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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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5-5:猫と大事件 調子に乗ると、ろくな事が無い

 入口の竜牙兵は頑張って僕が倒しました。瞬殺?って感じで頑張ったと思うんですよ。誰の被害は出してないし、使った費用も塩ビパイプ一本分(約300円)だし。

 でも、まぁ、いま目の前で繰り広げられている光景を見てると、僕の活躍?とか無くても良かったんじゃないかなって。ホント未だ見ぬ魔術師さんが気の毒かなって。



 この建物は、会社の保養施設とは言えバブル期の建築物でよくある通り無駄に豪華な作りをしている。それはここ玄関ホールも例外ではない。極端に大きく取られた吹き抜け。入口正面に無駄に幅広く取られた超ゆったりした階段。壁には写真とか絵がおしゃれに飾ってあったみたいだし、きっとその下にはゆったりとしたソファーが置いてあったり。そんな素敵であったろう空間で依城さんと黒い武士が暴れ回っている。


 ほら、今も


「あははっははっは!!早く来ないと焼いちゃいますよ!!!はははははっはは!!」


 依城さんが向こう側に行ったような変な笑い声を上げながら暴れまわっている。

 黒い武士が竜牙兵を黙々と薙ぎ払う。その反対側で依城さんは短剣っぽいものを構えながら白っぽいビームを撃ったり(マジでビームだよ、マジで)、竜牙兵の足元から謎光線光を出して焼き払ったりしている。


 竜牙兵が雑兵って言ってた意味が分かりました。と言うか、むしろ雑魚だわ、あれ。もはや無双ゲーにしか見えないもん、僕がやると格ゲーなのにね。


 かれこれ5分以上蹂躙劇が続いてるので玄関ホールの足元は骨だらけ。少し時間を置くと勝手に細かく砕けていってるから、そのうち灰だらけの謎の空間が出来上がりそうな予感。ちなみに、そんな状況で僕は何をしているかというと鈴木(仮)&田中(仮)コンビの護衛。ただ二人の前に立っているだけとも言う。とてもむなしい。


「はははっはははっははっははは!!」


 依城さんの哄笑が響き渡る。骸骨君達を薙ぎ払いながら笑い声を上げ続けるOL(偽)

 シュールだわー。他の人には見せられん光景だわー、これは。

 でも、クロは依城さんの活躍?を楽しんでいるみたい。後頭部に振り回した尻尾がわさわさと当たる感じがずっとしている。ホントうちの猫は可愛いわ・・・・・・・・・・・帰りてぇ・・・マジ帰りてぇ。


 そして気が付くと祭りは終了していた。黒い武士はいつの間にやら姿を消し、依城さんの笑い声も止まっていた。そうだ、仕事を始めないと。


「クロ探査よろしく」


「あいあいさー・・・・・

 ・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・・

 もう近くに魔力の反応は無いみたいよ。全滅させちゃったんじゃない?」


 お仕事終了のお知らせ。


「依城さーん、もう魔力の反応ないんだってさー」


 彼女は既に分かっているかも知れないけど、ホウレンソウは大事。職場でそう聞きましたもの。

 依城さんがこちらにゆったりと戻って来る。その表情は実にさっぱりした笑顔。・・・こわ。


「歯ごたえは無かったけどボリュームはなかなかでしたねぇ。怪我とか無かったですか?」


「僕達は何も。依城さんも・・・大丈夫そうですね?」


「ええ、もちろん!久しぶりに暴れられてスッキリしました!」


「ヨカッタデスネー」


 依城さん、スゲェ良い笑顔でご機嫌そう。この人にあんまり調査とか地道な仕事をさせてたらダメなのでは?危ないよ??爆発するよ??


「んじゃ、地下の調査に向かいましょうか!まだ逃げてなければ主犯も隠れているかも知れませんよー。見つかるといいですねー」


 うっきうきな感じで依城さんはそう続けた。にしても、この広い建物を全員揃って一か所ずつ調査するってのも無駄なような


「ねぇ、僕は上の方を見てきていいかな?分散して調べた方が速そうだし。なんか見つかったら連絡するからさ」


「それもそうですね」


 僕の言葉に軽く同意した依城さんは鈴木田中(仮)コンビを連れて地下に向かって行った。工房の所在地として有力な地下の調査、僕とクロは専門的な事は無いも出来ないし、別にいなくても大丈夫だよね?

 というわけで、せっかくの機会を活かして無駄に豪勢な建物の探検をしてみよう!


「ねぇ、マスターどこから見ていく?やっぱアレ、定番の最上階社長室みたいなとこ?」


「いや、保養所に社長室とか無いっしょ?・・・無いよね?バブル期の建物だからあったりするのかな?あの時代って無駄な物が大好きだったらしいし」


 そんな話に花を咲かせながら非常階段をてくてく登っていく。大きいとは言え保養所。4階までしかないのですぐに最上階に到着。防火扉が閉じられていたけど、そんなのは強化魔術の敵じゃないぜ?!


