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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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6-2:猫と魔術師 案の定、カチコミです。

 案の定というか予想通りというか、隠れ家に戻ってきた依城さんが僕達に告げたのは襲撃の予定だった。もちろん出発は今晩。即断即決速攻の依城さんらしい決断。へこんでてもブレないところに非常に好感が持てる。流石、依城さん!期待を裏切らない!!

 ただ一つ予想外なのは魔術協会の方針だった。


「赤松さんには申し訳ないのですが、犯人の魔術師は出来る限り穏便に確保するようにと協会から指示が出ています。

 今回使われた魔術の規模は魔術師単独では実現不可能なものです。大人数による綿密な準備を重ねた儀式魔術か、あるいは『特殊な霊装』の存在が想定されます。もちろん、そんな大人数の魔術師を確保して協会から隠れる事は不可能なので、後者の可能性が高いと思われるわけですが」


 魔術協会があれだけの事件を起こした相手を『穏便に済ませられないか検討している』というのは、正直ちょっと驚き。世間体とかあるし「ぶっ殺してやるぜ」みたいなノリで動くだろうなって思ってた。でも、まぁ、いくら上からそう言われたところで


「協会は霊装の存在を踏まえて『穏便な確保』と言っているのは分かるのですが、私個人としては到底受け入れられるものではありません。あんな大きな事件を起こして、それに赤松さんだって殺されかけたのに・・・穏便とか・・・そんなの出来るわけがないじゃないですか!!霊装なんかタコ殴りにしてから獲

 ってきたらいいんですよ!!」


 感情が高ぶって依城さんが大きく声を上げた。


「おぉ・・・」


 柏木さんが感嘆の声を上げながら何故かぱちぱちと拍手。

 なんでさ。


「そうよねぇ。そんな無茶苦茶する相手を甘やかすのは違うわよねぇ。ナギの言う通り叩きのめしてからゆっくりお話すればいいんじゃない?」


 クロも概ね好意的。というか好戦的。うちの猫に依城さんの悪い影響が。

 まぁ、でも、かくいう僕も、


「そだね。その方が依城さんらしくて良いと思うよ」


 よく分からんが笑顔で後押しだ。もういいや。やっちまおうぜ。


「みなさん、ありがとうございます。一緒に頑張りましょう」


 依城さんは少し涙ぐみながら、そう答えた。ちょっと感動的なやり取りしてるっぽいけど『討ち入りしてボコボコにしてやろうぜ』って言ってるだけなんだよね。まぁ・・・僕も一緒にやるんだけど。あと、『一緒に』って言ってるけど、柏木さんはドン引きしてるね。彼は最初に拍手しただけであって賛同は別にしてなかったものね。


 というわけで、早速襲撃の用意の開始です。ちなみに懸念していた柏木さんの配置の件だけど、彼には外部協力員の人達と一緒に『工房』を周囲から隔離する作業に入ってもらうらしい。「前線じゃなくて良かった」と心の底から安堵している柏木さんに微笑ましさを覚える一方、僕は依城さんと一緒にカチコミ組みとの事。前線です。最前線です。・・・だと思ったよ。


「これで前回の恨みを晴らせますね♪」


 依城さんは用意をしているうちに、すっかり機嫌も戻っていつも通り。発言も思考もいつも通りの戦闘民族で僕も一安心・・・

 そして今回の装備だけど、まず依城さんがわざわざ我が家から持ってきてくれた塩ビパイプ!それに黒いツナギっぽい霊装!!そう、今回は僕にも魔術的装備があるのです!前回はTシャツとGパンで死にかけたからね!必要だよね支給品!従業員の命を守るのも雇用主のお仕事だもの!!ご安全に!!!


 支給品の装備があるだけで、なんだか妙に嬉しい。早速着てみるとゴワゴワ感も無く生地の繋ぎ目さえ感じられず実に快適。工場で着てる作業着よりだいぶ高価そう。実に良いね。良い仕事道具は現場のモチベーションを高めるのです!


「この霊装は量産品ではありますけど、少し魔力を通しておくだけで高い防刃性と防弾性を発揮する事が出来る高性能なものです。もちろん、魔力が込められた攻撃には無力ですけど、単純なトラップの類なら、これだけで十分に防げますので安心して下さい」


 そう説明する依城さんも同じタイプの黒いツナギを着ている。ツナギと言いつつも、各所に設けられたベルトで生地を絞れるようになっており、ダブついている感じは無い。さすが戦闘用って感じ。

 そういや、柏木さんが着てるのも同じような形だから魔術的な装備品なんだろうね。ずっと「あの兄ちゃん、なんで普段からツナギ着てるんだろう?」って思ってた。


「あと、こちらも渡しておきますね」


 依城さんからずっしりとした板?も渡された。なにこれ?・・・スマホだ!これスマホだわ?!Gショックみたいなスマホ!!


「今回、後方のチームと距離も開きますし、業務用の丈夫なヤツを貸与させて頂きます。遊びに使ったら駄目ですよ?」


 依城さんは良い笑顔とともに更なる支給品をくれた・・・あれだね、魔術要素が欠片も無いね。いや便利な物は使うべきだと思うよ、確かに。でも、なんか、ちょっと残念。念話的な物とか、そういうのは期待してはダメなのかな?


「さて、用意も出来たしそろそろ向かいましょうか。今更、夜襲が効くとも思いませんけど、流石にあんな事件をまたやられたら堪りませんからね。サクサク片づけてしまいましょう」


「そうね、さっさと終えて、みんなでご飯でも食べに行きましょうよ。ドーナツも美味しかったけど、やっぱり他の物も食べたいのよ」


 依城さんとクロは相変わらず好戦的というかなんというか、とにかく前向きだ。


「俺は後方だからいいっすけど、赤松さんは気を付けて下さいよ。自分の陣地にいる魔術師って、本当に何をしてくるか分からないとこあるんで。危なくなったら逃げて下さいよ。命あっての物種っすよ」


 その一方で柏木さんは実に普通。・・・うん、なんか癒しさえ感じるわ。


 まぁ、でも、真面目な話、柏木さんの言う通り。安全第一で頑張りましょう。クロもいるし、仕事が出来なくなるような大きな怪我や極端な危険は避けましょう。


 そんな感じで微妙に乗り気でない気分を抱きながらも、その夜、僕達は行動を開始した。

 


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