あーかい部! 35話 妹
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
きはだが部室に入ると、白ちゃんがパソコンのキーボードカタカタとを鳴らしていた。
「あれぇ?白ちゃんが働いてる。」
「私だって社会人なのよ?これでも。……あら?ひいろちゃんとあさぎちゃんは一緒じゃないのね。」
「今日は部活ない日だよぉ?」
「じゃあきはだちゃんはなんでここに?」
「保健室にいなかったから、ここかなぁって。」
「私に会いに来てくれたの?」
「まぁそんなとこ。」
「そう……。」
きはだがわざわざ自分に会いに来てくれたことに頬を緩めた白ちゃんは、そっとパソコンを閉じてきはだに向き直った。
「お仕事しながらでいいのに……。」
「前にも言ったでしょ?お盛んな子たちの恋愛相談に乗りながらじゃあ仕事にならないって。」
「ごめん、避難場所に押しかけるようなことしちゃって……。」
「いいのいいの!それで?相手は誰なのかしら……って聞くのは野暮か。」
「恋愛相談じゃないよぉ。」
「まったまたぁ〜!隠してたら相談にならないでしょう。で?相手はあさぎちゃん?ひいろちゃん?それともわ
「最後だけはないかなぁ。」
「せめて言わせろぉ!?」
「お盛んですなぁ。」
「私じゃないわよ!?……でも、いつもの調子が戻ったわね♪」
「あ。」
「じゃあ、本題に入りましょうか。」
「……やっぱり白ちゃんって、養護教諭だよねぇ。生徒に人気なのもわかるなぁ。」
「まだはぐらか
「妹……。」
きはだがポツリと呟いた。
「……妹?」
「白ちゃんには、モーラさんっていう妹がいるでしょ?」
「ええ♪悪い大人の見本市みたいな子だけどね。……あ、もしかして妹ちゃん、グレちゃった……?」
「グレる妹、か……。見てみたかったな。」
「……あ、もしかしてきはだちゃん、姉妹いなかった?」
「…………、うん。そんなお年頃の妹はいないよ。」
「そ、そうよね。きはだちゃんから妹の話なんて聞いたことなかったし……。」
「白ちゃんは、モーラさんと仲良くやってる?」
「それは難しい質問ね……。」
「ごめん……。」
「いいのいいの!再会してからはよく煽られるし、口喧嘩もするけど……やっぱりお姉ちゃんとしては、元気な姿を見られればそれだけで嬉しいかな?……なんてね///」
「……そっか。再会するまでは、モーラさんのこと死んだと思ってたんだもんね。」
「断定はしなかったけど……今思うと胸におっきな棘が刺さったような…………辛かったな。『頼りがないのは元気の証』って自分に言い聞かせてたっけ。」
「『頼りがないのは元気の証』……そうだね。本当に元気だったんだもんね。」
「元気どころか、海の向こうで戸籍まで新しく作って、別人になって帰って来るなんて……ちょっとやんちゃが過ぎるわよね♪」
「妹なんてやんちゃなくらいでいいんじゃない?……知らないけど。」
白ちゃんはきはだの声が、微かにだが段々と怒気のようなものが籠った、すわったものになっていることに気づいた。
「あれ?きはだちゃん、ちょっと怒ってる……?」
「白ちゃんの惚気で胃もたれしただけだよぉ。」
「悪かったわね……。」
「……でもありがと。ちょっとだけ救われた。」
「どういたしまして♪……ねえきはだちゃん、これが私に会いに来た理由なの?」
「うん。ひいろちゃんもあさぎちゃんも1人っ子だからねぇ。」
「そういえばそうね……。あーかい部で姉妹がいるの私だけか。」
「……。」