「どっせい!!」


 蹴り破ってみたり。真ん中からひしゃげた防火扉は勢いのまま宙を飛び、壁に激突し轟音を上げた。


「我ながらスゲェ威力。これ間違って人に使ったらエライ事になるね。必中必殺みたいな?」


「必殺どころか、同時に証拠隠滅も出来そうよね。遺体なき殺人事件発生!現場に残されたのは肉片と血痕のみだった!!!」


「しゃれにならねぇ?!・・・さて、遊んでないでちょっと仕事もしましょうか。では、クロよろしくー」


 猫に頼るだけの簡単なお仕事です。


「はいさー」


 毎度おなじみクロの探査魔術。あれだけ派手に暴れ回って動きが無いって事は何も無いんだろうけど。仮にあったとしても罠とか地雷とか、それぐらいかな?


「ん?魔力の反応は無いけど誰かいるみたい?でも何か反応が薄い??」


 あれ?当たりを引いた???


「了解。向かってみよう。クロ、念のため霊体化しといて」


 僕も武器(塩ビパイプ)を構え、気合を入れ直す。

 反応があったのは奥まった部屋の一室。中にいるのが人質や隠れ住んでいるだけの普通の人だった事を考え、蹴破る事はせず普通にドアノブを捻る事にする。

 鍵もかかっておらずドアノブは普通に回った。ドアを開け広げてみたが中から何の反応も無い。

 思い切って覗き込んでみる。

 やや薄暗いがカーテンが取り外されているため部屋の中の様子はうっすらと見えた。

 部屋の真ん中に誰か・・・立っている?うん。少し小柄な人影がその部屋の中にはいた。子供かな?


「ねぇ、君こんなところで」


「ダメ!マスター!避けて!!」


 クロの叫び声が聞こえると同時、僕は後先考えずに全力でバックステップ。

 踏み切った際の反動で床板が砕け破片が飛び散るのが見えた。

 そのまま着地の勢いを殺しきれず廊下に背中から叩きつけられた。が、痛みを堪え、すぐさま立ち上がる。


 握っていたはずの塩ビパイプは早速取り落としてしまったので、新しい物を取り出した。でも、こんなので、どうにかなるのかな?相手の武器は恐らく真剣なのに。


 部屋の入口まで出てきた事により、人影はその姿をこちらの目に晒す事になった。だが、人影は光の下に出てきても人影だった。黒い人の形をした『影』が西洋刀をこちらに向けている。

 これは、たぶん・・・ヤバい。全力で対応しないとたぶんやられる。

 幽霊や骸骨の時には全く感じなかった「危機」が目の前に迫っている。自然とそう思えてくる。


 とりあえず、出せる札を出すしかない。まずは塩ビパイプに強化魔術を施し、そして投げる。狭い廊下では長い刃を振り回せないのだから、回避は体裁きに頼る事になるはず。運が良ければ避ける時に隙が生まれるかも知れない。幸いにもパイプの残弾はまだまだあるわけで


 だが僕のそんな期待もむなしく、甲高い音を立て投擲したパイプは切り払われた。あれ?壁は???・・・うん。普通に何の抵抗も無く壁も切り裂かれてるね。


 よし次。

 武器袋を捨て、人影に向かい前傾姿勢でダッシュで駆ける。骸骨の時とは違い後先考えない全速で。

 接触のタイミングに合わせ剣が横なぎに振り払われた。

 受ける防具が無い以上、真っすぐ突っ込めば切り払われて終わり。だけど、こっちは少し触れるだけで目的を果たせるのだから付き合ってやる必要はない。


 剣の軌跡に入る少し手前、そこで踏切り、前方宙返りで振るわれている剣を飛び越えた。

 そして、すれ違う瞬間に相手の頭部に一瞬だけ手を伸ばす。


 ほんの一瞬の掠めるだけの接触。


 その瞬間、クロが略奪の術式を発動し影は繭のような赤い光に包まれた。

 その様を視界の隅で確認しながら、僕は部屋の中央に着地した。


 即座に赤い繭が青い光で切り裂かれた。それは繭の内側から振るわれた一瞬の剣閃。影が持つ剣は今もまだ鈍く青く輝いている。

 ・・・あの剣も魔術がかけられた装備品か。しかも鈴木さんや田中さんのとは比べられない程に強力なやつ。


 あれじゃん。思いっきり罠じゃん。一気に追い込まれてるし。自分の判断の甘さが嫌になる・・・依城さんと一緒に回れば良かった。別行動にするんじゃなかった。


「マスター、他に何か打つ手ってある?」


 クロが不安そうに問いかけてくる。猫を心配させるなんて飼い主失格だ。ホント情けない。


「うん。大丈夫。もちろん対策は万全に用意してるよ、こんな事もあろうかとってね。でも今からする事は依城さんには秘密にしておいてね。ちょっと秘密の方法を使うから」


 せめて猫の前だけでは格好をつけてみたけど、ちょっと遅かったかな。まぁ、いいか。これから挽回すれば良いだけの話なのだから。

 


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