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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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24/27

5-1:猫と大事件 行き当たりばったりでうまく行くはずもなく

「ねぇナギ、今日はどこに行くの?」


 頭にのせているクロちゃんが尻尾を揺らしながら私に問い掛ける。


「今日はJRに乗って東の方に行ってみようかと思うの。ほら、前の場所の近くは調べ尽くしたし、犯人は離れたところに隠れているんじゃないかなって、そう思ってみたり」


「ふーん・・・そうなんだ」


 聞いてはみたものの、それほど関心は無さそうな様子。相変わらず尻尾をプラプラして、心ここにあらずって感じ。

 クロちゃんは可愛らしいだけでなく相当に聡明なようですし、探索が暗礁に乗り上げている事にも気付いているのでしょう。もちろん、「猫?だから何も考えていないだけ」って可能性も無きにしも非ずですけど。


 そんな事を考えていたらバスが来ました。なんとなく赤松さんの真似をしてみたり。たまにそれもいいかなって。

 ちなみに、彼には普通に仕事に行ってもらっています。彼にも彼の生活があるし、それに今のところ彼に出来る事は何も無いから。そんなわけで、最近は毎朝クロちゃんを迎えに行って、赤松さんに「行ってらっしゃい」を言う生活。正直ちょっと楽しい生活ではあるのですけど


「やっぱり手伝ってもらった方がいいんですかね」


 ふと、そんな言葉がこぼれた。


 前回の遭遇戦から二週間、私達は未だに何の成果も上げられていません。赤松さんからクロちゃんを借りたうえで、前回の現場周辺はもちろん、他に不自然な意識不明患者が見つかった地域の調査も行ったんですけど、残念ながら全て空振り。

 あちこちウロウロと歩き回ったものの、クロちゃんの『やけに効果の広い探査術式』を以てしても痕跡一つ見つける事が出来ませんでした。もちろん、前の時のようにSNSの噂話みたいなものも全く見つかりません。実はこっそり外部の人達にも協力してもらっているのですが、今のところ駄目な感じ。

 つまり、完全に手詰まりです。


 恐らく協会からの人間が妨害に入ったと分かった時点で、何処かに逃げるか隠れるかしてしまったのでしょう。日頃から大っぴらに活動しているような例外(赤松さんみたいな)はともかくとして、普通は魔術師なんて簡単に見つけれるものではないわけでして。

 二回連続で幸運が続いたせいで勘違いしてしまいました。課長に自信満々で探索続行を申し出た過去の自分をしかってやりたい気持ちで一杯です。

 マジでミスりました。最初に応援を頼んでおくべでした。

 もう隠れちゃったし、どうしようもないのですけど・・・


 というわけで今日も何の成果も上がらず、クロちゃんと夕方のネットカフェで休憩中。一見すると中途半端な個室ですが、ちょっとした防音効果の結界を施すだけで・・・なんという事でしょう!猫と話し込んでも怪しまれない素敵空間に早変わり!・・・便利ですね、魔術。でも、出来ればもっと派手な事がしたいです。


 そんな事を考えながら、靴を脱いで足を延ばす。体力にはそこそこ自信がある方ですけど、毎日毎日歩き詰めなので流石に足が疲れました。


「今日もダメだったわねぇ。一体どこに隠れてるのかしら?というか、ナギも毎日大変でしょ?たまには休憩も挟んだらいいんじゃない?服だって毎日スーツばっかだと息が詰まるでしょ?

 マスターなんかTシャツとジーパンばっかで、いつも超楽々って感じよ?どうよ?Tシャツどうよ?楽よ?Tシャツ楽々よ?」


 唐突に始まるクロちゃんの謎のTシャツ押し。飼い主の影響が変なところに出てますね。


「いえいえ、スーツもいいものですよ。これを着ていると変に怪しまれたりしませんし。ほら、今だって外回りの人が休憩しているようにしか見えないでしょ?

