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迎撃任務からの帰艦。
吐き気が治まる気配がなかった。
「医務室で診てもらわないと……」
機体を下りると、彼がやってきた。
「『Ex-マグア』のパイロット。助かった」
機嫌が優れない今、この無能共に付き合っている時間はない。
「体調が優れないのか?医務室に行こうか」
「別に、そんなんじゃ……」
重力に縛られない空間で移動するのに、そこまで労力はかからない。
「俺は、レインという。君はマキナだったか。凄い操作技術だったな」
「――――いつまで付いてくるの?」
「そう邪険にしないでくれ」
結局私は、付き添われる形で医務室に入った。
「おや、とても珍しい光景のように見えるけれど」
「ほっといて。胃が縮み上がって吐き気が止まらないの」
「ベッドにでも、座って待っていてくれ」
「仲が良いようだけれど、マキナは常連なのか?」
「死んでいった無能とは違うから」
レインは怒りを覚えただろうか。
「あの機体に乗る為だけに、どれだけの時間を訓練に費やしたか考えられる?」
「適性数値を出して、検査を入念にして、あの速度に慣れるまで、6年掛かったわ」
「6年か……」
「いや、6年であの技術なら、文句は言えないな」
『マキナは才能あるよ』なんて言うもんだから。
「はい、薬。付き添いの彼は具合が悪い所でもあるのかい?」
「いえ、自分はこれで失礼します。マキナ、自分は暫く滞在しているから食事にでも誘ってくれ」
「誘わないわよ」
「彼女、部屋で取るんだよ」
『じゃあ、部屋にでも誘ってくれ。それじゃ』とレインは医務室から姿を消した。
「彼のあれは、冗談か社交辞令だよ」
「――――。」
私の何が才能なの?
あの訓練を才能なんて言葉で片付けていいの?
この体調不良も、才能の限界なの?
私の才能がこの程度なんて思われたくない。
戦って証明しなくちゃ。
次の任務は。
戦え。