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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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6-8:猫と魔術師 まるで暴力団の手口みたい

 ホテルの部屋で独り反省会中の依城です。もうなんだか大変で、正直とてもしんどいです。


 魔術師による一連のテロ事件は、複数人の被害者を出したものの、無事に終結しました。テロに使用したと思われる魔術装置(霊装と呼べる代物では無かったそうですが)も無事回収し「協会としては及第点」といった感じらしいです。詳しくは私もまだ調査結果を見れてなくて分からないのですけど、なんだか色々と戦果があったそうです。


 ですが、大規模魔術に大勢の人を巻き込んでしまった事、工房に既に囚われていた人がいた事、後方部隊に死者が出てしまった事、そして何より、本来ほとんど関係が無かったはずの赤松さんを巻き込み、あまつさえ最後の始末をさせてしまった事を考えると・・・・とてもうまくいったとは言えないと思います。というか、私個人としては大失敗です。


 第一、私の唯一の取り得であるはずの戦闘の面で失敗しているのが頂けません。実に頂けません。

 そもそも、あの後、何があったかすら私はほとんど知らないのですから。気が付いたら病院のベッドの上、事の顛末については事後報告を受けただけ。


 気が付いたら全てが終わっていました。・・・情けない。実に情けない。


 正直、赤松さんに付いて来てもらったのは「私の傍にいたら襲撃されても安心」という思いあっての事。せっかく出来た友人が下らない事で傷つけられるのを避けたかっただけ。が、ふたを開けてみたら今回のMVPは明らかに赤松さんなわけで。

 襲撃された後方部隊の救援を行い、拉致された人を発見し、撃破された主力(私だ)に代わり対象の殲滅までやってのけた。意味が分からないレベルの大活躍。


 なにそれ?赤松さんって、そんなキャラでしたっけ?って感じです。

 とは言え、とは言えですよ、彼は少し前まで魔術のまの字も知らない普通の人だったわけで、そんな人にここまでやらせてしまった事が・・・やるせません。しかも、私のために人殺しまでさせてしまいました。取り返しがつきません。これ、もう、どう責任を取ったら良いかさえ分かりません。あまりに取り返しがつかなさ過ぎて笑いが出て来そうです。

 普通に生きていた赤松さんを社会の裏側に引き込んで、そして、状況で流して表に戻れなくした・・・・まるで暴力団の手口みたい。


 そして、赤松さんについてはもう一つ頭の痛い問題があったりします。実は協会、というか課長からの指摘があって赤松さんについての調査を進めていたのですけど・・・いえ、私は調査なんてする必要は無いと思ったんですよ。でも、さすがに短期間での異常な成長を指摘されると、調査の必要性について疑問を挟む事は私の立場では難しかったわけでして。・・・実際、どう考えても不自然かつ怪しさ満載なんですもの。


 まず行ったのは通常の身辺調査。こちらは特に目新しい事は見つかりませんでした。普通に地方の高校を出て、都会の工場で働いているだけ。交友関係も特に無し(私と同じだ)、身寄りも既に無し。びっくりするぐらい何もありません。


 もう一つの調査、魔術的観点からの調査が少し問題。本人をいきなり調査するってのも何なんので、まずはクロちゃんの調査から始めたのですけど、そこで激しく赤松さんの発言と食い違う内容が見つかってしまいました。


 こちらの調査実施者は柏木さん。二人が始めて出会った時に、うまくクロちゃんだけになるように誘導して簡単な診断を行ってもらいました。人の良い赤松さんの事ですから、恐らく簡単に誘導されてくれた事でしょう。・・・部屋にドーナツがあったから買い出しに行かされたんだと思います。で、いきなり詳細な事実が出て来るわけもなく、初回調査で分かったのは少しだけ。

 柏木さんが報告書をくれた時に「命の恩人なわけっすから、あんまりコソコソ調べるのはちょっと」との発言があったので、調査報告書に全てが書かれているとは限りません。ですが、そのちょっとの内容だけで十分に頭が痛くなりました。


 クロちゃんの事で分かったのは二つ。まだ生まれて間もない若い使い魔である事。内包する魔力も少なく魔術師とペアでないと使い魔単体で出来る事は非常に限定的であろうという事。


 そりゃ、柏木さんからすると経緯も知らない訳だし、命の恩人に気を使って目一杯薄くした当たり障りの無い報告を用意したら、こんな感じになるのでしょうね。でもね、赤松さんはクロちゃんを拾ったって、自分はそれまで魔術師じゃなかったって言ってるわけで・・・もう全然辻褄が合わないわけです。

 こんなのどう報告あげたらいいのでしょうね?


 私にとっても赤松さんは命の恩人ですし、その前に大事な友人でもあります。だから、赤松さんとクロちゃんの不利益になるような事はしたくない。というか、絶対にするわけにはいかない。

 でも、隠し事があるのか、本人に自覚さえ無いのかは分からないですけど、赤松さんには「何かある」って事だけは客観的に見ると明らかなわけでして。


「・・・どうしたらいいんですかね、本当に」


 そんなこんなで無為に時間が過ぎていく。どうせ私は調査なんか出来ないし、休養という事でのんびり過ごすことに問題はない・・・はず、たぶん。


 でも赤松さんの事だけは、これからどうすべきかを決めておかないといけない。これは深い考えなしに彼を巻き込んでしまった私の最低限の責任でしょう。

 彼とクロちゃんが今まで通りに生きて行くために私はどうしたら良いのか。あるいは赤松さんが幸せに生きられるのはどんな道なのか。


 その時、携帯に着信があった。相手は・・・東京にいる課長。


 私が呑気に寝たり悩んだりしているうちにも状況は動いていた。ただ私が知らないだけで。


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