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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
序章:猫との出会い

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2-1:猫と海 マジかよ。幽霊とかいるの

今までのおさらい。拾った猫がしゃべった。


というわけで海です。今は暑い夏まっさかり。新しく増えた家族(猫)と一緒に遊ぶために海なんて実にいいじゃないですか。

まぁ、本当は、猫さん、もといクロの要望で来ただけで遊ぶわけじゃないし、そもそも今は遊ぶのに適した日中でもなく夜だし真っ暗なのだけど。

海水浴場みたいに整備されているわけでもなく、漁港があるわけでもない夜の海岸。よって人っ子一人いない。・・・静かな夜の海もいいもんですな?


ちなみに、自宅から徒歩→バス→徒歩の小一時間で海でございます。本日の目的は、クロのエネルギー源?確保のためのハンティング。おじさん何も分からないまま駆り出されている状態なので少し辛いです。


「はぁ、これが海なのねぇ。暗くてよく分らないけど、凄いものねぇ」


当の本人であるクロは波打ち際でウロウロしながら海に感動している。自称使い魔とかいう謎の存在だが、どう見てもその姿形は猫そのもの、しゃべるけど。・・・可愛いからどうでもいいや。


「てやっ!」


波に猫パンチ猫パンチ!

あれだろ?しゃべるけど猫だろ、やっぱり?いや、普通の猫なら波は怖いはず?つまりは、根性の座ったしゃべる猫という事か。


クロはそれからもしばらく波と戯れ続けていた。いつまでも眺めていたい気もするけど、夜の海岸に一人で立ちっぱなしもなんか辛い。そろそろ声かけるか。


「クロや、目的の物はありそうなのかえ?」


夜の海で人もいないから猫に話しかけても安心!不審者じゃないよ!猫とお話ししてるだけだよ?誰にも迷惑はかけてないから通報はやめてね?


「んー、なんかぼんやりと気配っぽいのは感じるから、ちょっと歩きながら探してみましょうか」


「マジっすか・・・地縛霊とかそういうのだったり・・・・」


話が進むのは良いことだけど、それはそれで嫌な物が近づいてくる予感がして実に微妙。



さて、なぜ夜の海で探し物?をするはめに陥っているかと言えば、それはひとえにクロの生存戦略のため。よく分らないまま結んだとはいえ契約上の問題には速やかなる対処が必要なわけです。



もちろん、契約なんか無くてもやるけどさ。



今朝方の突然の契約のすぐ後、僕はクロと海に向かう事になった。


「んでさ、契約が終わってすぐのとこ申し訳ないんだけど、これで終わりじゃなくて、どうにかして外から魔力を取り込む必要があるのよ」


よく分らないままにクロのマスターとやらになった途端に次の要求がやって来た。


「さっきは『これでもう大丈夫』って言ってなかったっけ?」


「当面は確かに大丈夫なのよ。たぶん三日ぐらいは問題ないんじゃないかしら?」


クロはちゃぶ台の上に座り右手をゆらゆら揺らしながら説明した。肉球は柔らかそうなピンク色。きっと今まで室内飼い。

にしても、三日か。あまり猶予はない。クロは妙に余裕そうだけど、飼い主?になったからには、僕がしっかり対処を考えないと。


「本来だったら使い魔のマスターは当然魔術師なわけで、そこから活動に必要な魔力が十分に送られてくるはずなんだけど」


「はい、ちょっといきなり難しい事を言われても出来ません」


やれる事はやってあげたいが過度な期待は早めに潰していくスタイル。出来る事を捜しましょう。


「ええ、気にしなくてもいいのよ。魔術なんて家系が全てみたいなとこがあるし、契約して消えないようにしてくれただけで十分ナイスよ!」


ぴしっと黒い右手でこちらを指しながらフォローしてくれた。なんと良い猫なんだ。下げて上げる!見事な人心掌握術!


「でも、どうやったって不足分は出てくるから外から調達するしかないのよね。無駄使いしなければ、そうそう必要になるとも思わないけど」


「外から取ってくる?具体的にはどうしたらいいの?」


・・・生贄とか言われると困るなぁ。鶏肉とかでどうにかならんのかしら?


