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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部1章:猫と見習い

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10/26

1-1:猫と日常 金はなくとも楽しい我が家

 スマホのアラームで目が覚める。バイブレーションと軽快な音楽の二段構え。そろそろ音楽の方は普通の着信音みたいなのに変えたいけど、いまいち設定方法が分からない。起きてしばらくしたら「変えたい」と思ってた事も忘れちゃうし。


「おはよう」


 そんな事を思いながらアラームを止め、同居人?の自称使い魔のクロに声をかける。その姿はどう見ても普通の黒猫なので、ペット?みたいな認識を持ってしまいがちだけど・・・まぁ、それで問題無いかなと思い始めている。たぶん、本人に言ったら怒るだろうけど。

 クロは寝ぼけたまま尻尾をまっすぐ上に伸ばし、両前足を体の前方に突き出して伸びをしていた。小刻みに左右に揺れ動く尻尾が実に愛らしい。


「おはよう、マスター・・・」


 伸びを終えたクロが挨拶を返してくれる。朝はいつもよりテンション低め。ちなみに、クロは見た目は猫そのものだけど話をする事も出来る、使い魔だから。・・・実は僕にもよく分からないけど、そういうものらしい。


 そして、顔を洗って朝食の時間。その間クロはぼんやりと窓際に座っている事が多い。基本的に何を考えているかは分からない。でも、その後ろ姿は実に可愛いらしい。


 僕の朝食はいつも同じ。オールブランと各種サプリメントとプロテイン。とりあえず、必要な栄養素だけ採れてりゃいいやって発想。一人暮らしの男なんて、こんなもんでしょ?で、クロは水をちょっと飲むだけ。もちろん虐待じゃないよ?元々、使い魔ってのは魔力さえ十分にあれば飲み食いは不要なものらしい。つまり、食事は趣味なので『わざわざ眠たい中、我慢してまで行うアクティビティじゃないの』って事らしい(本人談)。


 そして朝食が終わったら、サクッと着替えて職場へ出勤する時間。「バス→電車→徒歩」で30分強のところに僕の職場はある。家から近くてとても良い。


「んじゃ、クロ行くよ」


 まだぼんやりしているクロに呼びかける。


「・・・あいよぅ」


 寝ぼけた返事とともにクロが頭の上に飛び乗ってくる。頭の上の愛猫は霊体化していて半透明で重さゼロ。なんかよく分らない方法で僕の動きに引っ付いてくるのでズリ落ちる心配もない。そんな風に妙に便利な『僕にだけ見える猫』を頭にのせて出勤スタート。


 ちなみに、クロは初日こそ、あちこち見渡して喜んでいたものの、2日目からは寝っぱなし。面白い物なんて何も無いからね?仕方ないよね?バスから田んぼが見えるのが綺麗で少し楽しいぐらいだからね?・・・楽しいよ?

 まぁ、僕としては、頭の上に猫が乗っているというだけで、ちょっと楽しい。きっと周りの人からも見えたら、みんなハッピーになれるよ?みたいな?


 そして、仕事中だけど、工場のラインに立って作業をしている間、クロは頭の上で寝っぱなしなので特に語る事も無い。別に誰と話をするわけでもなく、特に変わった事があるわけでもなく、淡々と作業をして終了である。

 最近はIHクッキングヒーターとやらを組み立てているけど、正直自分には一生縁が無さそうな機械であまり興味も無い。値段が高いのもあるけど、そもそも料理なんてしないから。

 他に語るべきポイントと言えば・・・昼ご飯の時にちょっとクロが起きてきて


「また唐揚げ」


 僕の食事を確認して、そうボソリと呟いた事ぐらいだろうか?美味しいよ、唐揚げ。栄養も豊富だし。

 で、仕事が終わったら、今まではまっすぐ帰って家で筋トレとスマホゲーに勤しむぐらいしかやる事が無かったけど、クロが来てから新しいルーチンが増えた。もちろんクロと楽しく遊ぶ、のではなく、魔術師(見習い)としての特訓である。


 仕事帰りの夜の公園。そこで、やっと起きてきたクロがテンション高めで特訓の開始を告げる。


「さぁ、今日もはりきって頑張りましょうかぁ!!」


 誰もいない公園なのでクロには姿を現した上で、普通に人語でしゃべってもらっている。地方だと夜の公園なんか酔っ払いぐらいしか来ないから「警戒するのも馬鹿らしいかな」って判断。たぶん、大丈夫でしょ?


