけど・・・それほどのもの?」


 クロはカニカマをもぐもぐしながらも不思議そう。まぁ、僕の気持ちはどんなに賢くても猫さんには分からんよね。


「住まいってのは厳しく長い社会人生活の果てに獲得するもんなんだよ。その意味では、なんか色々な段階をスキップして想定していたより高いゴールにたどり着いてしまった?みたいな感じなわけ。つまり、僕はゴールの先に辿り着いてしまったんだよ」


「ふーん、そんなものなの。良かったわね、マスター。正直よく分かんないけどナギのおかげよね。次に会ったらお礼言っとかないと」


「そうねぇ。感謝してもしきれんねぇ」


 依城さんは事件の片付けが済んで東京に戻ってしまっている。とは言え、引っ越しという一山が過ぎたのだから改めてお礼はした方がいい。

 今日は駐在の人から仕事の説明があるらしいから、それが終わったらメールでもしようかな?でも、依城さんってメール送っても返事がだいたい電話だから、あんまメールにする意味ないかも知れないんだよね。まぁ、それはさておき


「んじゃ、そろそろ家具やら家電の配置しちゃいますか」


 既に通販で買った様々な物が届いている。冷蔵庫もベッドもソファも全部通販で買った!大量に買い物をしたからポイントもザクザクだ!

 ちなみに、この大量の買い物の費用も前の事件で協会から振り込まれた報酬でまかなっている。まかなっているというか、貰ったお金の一部で買った、というのが正しい感じ。なんかね、報酬が多すぎて、これから凄い事やらされるんじゃないかって疑惑が自分の中にフツフツと出て来るぐらいで・・・いや依城さんを信じろ。閑職だ。閑職だって言ってたじゃないか!・・・大丈夫、きっと大丈夫!!


「マスター、ぼんやりしてないでサクサクやりましょうよ?」


「・・・・・・・はい」


 クロが急かしてきたので早速作業に移る。通販で頼んだものは玄関と廊下に雑然と置いたまま。

 強化魔術を駆使してどんどん梱包を開け、部屋にズンズン運ぶ。続いて組み立ても設置もドンドコ済ませていく。・・・僕の天職は引っ越し屋さんなのでは?何を持っても重さなんかまるで感じない。注意すべきは重心の位置ぐらい。楽勝過ぎる。なんて便利な強化魔術!今まで骨か幽霊を殴るのぐらいにしか使えないと思ってたよ。見直した!こいつは凄い魔術だ!

 というわけで、あっという間に作業終了、家具も家電も少ないってのもあるんだけど。というか、憧れの3LDKと言ってはみたものの、ぶっちゃけ僕達二人だと部屋あまるよね。何に使おうか?トレーニング部屋とか作っちゃう??


「これで一段落ねぇ。せっかくだからキャットタワーとか買ってみない?一回乗ってみたいのよ、あれ」


 それで良いのか使い魔さん。心身ともに猫になってない?まぁ、僕もクロが使ってるとこ見たいから買うけど。きっととても可愛いだろうし。


 そして前の家から持ってきたちゃぶ台の上でキャットタワーの物色を始める二人。知ってるかい?アマゾンってキャットタワーも扱ってるんだぜ。むしろ想像してた以上に色々な種類があって何を買ったら良いか分からなくなるぐらいに大量に扱ってるんだぜ?

 そんな風に二人で熱中していると家のチャイムが鳴った。おぉ、ヤベェ、今日は仕事の説明があるんだった。

 インターホンに向けてダッシュ。最近のインターホンって映像も出るんだ・・・って柏木さんじゃん?!


「はーい、いま開けますよー」


 なんだ、他の駐在員って彼か。・・・なるほど。だから柏木さんは「事件の詳細は分かったら後で共有します」って言ってたのか。近所だったら共有も楽勝だもんね。にしても、ずっと調査してたのか。大変だ。僕はマジで何もしてないのに。


「引っ越しと転職祝いに来たっす!おめでとうございます!お祝いの品として太巻き持って来たっす!晩飯に食ってください!」


 いきなり目的が変わってるけど久しぶりの柏木さんだ。


「ひさしぶりー。お祝いありがとう。さぁ、あがって、あがってー」


 いきなり知らない人が来るのでなくて良かった。そう思いながら僕は柏木さんを案内する。


 さぁ、まずはこれからのお仕事の話を聞かせてもらおう。何をするにしろ頑張っていかないと。

 新しい家。新しい同僚。新しい仕事。全てが新しい生活がこれから始まる。


 いつの間にやら謎の職業に就く事になってしまったけど、家族も友達も増えたし、これからはここで頑張っていきたい、僕はそう思った。






 第一部1章:猫と見習い 完

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