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02

静謐な小部屋で合図を待つ。


モニター上では常に識別信号が点滅している。




ザッ――――。


「管制室より、軌道周回上に敵影を検知。本作戦は迎撃任務になります」


作戦時間は――――。


【出撃するor出撃しない】


「・・・」




『マキナ、聞いているか?』


「……なに?」




「今回の作戦――」

「出たくないって、言ったらどうする?」


「それは――」


発艦許可が下りて、ハッチが開く。


「私、強いから」

「————あぁ、知っている」


この男は、私の何を知っているのだろう。

今回の仕事を蹴った理由はあるのだろうか。


重力が掛かって、思わず身構えた。


AIを搭載した汎用機と心中する未来をしっている。

味方である筈の艦船から、撃墜される未来を知っている。


トラウマで胃が縮む。

襲われる吐き気に、ヘルメットを外した。


「最高ッに、気持ち悪い。こんな馬鹿げた仕事、さっさと終わらせてやる」


後ろに続く部隊を引き連れて、敵機の周回軌道を先回りするように移動する。


【撃つor撃たない】


「確実に仕留める」


高出力レーザーで、誘爆を狙わない精密狙撃。


索敵外からの狙撃には反応できず、撃墜に成功した。

続いて、鳴り響くアラートにマキナとその部隊は、気を引き締めた。


無数の敵機信号。味方残数が減った。

デコイだ。


「デコイ!?」


増える信号とレーザーによる射撃は、回避するだけで方向感覚がなくなりそうだった。しかし、デコイがモニター上で拡散する先には何らかの軌道が存在していた。


「撃ち抜くっ!」


「馬鹿!味方に照準を合わせて、どうするつもりだ!」

知るか、バカ。

「精々、死なないように気を付けろ!」


何かを追従するモニター。

雑音が煩く、通信を切った。

中る奴が悪い。


近接武装は、ノーマルソードとプラズマソードを使い分けているらしい。敵機は、二刀による一振りで私の射撃を相殺し、味方機を切り裂いた。


積載過多に思える機体は、私の機体には遠く及ばない速度だ。それでも、味方機と比較すると、その速度自体はかなりのものだった。


「(汎用機なだけある……)」


味方機はデコイに攪乱されて、一方的に射撃を回避せざるを得ない。


武装もエネルギー残量も私に分がある。

勝ち目は、専用機の強みを押し付ける事。

速度で密着して、近接格闘で圧し潰す。


消耗戦は負ける確信がある。


ブースターユニットへエネルギー供給を回す。

温度が、閾値の上限ギリギリまで上昇する。


残り少ない味方機を、視界の端で捉えた。



不思議な感覚だった。

何をどうすればいいのか理解できる、全能感。

身体は、座席に張り付いて重いが、視界の映像がスローになっている事に気付いた。

私の知覚範囲が引き延ばされている事態を把握した。

呼吸が足りない。思考量に対して酸素が足りない。息継ぎをしたい。


身体にかかる重力だけが、私にとって現実味を帯びている。

何もかもが重い。


敵機は目前。

接近した私にアラートを出したような、そんな回避運動。

武装をパージする。

この速度感。間に合う。倒せる。


「勝った――――」


プラズマソードの接触で減速した機体は、すれ違うように真っ二つに別れた。


全能感が一気に抜けて、胃が縮んだ。



「うっ――――胃薬がないと乗れそうにないなァ……」


細かい呼吸で吐き気を鎮めるように努める。



幸せであれば。

私は、この全能感を知る為にパイロットなんて職業を選んでいるのかもしれない――――。

それは勘違いだよ。

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