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最悪な1日


「おい、お前!名前は何だ!?」

朝礼の時間が終わり、ニノから発せられたラーニーへの第一声はそれだった。

ラーニーの持つただでさえ悪かったニノへの印象はさらに、悪いものへとなる。

そして、感情の起伏に乏しい彼には珍しく熱を持った言い合いが繰り広げられた。

「おい、ニノだか何だか知らないが、初めて会った人に対してその言い方はないだろ」

「知らん!ニノはお前の名前が知りたいんだ!!さっさと教えろ!!!」

「だから、その言い方を直せ。そしたら、教えてやってもいい」

「うるさい!!教えろと言ってるだろ!!」

「うるさいのはお前の方だろ。そんなでかい声出しやがって。そもそも何で俺の名前が知りたいんだよ!」

「そんなの友達になりたい人には、その様にするものなんだろ!?母ちゃんが言ってたぞ!!」


ニノの育ちは良いとは言えないものだった。父は酒に溺れて時に暴力を振るい、母はそんな家庭でも必須に子供達を育てようと夜の街で働き生計を立てていた。

そんなニノには教養などなく、唯一の学びの場面といば多忙な仕事で関わりの少ない母からの空いていた時間にだけ聞けるお話だった。



「!?!?!?」

そんな背景も知らないラーニーには、ニノの発言は理解を超えた物であり、その内容を幼い自身の中に落とし込むのに少しの時間を要した。

要するに、2人の間に間が流れたのである。


「…おまえ、お母さんから何を聞いたんだ…?」

「友達になりたければまず名前からだと!!だから聞いている!ニノは初めに前で名前を言ったのだ!次はお前だ!名前を教えろ!」


ラーニーは理由までは理解できていないが、ニノが普通とは異なる思考の持ち主であり、自分自身が何を言っても聞きやしない、そんなことを悟り始めていた。

(…もうめんどくせぇ…。)

「俺はラーニーだ。」

「そうか、ラーニーというのか!!!名前が知れて嬉しいぞ!!!」

ラーニーはその一瞬にニノの穏やかな表情を見た。

(うるさいだけではないのか…?)


「それでお前!ニノに勉強を教えろ!!!」


はぁぁぁぁあ!?



それからというもの、ニノへの反応に一生懸命になっていたラーニーは教師が教室内へと入って来ていることに気づかずニノとの言い合いを続けた。その後もその教師の3回にわたる、ラーニーとニノへの注意をしたが、その2人の耳に入ることはなかった。そして、最後に教師によるこれまでに聞いたことのない声量での注意によってラーニーを我に帰らせた。

しかし、その時にはもう遅く教師は酷く怖い形相でその2人の横にたっており、言葉を残して教団へと戻っていった。


「休み時間、2人で私のところへ来る様に」




—————————————————————




「はぁ…。」

ラーニーはルイと合流し、カフェテリアで昼食をとっていた。


「ため息なんかついてどうしたのですか、ラーニー」

「それがさ…」


ラーニーはクラスで起こったことをルイに話した。


「ふふ。ラーニーが初めて会う方相手に、そんなにむきになるなんて珍しいですね。そんな彼を見てみたいです」

「おい笑いごとじゃないぞ!!こっちはこれから説教確定なんだぞ」

「そうですね。でもたまにはその様な経験も良いではありませんか。あとで感想を聞かせてください」

「おい!人ごとな!」

「ところで、ラーニーその話だと休み時間中に先生のところに行かなくてはいけないのではありませんか。」

「あぁ、そうなんだ。別に細かな時間は決まってないが、早い方が良いよな。面倒なことはとっとと終わらせたいし。

くそ…。でもあいつとは一緒に行きたくねー」


「そこは諦めましょう。早く終わらせないと、面倒ごとはついて周りますよ」

「……。」


「ラーニー!!おーい!!ラーニーはどこだー!!」


「噂をすれば、彼ではありませんか」

ニノは大きな声でラーニーの名前を呼び、彼を探し歩いていた。

「まじか、おれあいつとこれから先生のところに行かないといけないのかよ。くそ悪目立ちじゃないか」

「ラーニー、口が悪くなってますよ」

「そんな、口も悪くなるよ。あー嫌だー!」


「おお!!!いた!!!」

気づけばニノはそこに立っていた。

「行くぞラーニー!丸メガネのところへ!」

「ぶっっ…。丸メガネて…。」

ルイはラーニーの前で笑いを堪えようとしつつも吹き出していた。

「お前、人探しにももっと目立たずできる方法あるだろ!?」

「そうか!?名前を呼んで歩けばすぐに見つかると思っただけだぞ!?」

「それはそうかもしれないけどさ!!もっと!…」

「ラーニー、それくらいにして早く先生のところへ行ったらどうですか?このまま、ここで話を続けてもさらに人の視線が集まるだけですよ」

「…くそ…。」

「いってらっしゃい。また帰りは校門近くで待っていますね」

「ああ、わかった」


それから、ラーニーとニノは2人で先生のところへ向かった。


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