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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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18/27

3-4:猫と初めてのお仕事 というか、ノリ軽いねぇ、おい。

「ええ、敵ですよ」


 依城さんが獰猛な笑みを浮かべながら呟いた。この人やっぱ怖えよ。荒事になると笑うじゃん。というか、魔術師って何なの?もっとインドアで論戦とかする人達じゃないの?暴力ばっかじゃん?!


「見て、マスター。レイスよ、それもたくさん」


 クロが頭の上から警告を発する。まぁ、僕の目には何も見えないんですけどね。海岸の時みたいにクロの視界を借りる感じにしてもらわないと。そもそもさ、二人とも当たり前のように巻き込んでくれてるけど、僕って素人よ?メッチャ動けるだけの素人よ?


 そんな事を思いながら、一応探すフリはしてみる。あっち見て、こっち見て、そっち見て。そして、そうこうしているうちに、魔術の素養が無い僕にも分かって来た。為せば成る?それとも、向こうが忍ぶのをやめただけ?

 さっき見たレイスとやらが車道を挟んで反対側に集まりつつあった。なんでか6体も。ついでに言えば、さっき倒した奴と違って動きがきびきびしているような気がする。

 レイス達はスッと綺麗に隊列を整えるように動いた。動きながらもスゲェこっち見てる。ちなみに、依城さんはウキウキした顔をしている。


「さっきの件で、向こうの魔術師に補足されたみたいですね。見つかったからには生かしてはおけぬって感じでしょうか?レイスもさっきまでの自動運転じゃなくて、ちゃんと魔術師が直接コントロールしてるみたいですし。いいですね。とても、いいです。私はこういうのを待ってたんですよ!こういうのを!!」


 わー、実に楽しそう。マジで勘弁して。わりとピンチな状態だと思うけど、何故そんなに楽しそうな・・・いやプロからしたら全然ピンチでもないのかな?


「ていや」


 依城さんが適当な掛け声とともに何か箱っぽい物を道路に投げた。そして着地点から広がるように青白い光の壁が僕たちとレイスの間に現れる。

 おぉ、スゲェ流石プロ。魔術らしい魔術だ。これってバリアだよね?バリア!


「さっきは赤松さんに任せちゃいましたから、今回は私が片づけます。腕が鳴りますね!」


 依城さんは楽しそう。でもさっきとは数も質も違う感じだけど。


「6体もいますし、僕に何か手伝える事は」


「心配ないですって。私、プロですから。ゆったり構えて、じっくり見ておいて下さいな」


『プロですから』のところは俗にいうドヤ顔だった。ちょっと面白かった。


 依城さんがトランクケースを開ける。中身はなんだか護符?みたいなのや、筒?や、得体のしれない箱みたいなのが色々と入っている。その中から依城さんが取り出したのは一本の短刀だった。

 持ち手も鞘も綺麗な白木で出来ている。綺麗だとは思うけど何故短刀・・・というかサイズ的には小刀ぐらいかな、工作とかに使う感じの。見方によってはヤの付く人が人を刺す時に使うドスのようにも見える。

 何をするんだろう?まさか「往生せいやぁ」みたいな感じじゃないよね?そこまで武闘派じゃないよね?


「不思議そうな顔してますね。まぁ、見てて下さいよ。すぐに分かりますから」


 フッフッフと不気味に笑う依城さんはそう言って短刀を鞘から抜いた。

 少しの曇りもない綺麗な刃だった。でも綺麗すぎて実用性のある刃物には見えない。まるで飾る事だけを目的に限界まで化粧研ぎを繰り返した日本刀のような美しさ。

 依城さんは、そんな美しい刀を顔の前に掲げ


「来い。■■」


 何かを呼んだ。

 彼女のすぐ前の空間が滲んだ。いや滲んだのではなく、何かが滲みだしてきている。

 クロが霊体化を解除する時と同じように、その次の瞬間にはそれは実体を現わしていた

 それはやけに大きな黒い武士のような『何か』だった。


 上背は2メートル強。上半身と足腰だけ妙に大きな歪んだ体躯。その身全体が薄暗い色の甲冑で包まれている。顔は・・・面貌のせいでうかがう事は出来ない。だけど、猫背な姿勢で目線が地面を向いている事は分かる・・・いや、猫背というわけじゃない。発達し過ぎた筋肉のせいで背中が盛り上がっているんだ。身に帯びている鎧すら、膨れ上がった背中に合わせるように歪に丸く膨れあがった造りになっている。

 でも、そんな事よりも、特徴的なのは、その『右手』。だらりと下げた手首が膝より下に届く程、その腕は不自然に長い。そして、その手の先には背丈と同じぐらいはあるであろう長い太刀。


 印象を総じて言えば不気味。その一言に尽きる。ただ近くで見ているだけで怖気が走る。

 さっきは黒い武士と表現したけど、印象を正しく表現すれば、これはたぶん『鬼』だ。黒い鬼だ。レイスと呼ばれる幽霊擬きが名前負けとしか思えないほど、その存在感に差があった。

 依城さんが余裕な理由が分かった。彼女が触れている世界は、こんなにも恐ろしい。自分の輪郭も意思も明確に保てないようなおもちゃが出てくるような幕は存在しえない。


「んふふ、驚いてますね!大きくて強そうでしょ?!これが私の使役する■■!我が家系の秘伝です!!すごいでしょ!!」


 依城さんはいつも通り、いや、いつもより幾分ハイテンションだった。というか、ノリ軽いねぇ、おい。

 まぁ、いいや。僕も雰囲気に飲まれていてはいけない。目の前の武士と比べたら遥かに劣る代物とはいえ、目の前には敵がいるんだから。


 にしても、魔術の効果なのだろうけど黒い武士の名前が聞き取れないのが気になる。・・・いや、そうでも無いかも。なんかあまり知りたくない雰囲気だしさ、あれの名前なんて。


「さぁ、赤松さんに魔術師の戦い方を見せてあげましょう!」


 依城さんがそういうと、黒い武士はその顔を初めてレイスの方に向けた。


 それは何の意思も感じられない、まるで機械のような動きだった。

 


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