 無用のトラブルを避けるためには服装も大事なんです。それに意外とスーツも着ていて楽なんですよ。毎日服装考えなくていいですし」


「そうなんだ。・・・マスターって夜に訓練してる時に警察呼ばれた事があったのよ。あれも何か服装を工夫してたら避けられたのかしら?」


「・・・その時に服装とか行動を改めてたら、たぶん私がクロちゃん達を見つける事は出来なかったでしょうね」


「あら!よく考えたらそれもそうね!Tシャツのまま訓練続行して成功だったわね!!」


 少し疲れた時にクロちゃんの明るさは励みになる。ですが、それはそれとして赤松さんとクロちゃんコンビのポンコツっぷりに不安が募ります。敵対する魔術師にやられるとかの心配の前に、変な宗教にはまったり、妙な洗剤を買い込んだり、そういった感じの方面で詰んでしまうような、そんな危うさがあるような気がします。

 特に赤松さん、なんだか生活能力無さそうだったし。クロちゃんもいるんだし頑張って生きて欲しいところ。


「ねぇねぇ、おやつちょうだい?」


 少し考え込んでいるとクロちゃんが私の膝をテシテシ叩いてのおねだりタイム。


「はいはい、今日も持ってきてますよ」


 そう言いながら鞄からクロちゃんが好きなカニカマを取り出す。本物の猫にあげるには塩分が高すぎますが、猫型の使い魔であるクロちゃんには何の問題もありません。

 そう言えば猫型なだけなのに、なぜ言動や振る舞いが猫的なのでしょう?・・・まぁ、いいですか、可愛いから。可愛いなら別になんでもいいじゃないですか。

 そして、私はカニカマを一心不乱に食べるクロちゃんの背中を撫で楽しい一時を過ごしました。もちろん、この後の夜の調査も予定通りに空振りし、クロちゃんを送り届けて課長に報告のメールを送ってその日は終了。


 概ねこうやって遭遇戦からの二週間を過ごしました。成果としてはクロちゃんと少し仲良くなれた事ぐらい。


 この後、私達は探索中の魔術師の陽動に引っ掛かり更に一週間程度を無駄に過ごす事になり、そして致命的な事件の発生を許してしまう事になります。

 今から振り返ればどれだけ能天気な事をしていたのかがよく分かります。結局、私も赤松さんも探している魔術師の『意思』を軽んじていたという事なのでしょう。本気になった人間がなり振り構わないで行動する事が、どれほど恐ろしいか。私達はそれを分かっていませんでした。今となっては後悔ばかりが浮かんで来ます。


 初回の遭遇戦から23日後の朝8時、JRのターミナル駅を中心に短時間の大規模結界の出現を観測。

 持続時間は3分弱、半径は約100m程度と推定。

 効果は結界内の生物の生命力を魔力に変換し吸上げる事。

 被害者は重軽症者合わせて約2400人、死者は幸いにも高齢者の3名のみ。

 通勤時で混雑する駅は大混乱に陥り経済的損失は、きっと大変な規模になったと思います。正直、私はそこについてはよく分らないのですけど。


 そして、その事件から2日後、魔力が送り込まれたルートを追いかけ対象の魔術師の工房を発見。協会からの応援要員8人と私・・・それと現地協力員である赤松さんとで工房への調査を実施。

 工房では、ある意味で想定通りではありますけど、激しい戦闘が発生。戦闘の規模は当初想定より遥かに大掛かりなものとなり戦況が混乱。


 最終的なこちらの損害は応援要員2名が死亡。

 対象の魔術師についても戦闘中に死亡。被害拡大を危惧した赤松さんの手により処理が行われました。


 今回の件、私にとって一番の後悔は深い考えも無く赤松さんを巻き込んでしまった事。

 私は彼にあんな事をして欲しかったわけじゃない。

 あんな事をさせるために彼と行動を共にしていたわけじゃない。


 ただ私は・・・・・・

 


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