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「パパ!」
少女が父親との再会に哀しんでいた。
地上の任務で死んだらしい。
遺体なんてないから、少女が再会したのはペンダントだが。
パイロットなんてやるもんじゃない。
命を天秤にかけて、何かを得るのは間違っている。
私が言えた事ではないけれど。
茫然としていた少女を、私は慰める事ができなかった。
私はというと『あぁ、死んだか』と思った。
私は嘘を口にできない。
嘘は、私を縛る。
だから、事実しか口にできなかった。
思ってもいない事なんて口にできない。
私が観測した内容から、私の中にあるものだけを出力できる。
私はロボットと遜色ない所か、ロボットにすら劣る。
「ねぇ、お姉ちゃん。パパはどうして死んじゃったの?」
『死んだから、死んだ。』のだ。
嫌われるだろうな。
でも、嫌われても、私は少女を見捨てられないのだろう。
内心、どうでもいいとさえ思っている。
切り捨てるのは、いつでもできる。
『下手クソだったから、死んだ。』
『運が悪かったから、死んだ。』
『傭兵だから。殺しても、死んでも、仕方がなかっt。』
「運が、なかったん――だよ。」
運って何さ。
少女は納得しないだろう。
泣き始めた。
人は死ぬべき時に死ぬ。
個人の内面で、人は完結している。
他者から与えられるものは、他者との関係だけなのだ。
この少女には、理解できないだろう。
納得と理解は、一つだ。
納得しなくても、理解して、理性的な行動を取る必要がある。
理解した結果、納得できる部分が拡充される。
納得できない部分があるのなら、やり方を変えるしかない。
まだ、私の最適化が足りていないみたいだ。
運とは、運命だ。
運命に従え。
「ラナちゃん。今までの、――船団にいる?」
「一人は嫌」
残酷だ。
このような択を迫る事は、間違っている。
残酷ならば、自身の手で、選んだ方が良いに決まっている。
私もそうしてきた。
この日、傭兵の私に、一人の妹ができた。
日は遡り。
「オーミットさん、飲みすぎですよ」
目の前にいるのが誰か分からないのだろう。
前後不覚と言った具合で、話続けている。
「遅咲きだぁ、なんて馬鹿にされたけどね!娘の治療費がどうしても必要なんだよ!妻にも先立たれるし、私しかいないんだ!今は体調が良いからいいけど、大変だったんだからぁ。任務ばっかりで、手が掛けられなかった時期もあって。本当今の健康な状態が信じられない位さ!そこでだ!同年代の友達が全然いないのもあったから、マキナちゃんにお姉さんとして色々と――――」
「レイン先輩、面倒なので先帰ります。」
「ちょっ!この状態を介護して送迎はハードだが!」
「マキナちゃん、そういうとこだぞ!もうちょっと先輩の面子を立ててくれないと」
「してあげたい先輩と、そうでない先輩は区別しているので」
「俺の面子を保つ為にも、もう少し残ってくれない?」
「先輩は何にお金使ってるんです?財布が欲しいだけですよね?」
「うちのラナも、こんなに捻くれたりするのは見たくないなー」
「酔っ払いが。父親の情けない所なんて見たくないでしょう」
「マキナ、口悪いな」
「先輩も酔っているんですか?お開きにしましょうか?あん?」
「おい!ケインも何か言ってやれ!」
「あ」
「喧嘩っ早いのに、飲み会だと何もできなくなるの面白いですね」