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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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2-3:猫と知らない人 飼い主より猫の方が賢い。

 私、絶賛困惑中です。


 概ねの事情はクロちゃんの説明で分かりました。だけど、どうしても気になる点があります。基本の魔術である強化魔術。初歩の技術とは言え、自分の身体に魔力を通す以上、受け入れる側にも、それなりの準備が必要なはずなんです。それに「使い方の知識をインプットしてもらった」程度で魔術は使えるものではありません。魔術は、そんなに簡単なものでも、安全なものでも無いはずなんです。


 それに仮に魔術の行使は出来るようになったとしても、その魔術を稼働させるための魔力は何処から調達しているのでしょうか?毎日毎日、強化魔術の訓練が出来るほどの魔力が、普通の人である彼にあるはずがないじゃないですか。

 もちろん吸収したレイスの魔力だけでは、何日もやっていける筈がありません。例えるならスマホ用のモバイルバッテリーを生活家電の電源に使うようなものなんですから。一瞬ならともかく継続利用なんて出来るわけがありません。クロちゃんの最低限の生命維持に使うだけなら十分な魔力量でも、実際に強化魔術、しかも戦闘機動のような強度で使ってしまえば数日でガス欠になるはず。


 だから聞いてみたんです。「隠し事があるんじゃないですか?」と。その結果、張本人であるはずの赤松さんは部屋から追い出され、なぜかクロちゃんと向かい合って二人きり。

 なぜマスターが使い魔の指示に従って追い出されているのでしょう?というか、赤松さん弱すぎでは?


「何から説明したものかしらねぇ。たぶん、疑問に思ってるのは魔力源の話とかかしら?」


 クロちゃんが語りだしてくれましたが、実に察しが良くて賢い猫さん。


「ええ、そうですね。他にもありますが、まずはそこから説明をお願いしてもいいですか?」


 クロちゃんは首を傾けながら話を始めた。尻尾が何故かモニョモニョと動いている。


「正直、わたしも全部を分かっているわけじゃないの。むしろ誰にも相談出来なかったから困ってたの。マスターのためにも専門家の意見が聞きたかったから正直助かるわ」


 雲行きが怪しいですね。このままクロちゃんの話を聞くと大変な事に巻き込まれるような予感がします。それにしても、クロちゃん側に秘密があるかと思ってたんですけど、絶賛部屋から追い出され中の赤松さんの方に何かあるとは。


「魔力量についてはね」


 こっちの逡巡を無視して話が進み始めました。さすが猫さん、実にマイペース。


「単純な話でね、なんでか分からないけどマスターから供給されているの。それこそ普通の魔術師みたいに」


「・・・は?ちょっと待って下さい。赤松さんって普通の人ですよね?どういう事です?」


 常識的に考えたら、確かにそれしかないのですけど


「レイスの時に疑似的な魔術回路をマスターの中に成形しようとしたんだけど、なんでか分からないけど、既にあったみたいなのよ、魔術回路。もちろん、魔力も。マスター本人は何の自覚もなかったけど」


「・・・クロちゃんに隠していたとかじゃなくて?」


 実は魔術師だったけど使い魔にも伏せていた、という話なら筋が通るかな?というか、さらりと流したけど疑似的な魔術回路とか、また訳の分からない術式を使いますね、クロちゃんは。どこに需要があるのやら。変な猫だし、変な飼い主です。るいとも、るいとも。


「マスターがわたしに隠してたって事はないと思うの。寝てる間に記憶を確認したけど、魔術とは何の関係もない普通の人だったもの」


 私の思考が脱線している間も、クロちゃんは順調に会話を進めてくれる。

 ・・・飼い主より猫の方が賢い予感。


 まぁ、人の記憶を覗くような難解な魔術が使えるって事は、クロちゃんはかなり高度な知能を持たされて設計されているのでしょうし、赤松さんより賢くても全然不思議ではないですけど。


「なるほど。いまいち私には分からないですけど、何らかの手段で魔術的に手を入れられたか、あるいは魔術師だった頃の記憶を消されてるかとか、そんな感じですかね?」


 整理がてら推論を口に出してみたものの、そんな事があり得るのでしょうか?自分で言った事ですけど、あんまり現実味が無いような気がします。

 クロちゃんは心なしか不安そうな顔をしながら話を続けた。


「そもそもわたしの存在が不自然なのよ。考えれば考えほど不自然。今となってはマスターが偶然わたしを拾ったって事にも、誰かの作為があった気がしてならないの。たまたま『わたしを拾った人が自覚の無い魔術師だった』そんな偶然あり得ないもの。

 たぶんマスターは何かトラブルに巻き込まれた魔術師か、あるいは何処かの実験体とかだと思うの。ひょっとしたら、わたしを作った人が何かを計画しているのかも知れないけど。

 わたしはなんとかマスターの力になりたいと思っていて、だから魔術の訓練をしてもらって、最低限なんとか自衛出来るようにはなってもらったけど。これ以上どうしたら良いか分からなくて」


 クロちゃんの不安の原因は分かりました。

 自分のマスターが何かの策謀に巻き込まれているかも知れない、しかも自分もその一翼を担っているのかも知れない、そう考えているわけですよね。


 マスターのために何かをしたいが、自分の力不足を嘆いていると。

 なんて良い猫なのでしょう!こんな良い子の力に成れずして、何のための力でしょうか?!何のための社会人でしょうか?!


「分かりました!私が力になりましょう!あなたとあなたのマスターの不安は私がどうにかしてあげます!!」


 思い描いていた「初めての敵」には出会えなかったけど、魔術師として誰かの役に立てる機会を得る事が出来そうです。


 それはそれで、とても喜ばしい事・・・・たぶん。

 


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