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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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5-9:猫と大事件 マスターは二回変身を残していたわけよ

「ねぇ、ナギ。わたしに聞いてもあんまり分からないわよ?」


 日曜の激戦から一夜明け、私はクロちゃんに尋問?を行っている。

 一体あの場で何があったのか?あの強力な魔力の反応は何だったのか?何が赤松さんをあそこまでボロボロにしたのか?何故怪我が治ったからといって翌日に普通に仕事に行くとか言うのか?馬鹿じゃないでしょうか?

 と思ってたらクロちゃんを置いて赤松さんはマジで出勤していかれました。

 まだ遠目で見ても分かるほどフラフラしていたので心配です。というか馬鹿じゃないでしょうか?


「正直、今回わたしは何もしてないのよね。なんか凄く強い影?みたいなのが出てきて、追い込まれたマスターがなんか凄い強化魔術を使って巻き返したけど、向こうもパワーアップしてズタズタに切られて。もうダメだ!って思ってたらマスターがもう一段階パワーアップして逆転したの。これぐらいしか分からないわよ」


「うん、さっぱり分からないですね」


「でしょー。わたしも途中から意識無くなってたし、次に気が付いたらマスターは全身から血を噴き出してるしで凄くビックリしたんだから!」


 話を聞いている限りでは相当な修羅場をくぐったはずですが、クロちゃん経由では深刻さが全く伝わって来ません。いえ、次の日に普通に出勤してる赤松さんに聞いても同じな気がしますね。ペットと飼い主は似るとか、そういう話でしょうか?

 にしても、影?とやらの事も気にならないではないのですが、それよりも分からないのが


「パワーアップって?」


 普通、人はそんな事しない。


「それがねぇ、わたしにもよく分からないの。なんかこうマスターが使っている魔力の量が・・・こう・・・ドカンと増えて、強化魔術の濃さがギュっと上がる?みたいな?」


 なるほど。よく分かりません。

 強化魔術の濃さ?強さではなく?ニュアンスが難しいですね。昨日の夜、自分にも奥の手ぐらいはあるって赤松さんが言ってたけど、それの事かな?


「そう言えば、マスターにまだ秘密にしといてって言われてたような。

 ・・・・・

 ・・・・

 ・・・にゃーん」


 前足で顔を洗いながら可愛らしく鳴くクロちゃん。


「にゃーんって、いまさら猫のフリして誤魔化すのは無理じゃないです?」


 フリというか猫ですけどね、見た目だけは。


「にゃにゃにゃーん」


「雑では?というか、もう遅いのでは?」


「それもそうね。たぶんマスターもどうしても隠したいってわけでも無いと思うし。まぁ、いいわ」


 割り切るのが早い。いや割り切るというか、この子は何も考えていないだけなのでは?


「一回目のパワーアップは、マスターが『頑張って出来るようになった』って感じだったのよ。普段使ってる強化魔術の出力を上げていって、特に目とか手足はすっごく強くしてたみたい。ズバッと避けて、スッと近づいて、パンチ一発!みたいな。

 あれは格好良かったわよ!・・・そのすぐ後で影にボッコボコにされたけど。

 それで二回目の方だけど、こっちはなんだかよく分からなかったのよ。話し方も気持ち悪い感じになってたし。たぶん、わたしの演算領域も使って強化魔術を何か別のもっと強い魔術に作り替えてたんだと思うのだけど。そうね、まるで別の誰かが乗り移った感じ?みたいな?ほんと全然分からなかったわ。まぁ、要はあれよ。つまり、マスターは二回変身を残していたわけよ」


「いえ、そのまとめ方はおかしいです」


 ノリで生きてますね、この猫。


「確かに変身はしていないかも知れない。でも二回目の時はわたしもマスターもあんまり記憶が無いし、案外変身してたかも?」


「いえ、してませんって」


 残念ね、そう呟きながらクロちゃんは少ししょんぼりしながら俯いた。と思ったら自分でカニカマの袋を開けて食べ始めた。爪先を強化魔術で鋭くして開封したみたい。無意味に器用で自由過ぎますね。


 それにしても、使い魔の演算領域を自分の魔術の高度化に使うというのは、なかなか凄い話だと思います。もちろん、そんな技術があるかどうかは寡聞にして知りませんけど、家系の技術の積み重ねが無い魔術師なら密かに探究していても不思議ではありません。自分の頭の外に計算リソースを増やす事が出来るのならば、術式が洗練されてなかろうが、効率が悪かろうが、有り余る計算能力で押し切る事が可能になるかも知れないのですから。

 もし、そんな事が可能になれば魔術師の勢力図が大きく変わるかも知れません。家系の差で下の立場に甘んじていた魔術師達による下克上の時代が訪れる・・・かも知れません。


 目の前でカニカマを食べている黒猫がそんな可能性を秘めた存在とは思い難いですけど、赤松さんがやった「二回目の変身」とやらは、そうでも考えないと説明が付かないですし・・・いえ、変身ではないでしょうけど。


 変身は置いておくとしても、あの時、地下にいた私でもはっきりと分かる規模で何らかの魔術が発動していました。そんな魔術行使は知識と経験の無い彼だけでは不可能はなはずです。それに赤松さんは言っていました。彼の魔術の知識はクロちゃんが魔術で押し込んだ物だと。つまり「使い魔を外部計算領域にする手法」は既に存在していて、それが何処かの魔術師によって赤松さんに押し付けられた?


 もし私の予想が当たっているなら、赤松さんとクロちゃんは色々な困難に見舞われると思います。疎ましく思う存在も多いはず。妬ましく思う存在も多いはず。それに「誰がこの技術を作ったのか?」という最大の懸念もあります。


 でも、たぶん、彼はどんな事情があっても何食わぬ顔で困難に立ち向かうのでしょう。きっとリスクなんて微塵も考えずに。だから・・・


「ねぇ、クロちゃん。まだ『私が思うには』ってレベルの話なんですけどね。クロちゃんの演算領域を赤松さんが使ったっていう話、それがクロちゃんの使い魔としての本来の能力なんじゃないかな?今回の赤松さんはたまたまその機能をうまく使えたとか」


 私は赤松さんとクロちゃんの味方になる事を決めた。

 


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