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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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5-3:猫と大事件 地道な仕事はあまり向いてないんじゃないですかね?

 ここ最近、依城さんの表情がヤバイ。クロを毎晩送り届けてくれているのだけど・・・日に日にダメな感じになっていく。

 最初の一週間は「ちょっと疲れてるかな?」ぐらいだったけど、二週間目に入ってからがヤバイ。「追い込まれてますよ」って感じが激しく伝わってくる。


 クロ経由だから情報がちょっと曖昧だけど、どうにも何の手がかりも無いまま時間だけが過ぎているって状況らしい。戦闘ではあんなに楽しそうだった依城さん・・・調査とか地道な仕事はあまり向いてないんじゃないですかね?

 にしても、あの憔悴ぶりはヤバイ。相手は何もしていないのに「凄いダメージだ」みたいな?直接やりあうと瞬殺だろうし、間接攻撃でジワジワ甚振ろう!的な路線は正しい気がする。意図してないとは思うけどさ。


「ごめんね。クロちゃん、活躍させてあげれなくて。明日までには何か手がかりを掴んでおくから。じゃあ、また・・・」


 疲れた様子の依城さんが玄関先でクロに別れの挨拶をしている。


「うん、わたしの事はいいから無理しないで?たまには他の人に任せてナギも少し休んだ方がいいんじゃない?」


 猫に気を使われるOL(偽)がそこにいた。哀れだ。


「大丈夫。私の仕事なんだから頑張らないと」


 依城さんはそう言い残し去っていった。哀愁とか悲壮とかが似合いそうな背中。

 いや、マジあれダメじゃね?

 このまま続けたら過労死とかするコースじゃない?相手がいる仕事だから週末は休みってわけにはいかないだろうけど・・・

 ちょっと魔術協会という組織のサポート体制に疑問が湧いてきた。いや、そもそも依城さん以外の人とまだ会った事すら無いから組織の在り方とかは知らないけど。・・・会った事ないというか、これからも会いたくはないかも。どうせ危険人物の知り合いが増えるだけだろうし。

 そう思いながらも、僕とクロもなんとなく疲れたような気分で床に就いた。早く調査なんか終わればいいのに。そんな気分で心は一杯。



 そして翌日、土曜日



 寝る前は『ゆっくり8時まで寝て、午前の間にクロに特訓で出た結論を聞いてもらおう』って予定だったのに、朝の早くからドアをガンガン叩かれる音で目が覚めた。時間は7時。まぁ、来客があってもおかしくない時間ではあるけれど


「赤松さん!起きてますよね!!依城です!!ちょっとお話があるんで開けて下さい!!」


 平日と休日の区別が付かないソルジャーがそこにいた。

 そうだね。確かに平日は7時に起きてるからね。気は使ってくれたんだね?ぶっちゃけ結構イラつくが起き上がりドアを開ける。


「おはようございます!見つけたんですよ!やっと見つけたんです!ちょっと相談させて下さい!!!」


 血走った眼をした依城さんが返答を待たずにグイグイ部屋に押し入ってきた。

 そして、そのままこちらの様子を確認もせず、布団を部屋の端っこに蹴り寄せ、壁際に立てかけてあるちゃぶ台をセットし、自分のノートパソコンを開く。

 家主ですが逆らう気力はありません。だって怖いもん。

 とりあえず近所迷惑になるので玄関のドアだけ閉めて、ついでにクロをさすって起こす。うちの猫は寝起きが悪いですからね。


「さぁ、見て下さい!これです!!!」


 一人ハイテンションな依城さんがノートパソコンの画面を近づけてくる。近すぎて見えねぇよ。


「ええと、何これ?骨?骨格模型?にしては頭が無いし、なんか上半身の構造がおかしいけど?」


 それは暗がりの中で骨人間のような物が佇んでいる写真だった。

 骨人間といっても、頭蓋骨はないし、顎はデカいし、なんか肩甲骨の辺りからあばらの太いの生えてるしで全体的になんだか不格好。良いアングルで綺麗に撮れてはいるが心霊写真にしても面白みというか説得力にかける造形に思える。


「これはですねぇ。竜牙兵っていって、よく魔術師が拠点防衛用に使用する、いわゆる雑兵なんです。一体ずつの強さはたいした事ないんですが、普通の人間にはまず太刀打ち出来ません。主な用途は魔術師の工房の警備です。低コストな事に加え、見た目のインパクト、高い防御性能によって、魔力を持たない人間に対する防衛力が凄く高いんです!知能の方は残念ながら」


 テンションのオカシイ依城さんがまくし立てる!


