第9話 夕食にて
俺とレインは白竜のテレーゼのお蔭で、何とかサイダールに戻る事が出来た。今は俺が作った夕食を摂りながら、レインと黒竜王について話をしている。ちなみに家での家事全般は、俺がやっているのだ。前世での独り暮らしの経験が、こんな所で活かされるとは。
「ねえ、お兄ちゃんは、テレーゼさんが言っていた黒竜王の話をどう思う?」
「そうだな……。四千年前という途方もない昔の出来事だが、テレーゼが嘘を言ってるようには思えない。だが……。今まで、そんな話は訊いた事がない」
確かに、そうだ。四千年前に世界の半分が消滅した程の災厄。それを黒竜王が一人で起こした。いくら四千年前とはいえ、何の情報も流されていないのは変じゃなだろうか?
「もしかすると、この情報は国か、あるいは何らかの組織かは分からないが、秘匿されてきたのかもしれない」
なるほど、その可能性は大いにあるな。
「だけど、何のために?」
「それは、俺にも分からない」
取り敢えず、四千年前の災厄と封印されている黒竜王の情報が少なすぎる。今、考えたら、もう少し詳しくテレーゼに訊いておくべきだったな。
「この件に関しては、俺の方で調べておくから、フェリスは何もしなくていいからな」
「私も、調べるのを手伝うよ」
ドン! と、レインがテーブルを強く叩いた。
「絶対に駄目だ! 黒竜王の事が秘匿され続けていたのだとしたら、必ずその裏には大きな力が働いているはずだ! 下手な事をすれば、殺される可能性だってある!」
「そう……だよね」
「だから、フェリスは決して、この件には関わらないでくれ」
「うん、分かった」
「突然、怒鳴って悪かったな」
「全然、平気だよ。お兄ちゃんは、いつも私の事を第一に考えてくれてるの知ってるから」
「そうか」
「うん」
自分でも黒竜王の事は調べてみたいが、レインの言うことも一理あるな。危険な事は、避けておくとするか。