「手っ取り早いのは他の魔術師からもらう事だけど、すぐに見つかるとも思えないし。そうねぇ、取り残された誰かの強い思念とか魔術の残滓とかがあれば、簡単に吸収出来るから都合が良いかなって思うけど」


あれ?、いまさらっと言ったけど


「強い思念って・・・それって幽霊とか?」


「そうそう幽霊みたいな形になってくれてたら丁度良いわね」


尻尾をピンと立てて上機嫌に答えてくれた。正解みたいだったけど


「マジかよ。幽霊とかいるの・・・」


軽くショックだ。実在すんのかよ、幽霊。・・・猫の形をした何者かがモリモリしゃべっている状況は一旦わきに置いておくけど、マジでちょっとショック。


「なんか驚いてるみたいだけど、あれよ、私も霊体化出来るわよ。マスター以外から見えなくなるの。重さも無くなるし便利よ」


そう言いながらクロはちゃぶ台から僕の頭の上へと飛び移った。


「ね?重くないでしょ?」


語りかけてくるクロの重さは全く感じられず、目の前に垂れている尻尾は半透明。

マジかよ。


「すげぇな、これが魔術か!」


年甲斐もなく初めて触れた得体のしれない現象にちょっとテンションがあがる。


「ふっふっふー、魔力さえあったら、もっと色々出来るんだから!魔力さえあれば!!」


文字通り音もなく、ちゃぶ台の上に飛び降りるとドヤ顔っぽい雰囲気を出しながらクロはそう告げた。

というか、ちゃぶ台が猫の置き場所みたいな感じになってきてるけど、キャットタワーとか買った方が良いのかしら?

いや・・・そういうのは今は別にいいか。目の前で不思議現象が確認出来た以上、クロがおしゃべりする猫である事も、世の中に魔術とやらがある事も事実なわけだ。


「証明終了。僕は正気だ」


「いきなりなに言ってんの??・・・変な人ね。ところで、近くにあまり人の来ない海岸とかない?たぶん、そういうとこなら何かいるとは思うのよ!たぶんだけど!!」



そんなわけで、早速その日の夜に人気のない海にやってまいりました。電車を降りたら目の前が海岸線。実に素敵な風景です。幽霊探しじゃなければ素直に楽しめたね。

ちなみに、霊体化とかいう謎技術のおかげでバスも電車もクロを頭の上に乗せたまま乗り込みました。正直、スゲェ楽しかったです。

みんな知ってるかい?僕の頭の上には透明な猫が乗ってるんだぜ?みたいな。ヤバいね。スゲェいかす!クール過ぎてタマラネェ!!


そして、そんな謎生物クロさんは、寄せては引く波を興味深そうに眺めて遊んでいるばかりで、特に何かをしている様子は無い。

良かった。幽霊なんてそんなスグに見つかるようなもんじゃないんだ。もっと腰を据えてじっくりと。今日は下見ぐらいのつもりで


「おっ、何か反応があったわよ!あっちね!!」


残念ながら見つかったみたい。クロが人気のない方向を小さな手で指しながらテンション高めで叫んでおる。


「意外とすぐに見つかるものねぇ。探査術式を起動したら即釣れたって感じだったわよ。こんな簡単に進んでいいものかしら?あっちの方だけどマスターにも見えるでしょ?」


「いや、なんも見えんよ」


目を凝らして探してみるものの何も見つけられません。僕はまだ幽霊を目視できるレベルで常識人を辞めたつもりはない。ただ猫としゃべれるようになっただけだよ。


「おかしいわねぇ?パスは繋がってるんだけど・・・まぁ、いいか。じゃあ、私が見ている物を共有してあげるわね!」


なんのこっちゃ?と思う間もなく、軽い眩暈が。


「これで私が探知出来たものは、マスターにも見えるようになるわよ!やったわね!」


相変わらずクロが妙に高いテンションでいまいち意味の分からない事を言ってくる。というか、一応本人の了承は取ろうよ。


「ほら、見て!あっちよ!!」


小さな黒い手で少し離れたところを改めて指し示す。すると、そこには


「マジっすか・・・」


波打ち際にぼんやり蒼く光る何かの塊が漂っていた。

見えちゃったよ、おい。


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