「ちょい待ち。この竜牙兵?ってのが見つかったって事は、依城さんが探していた魔術師もそこに?」


「ええ!きっとそうですよ!そんな未登録の魔術師がゴロゴロその辺りに転がってるわけないですから、それはもう確実です!前の遭遇戦からずっと工房に引き籠ってバレない様にコソコソしてやがったわけですよ!!あんな雑兵如き私たちの前では塵芥にすぎない事を思い知らせてやりましょう!!さぁ、行きましょう!赤松さん用意を!!」


 おぅ、まくし立てられたと思ったら、いきなり戦へのお誘い来ましたよ。これは誰かが諫めないと討ち死にしそうなパターンな気がする。

 クロの方をちらりと見てみると座ったまま寝ていた。やっぱ猫よね。可愛いけどイザって時は微妙・・・


 まぁ、猫だからね。


 つまり、僕がやるしかないのか。僕に出来るのか?僕の話は聞いてもらえるのか?でも、やらないと依城さんは・・・


「依城さん。いくら相手が格下でも向こうの陣地に安易に踏み込むのは危ないと思うよ。何か罠があるかも知れない。それこそ誘い込まれているのかも知れない。魔術には対抗出来るけど、それこそガス爆発とか塩素とか使われたら大変でしょ?」


 危険の想定が製造業の域を超える事が出来ない。分かんないよ、魔術の教育とか受けた事無いし。

 とはいえ、これで少しは落ち着いてくれたらいいのだけど。

 急かすわけにもいかないので、ジッと依城さんの様子を伺っていると・・・おや、ゆっくりと攻撃色が消えていく。


「・・・そうですね。確かに無策は危険ですね」


 おぉ、良かった。何だか分からないけど効果はてきめんだ!


「私たちに何かあった場合の後詰も必要ですし。すみません。上司にもちょっと情報共有するので待って頂けますか?徹夜でテンションがおかしくなってたみたいです。ごめんなさい」


 素直に謝れる良い子ですね。これでもっと攻撃性が低ければとても素敵だと思いますよ?

 そんなわけで、依城さんには早速、電話で上司に情報共有を行ってもらう。一方、僕は「朝の7時でも連絡がつく職場環境って嫌だな」とか思いながら台所でパジャマから着替えていた。そして、着替え終わっても、まだ報告が続いているようなので続いて台所で朝ごはんを食べる。プロテインバーといつものオールブラン。立ったままモシャモシャと。

 もしすぐに出発するようなら、もっと糖質を取らないと体がもたないけど・・・そんな事より依城さんに少しでも睡眠を取らさないとヤバい。本当にヤバい。僕とクロの命綱である依城さんが睡眠不足で使い物にならないとかシャレにならんからね。


 でも、よく考えたら、どうやって竜牙兵の写真なんて見つけたんだろう?調査班とかいるのかな?まさか徹夜で歩きまわったわけでも無かろうに?違うよね?


「お待たせしました。終わりましたよ」


 居間から依城さんの呼ぶ声が聞こえた。


「結論から述べますが、魔術師の工房に私達だけで潜入するのは危険なので応援を呼ぶ事になりました。魔術師では無いですけど戦闘と調査のプロなので頼りになるそうですよ」


 個人的にはさっきからナチュラルに現場に行くのが「私達」ってなってるのが気にかかるけど、まぁ、しゃーなしか。今更、依城さんだけを危険な場所に放り込むってのも何か違う気がするし。


「現地集合になりますけど、急な要請なので少し時間がかるそうです。14時には集まれるそうなので、それまでに私達も準備を済ませておきましょう。現場へはここから2時間もあったら行けますから、まだまだ余裕がありますね」


「依城さんの準備は?」


「私はもちろん既に準備万端です!いつだって殴り込めますよ!!」


 この人にとっての準備って、いつも戦闘の準備な気がする・・・頼りにするのも事実なのだから別に問題は無いけど。


「んじゃ、依城さんはちょっと寝ましょうか。いざという時に体が動かないとダメだし。頼りにしてますからね」


 依城さんは何故かちょっとまごまごしている。


「・・そう・・・・ですね、分かりました。お言葉に甘えさせて頂きます」


 そう言ってちゃぶ台を片付け、僕の布団を敷きだした。


「・・・んじゃ、僕はちょっと道具とお昼ご飯の買い出しに行ってきます。3時間もしたら戻ってきますんで、それまでおやすみなさい」


「うん。おやすみなさい」


 依城さんは着替えもせず、そのまま僕の布団で眠りについた。「ホテルに戻って寝てちょうだいな」って意味で言ったんだけど・・・


 ちなみに、クロは結局ずっと寝たままで起きてこなかった。全然いいんだけどね。

 


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