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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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3-1:猫と初めてのお仕事 話ならつけておいたよ、うちの猫が

 飼い猫に追い出されました。

 確かに僕は事情も分からず頭の巡りも良くないけど部屋から追い出すのは酷いと思うの。


「マスター、ちょっと難しい話になりそうだから三十分ぐらい出かけといてくれる?」


 まざまざと自分の立ち位置を思い知らされましたね。ええ、もちろん、何の抗議もせず唯々諾々と従いましたよ!

 だって、クロが僕のために頑張ってくれてるのは明らかだしね。むしろ、飼い猫に苦労をかけるだけのダメ飼い主で申し訳ない。いや、まぁ、猫じゃないけど。


 というわけで、土曜の朝にいきなり放り出されて暇なのでスーパーに来ました。苦労をかけている猫さんのためにコンビニでは売ってない感じのカニカマとか探してみようかなって。

 にしてもマジで何の力にも成れないのは、ちょっとまずい感じがしないでもないものの、カニカマも意外と種類があって、ちょっと困ってたり。


 そして、お部屋に戻れば魔術協会ってとこの調査官?か何かである依城さんとクロの間で話は決着しておりました。うちの飼い猫って超優秀。これひょっとしたら僕ってもう何も考えなくていいんじゃないかな?そんな感じに独りで困惑していると、依城さんがおもむろに説明を始めてくれた。


「クロちゃんと話をした上での推測になるのですが、赤松さんのおかれている状況は、第三者の、具体的に誰かは分かりませんが、魔術師の介入があるのではないかと。

 赤松さんの居場所を調査している際に、『未確認の魔術師によると思われる事件』を2件ほど確認していますので、とりあえず、そちらの調査から始めてみようかと思います。さしあたって赤松さんとクロちゃんにもお手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか?」


 いきなり事情が分からない。どっから出てきた未知の魔術師。

 助けてクロえもん!困った顔を愛しの黒猫に向ける。


「えとね、誰かがわたしたちを誘導して協会の監視網を壊させたんじゃないかって。んで、そいつを放っておくと何か大それた事をしでかしそうだから調査を手伝って、という事なの」


 なるほど。細かい事情は相変わらず分からないけど、要は調査の手伝いをすればいいわけだ。分かりました!

 協力的姿勢のアピール目的で、元気よく断言する。


「僕とクロにお手伝いできる事ならなんでもやらせて頂きます!もちろん、今からの開始でも問題ありませんよ!」


「どうもありがとうございます。えと、お話を聞く限りクロちゃんの探索術式で広範囲の調査が出来るようなので、そちらの方面でお力を貸して頂ければ。事前に検討をつけている場所が何か所かありますので、まずはこの土日で一か所ずつ行ってみようかなと。

 確実とは言えませんけど、そうそう協会が確認出来ていない魔術師なんているはずもないので、さして時間をかけずに目的の人物にたどり着けると思います、たぶん」


 ふむふむ、なるほど。分かった。必要なのはクロだけか。さっきの三十分でずいぶん打ち解けたようで、おじさんは嬉しいです・・・


「僕も付いて行っていいですか?クロだけだと心配ですし、荒事になったら少しは役に立つと思いますので」


 せめて、せめてクロの付き添いだけでも。なんかしてないと、やっぱり弁償とか言われても困るし。


「ええ、もちろんお願いします。私だけでうろつくのも物騒かも知れませんし。まぁ、隠れている魔術師がいきなり特攻してくるとかは流石に無いと思いますけどね」


 クスクスと依城さんは笑っているけど、どうなのかな?クロの魔術があっても、探偵的な人もいないし、ノーヒントで人探しはちょっと難度が高いような?