「早速今日はもう一段ギアをあげてみましょうか?逃げ足は速ければ速いほど役に立つものね!じゃあ、やり方に疑問があったら聞いてね!!なんでもわたしが答えちゃうから!!!」


「あー、たぶん大丈夫。前に入れてもらった知識のおかげでだいたい出来る・・・と思う」


 何の特訓をしているかというと、ひたすらに強化魔術、自分の体を対象にした強化魔術の実践をしていたりする。熟練になれば『物』の強化も出来るそうだけど、まだちょっとそこまでは至れていない。

「マスターにはまだ早い!まずは何かトラブルに巻き込まれた時に生き残る事を考えなきゃ!

 必要なのは!そう!逃げ足なのよ!!」というクロの熱弁もあり、まずは体を強化した状態で自由に動けるようになる事を目標に、この三週間ほど訓練に勤しんでいた。正直なところ、魔術というよりスポーツの訓練をしてるようにしか思えないけど、続けているうちに予想外な事も分かってきた。僕には想像以上に適正があったのだ。


 いつも通り、体に魔力が満ちて行く事をイメージ。背骨から指先に向け何かが侵食していく様を想像する。その浸食が広がり切ったら、それで準備は完了。もちろん今日も違和感なく当たり前のように術式の起動は成功した。


 まずは定番、グランドのトラックを全力で周回する。イメージ通り、普通に走る時と同じような感覚で8周、3キロ分程を走破する。

 タイムを計っているわけでないので、自分でも正確には分からないけど、数週間前に鬼火擬きの前で使用した時よりも加速度が上がっているのは確実。それこそ普通の人の短距離走より速いペースを出せているはず。しかも、息が切れるような事は全くない。恐らく今の状態でスポーツ選手になれば、誰も僕の相手にならないはず。


 うん。魔術マジスゲェ。なんで一般化してないのかが本当に分からん。


 走った後は、跳躍(その辺りの遊具を一っ飛び)、懸垂(負荷が足らないから片手、重りを買うだけの金銭的余裕は無い。高いのよ、あれ)、シャトルラン等、適当なトレーニングメニューを繰り返し、意識せずに強化魔術をコントロール出来るように感覚を馴染ませていく。というか、やっている本人からしたら、普通に筋トレをしてる気分だったり。ホント意味不明なところで妙な才能を発揮したよね。

 そんなわけで、魔術が上達しているかどうかは分からないけど、体を鍛えるのは趣味なので、そのまま一時間程度トレーニングを続けた。クロはこちらの様子を観察しているけど、特に口を出してくる事はない。最初のうちは色々と指導が入ったものだが、今となっては問題無いという事なのだろう。

 一応、寝てないかだけは時々確認しておこう。一人で頑張ってると寂しいからね?

 そんなわけでチラチラとクロの様子を伺いながら黙々とトレーニングを続けた。ちゃんと見てくれているようで、いつ見ても目線が合って嬉しかった。うちの猫って最高なのでは?


 そして、ひとしきりトレーニングを終え、汗を拭いていると、


「マスターって、変に強化魔術に適性があるみたい。もう使いこなしてる感じ?」


 なんか部活の先輩みたいな口調だね?


「うん、特に意識せずに使えるよ。前の鬼火擬きの時みたいに振り回される事はもう無いと思う。そもそも、あんな目にあう事自体あんまないとは思うけどさ」


「それもそうねー。でも、それにしては熱心に特訓してくれてるけど、なんで?」


「いや、実はさぁ、強化魔術の訓練すると凄い筋トレになるみたいで」


 そう、実は普通に筋トレするより凄く効率が良いのである。異常な高負荷を異常な速度と回数でこなせるから!しかも傷んだ筋肉やら腱は治癒魔術であっという間に元通り。凄いぜ!魔術!ノウハウを転売出来たら大金持ちだね!


「あぁ、そういう理由・・・流石にそんな理由で魔術を使う人って・・・マスターぐらいでしょうねぇ」


 クロは何故か呆れ顔。


「まぁ、ほら、その結果として使いこなせるようになったみたいだし。ほれ、さっさと帰ってサラダチキンでも食べようよ」


「ねぇ、たまには他の物も食べましょうよ。もうアレばっかりで飽きたわよ」


「えぇ、わりと旨いじゃん?・・・しゃーなしなぁ、コンビニに寄って何か探してみようか?食べてみたいものとかある?」


 こんな感じにクロと魔術という新しい要素が混じった生活は、それなりに楽しく充実したものだった。金はなくとも楽しい我が家を地で行っているような生活ではあったけど、僕もクロも日々の楽しさのせいで大いに油断していた。


 適当に動き過ぎていた事を自覚させられたのは、三日後の土曜の朝だった。二人とも忘れてたけど、浜辺で派手に他人の物ぶっ壊してたわけでさ。そりゃ、怒られも発生しますよねって。

 


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