「……ねえ、やっぱり何かあった?」
「…………、白ちゃんってわたしたちによく構ってくれるよねぇ?」
「え、ええ。そりゃ顧問だもの。」
「……もしかしてそういう性癖
「え"……。」
「白ちゃん?」
「あ、いやぁ!?そんなことはない!ないわよっ!うん。」
「安心していいのぉ?」
「い、いいに決まってるじゃない!?」
「さっき新婚さんみたいなノリで自分を恋愛対象の候補に入れて来た癖にぃ?」
「あれは未遂でしょ!?」
「未遂ってことはやる気満々じゃん……。1番お盛んなの白ちゃんだったんだねぇ。」
「誰がお盛んよ!?」
「こりゃあ1人で部室に入るのはやめた方が良さそうだぁ。」
「大丈夫よ、きはだちゃんは対象外だから。」
「きはだちゃん……『は』?」
「ヤベッ」
「こいつぁポリスメンせざるを得ない。」
きはだは慣れた手つきでスマホの画面をタップして……
「ポリスメンはいやぁぁぁあ!!」
きはだに縋りつこうとした白ちゃんの健闘虚しく、きはだのスマホは無慈悲なコール音を奏でた。
「そんな……嫌……。」
膝から床に崩れる白ちゃんを他所目にきはだは通話を始めた。
「もしもし警察の方ですか?」
「……はい。池図女学院です。」
「白久澄河養護教諭の暴行未遂で……はい。」
「……代わります。」
きはだから渡されたスマホを、白ちゃんは震える手で受け取った
「ああああ、あの……け
『もしもしポリスメンです。』
「あの、ここ、これは暴行未遂と言いますか、ほんの冗談
『お盛んなのはいいけど、冗談は顔だけにしてよねすみ姉?』
「はい、すみま…………すみ……すみ姉?」
『ブフッwww本官の声をご存知でない!?』
電話の向こうのポリスメンが突然吹き出し、白ちゃんは目をパチクリとさせて固まっていた。
『やだなぁ〜。こちら愛しの妹、モーラ・コロル巡査でありますよおwww』
「…………。」
『あれ?被疑者?おーい
「モーラぁぁぁあ!!!」
まんまときはだとモーラに嵌められた白ちゃんであった。
あーかい部!(4)
きはだ:部活なかったけど投稿っ!
あさぎ:あれ?
ひいろ:何か良いことでもあったのか
きはだ:2人には注意喚起も兼ねてねぇ
あさぎ:よくわかんないけど読んでくるかぁ
ひいろ:どれどれ
ひいろ:姉妹ともどもモテるなんてあさぎも大変だな
あさぎ:ひいろだって対象範囲じゃない?
ひいろ:そ、そんなことはないぞ!?なあきはだ
ひいろ:きはだはどこまで聞いたんだ?
きはだ:必死過ぎて草ァ!
白ちゃん:あんまり人の性癖にとやかく言わないの!
きはだ:出たな第四次性徴
白ちゃん:性徴はあっても三次までよ……
あさぎ:モーラさんと仲良くやってるようで何よりです
白ちゃん:仲良く、ねぇ……
きはだ:うぅ、あさぎちゃんもひいろちゃんも白ちゃんにナカヨクされちゃうんだ……
ひいろ:おいきはだいい加減に
きはだ:おっと、言葉遣いには気をつけるんだよぉ?ひいろちゃん
ひいろ:気をつけてこうなってるんだよ
あさぎ:何それ初耳
白ちゃん:前はもっと酷かったのよね!?ね、ひいろちゃん
ひいろ:ああ、これでもマシになった方なんだぞ?
きはだ:怪しいなぁ
あさぎ:白ちゃん先生は昔のひいろを知ってるんですか?
ひいろ:ちょっとした縁で、な?
白ちゃん:そうそう!前は『死ねえ!』とか『ク○ババア!』とか酷かったんだから
あさぎ:反抗期じゃん
ひいろ:耳が痛いな
きはだ:白ちゃんのターゲットはひいろちゃん……っと。メモメモ
白ちゃん:やめろやめろ
ひいろ:やめろぉ!