「SNSで赤松さんを捜している時に見つけたのですが、この辺りで、ここ三週間ほど都市伝説というか怪談になりかけている不審な物の目撃情報がいくつかあります。

 もちろん、その中の『海岸の謎の爪痕』と『夜の公園で爆走する男性』は解決しましたが、この近くには他にも『夢遊病のようにゆらゆら揺れる人影』の目撃情報がいくつかあります。そしてこの『人影』が見つかった周辺では、何件か謎の意識不明者が出ているみたいなんです。

 ちなみに、意識不明の方の情報は地元の警察から貰ったネタなんでSNSの噂だけで動いているわけじゃないですよ」


 なるほど。魔術協会とやらは警察にも顔が効くと。逆らうの駄目、絶対。


「酔っ払いでは?」


 とは言え、疑問は先に聞いとく。『ゆらゆらした人影、意識不明』からのアルコールという単純な連想。


「人影を追いかけていくと、いつの間にか消えている、らしいです。一件、二件ならそれこそ発見した方が酔っていたと判断しましたが、先週から同様の目撃条件が頻発しています。

 恐らく監視網が無くなった今を機と見て、誰かがレイスかあるいは他の何かを町に放しているのではないかと。あくまで角度の低い推測ではありますが。

 ちなみにですけど、ここに来るまで、これも赤松さんがやってると思ってたんですよ。実は今日も最悪戦闘になるかもしれないと思って、物騒な物を色々と持って来てたり」


 無駄になっちゃいましたね、そう言いながら依城さんは屈託のない笑顔を見せた。

 あれだね。対応をミスってたら今頃魔術の炎で火あぶりとか、そんな展開もあったのかな?

 ありがとう、クロ、ありがとう。やっぱあれだ。使い魔は猫に限る。可愛さで相手との距離を詰めるんだ!僕は邪魔にならないように消えとくから!

 実際問題、依城さんがどんな魔術を使えるか知らないけど、何かあっても、こっちは強化魔術一本だから、走って逃げる以外の対策が無いのよね。クロに聞いた限りでは、熟練の魔術師はビームも打てるって話だから逃げられるわけないんよ。にしても意味わかんないよね、ビームって。


「では、私は調査に備えて一旦準備しに帰りますね。また夜になったら迎えに来るのでお家で待っていて下さい」


 そう言って依城さんは無事に帰還してくれた。

 休日の予定なんて筋トレしてソシャゲするぐらいのものなので調査を手伝う事には何の異論も無い。あとは何が出来るか分からないのが問題なのだけど


「何か準備する事ってあるかな?」


 困った時のクロ頼み。


「特に無いわねぇ。もしレイスと戦闘になったら強化魔術が必要になるだろうし運動靴を履いて行った方が良いかも知れないわね」


 用意というか、出かける時の靴のチョイスの問題だから一瞬で終わるね。つまり、準備は必要なし。・・・とりあえずゲームでもするか。最近、忙しくて周回出来てないし。


「ねぇ、マスター、さっきは何を買いに行ってたのー?」


「お昼ごはん。ちょっとよさげなカニカマも買ってきたよ」


「おっ、それはいいわねぇ。ご飯が楽しみだわ」


 結局、クロってカニカマしか食べなくなったけど、これでいいんだろうか?猫の形をした他の何かだから塩分とか栄養価は考えなくても良いのだろうし、なんか魔力も余裕あるみたいだから、別に心配はしなくても・・・そっか、これからは魔力が足りなくなったら依城さんから貰えばいいのか。そしたら前みたいな危ない橋を渡らなくていいし。やっぱ彼女とは仲良くしとかないとダメだな。・・・でも年頃の女性と仲良くするとか自信ないなぁ。なにもかもクロ頼みってわけにもいかないし。とは言え、僕じゃ話題の一つも提供出来ないわけで。依城さんって、なんかゲームとかやってないかな?


 そんな風に由無し事に思いを馳せている内に土曜の朝は過ぎて行った。


 この時はスッカリ忘れてしまっていたのだけど、クロが僕に隠していた話って何だったのだろう?あえて言わなかったって事は、僕に何か気を遣ってるんだろうし、そっとしておけば良いのかな?

 


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