第55話 黒ずくめの人物の正体
俺達は、順調に階下へと降りていった。アマリアさんが言っていたように、このダンジョンの魔物は強い。とはいえ、死の森を経験している俺にとっては、まだこっちの方がマシだ。このダンジョンの魔物の力は、見ているだけでも凄いのが分かる。だが、もっと凄いのが、そんな魔物を軽く蹴散らしているレッドとアマリアさんだ。
俺達は、一○階層ごとに休憩を兼ねて調査していく。三○階層まで到達すると、流石に二人の顔には疲れが見えていた。俺も二人の役に立てれば良かったのだが、とても二人のようには戦えない。
三○階層にある部屋の観音扉をレッドが開ける。一○階層ごとにある部屋の中は全て同じ造りで、直径が一○○メートル程のドーム状の形となっている。
「みんな、止まれ!」
部屋の中へ入るなり、突然レッドが叫ぶ。部屋の奥を見てみると、フードを深く被った黒ずくめの人物が一人立っていた。
「おい! ここで、何をしてる!?」
レッドが、黒ずくめの人物に訊ねる。
「何や、アマリアはんも来てしもうたんか」
「その話し方……あなた、もしかして?」
「あらら、この喋り方はバレバレやったなあ」
黒ずくめの人物が、フードを取った。デガロ監獄の副監獄長、ユート・スコルの素顔が露あらわになる。
「ユート。まさか、あなたが黒ずくめの人物だったの?」
「そうや。わいが、ゼヒドをここから逃がしたんや。黒竜石を奴に渡したんも、わいやねん」
「何故、そんな事をした! お前のせいでフェリスちゃんは、大怪我したんだぞ!」
確かにユートさんが、ゼヒドを脱獄させなければ、俺は痛い思いをしなくて済んだはずだ。
「そうなんか? それは、すまへんかったなあ。けどな、わいも上からの命令でな。仕方なかったんやで」
「上からの命令だと!? ザース共和国からの命令なのか!?」
「ちゃうちゃう。ザース共和国は、何の関係もあらへん」
「なら、お前は一体! どこから命令されたんだ!」
「そやな。ここで自己紹介でも、しておこか」
ザース共和国軍の所属以外に、別の何かがあるというのか?




