第39話 三人の密談
朝食の支度を終えた頃には、すっかり日も昇っていた。
テーブルには湯気の立つ料理が並び、俺たちは三人で食卓を囲んでいる。
いつも通り、俺とレインは向かい合って座る。俺の右隣には、リリーナがちょこんと腰掛けていた。
箸の音だけが、静かに響く。
誰も、口を開かない。
ただ、目の前の料理を黙々と口へ運ぶだけ。
……何だ、この空気。
重い。
やけに、重い。
誰か……何か喋ってくれ……!
内心で必死に叫ぶ。
すると――
「あ、あの~……」
おずおずと、リリーナが口を開いた。
来た!
救世主!
そう思ったのも束の間――
「レインさんとフェリスって……その……そういう関係、なんですか?」
いきなり直球!?
思わず箸が止まる。
空気が、さらに凍りついた気がした。
「え、ええと……それはね、リリーナ……」
言葉に詰まる。
何て説明すればいいんだよこれ!?
頭の中がぐるぐるする。
その時――
「ゴホン」
レインが軽く咳払いをした。
「リリーナちゃん」
落ち着いた声で続ける。
「俺とフェリスは――付き合っている」
え!?
思考が止まる。
初耳なんですけど!?
だが、そんな俺の動揺などお構いなしに――
「やっぱり!」
リリーナの顔がぱっと明るくなる。
「そうだと思ってました!」
満面の笑み。
「兄妹にしては仲が良すぎるなあって、ずっと思ってたんです!」
「はは……」
レインが苦笑する。
「実は、そうなんだ。今まで内緒にしていてすまなかったな」
「全然いいですよ!」
リリーナは気にした様子もなく頷いた。
「私、薄々気づいてましたし」
観察力高くない!?
思わず心の中でツッコむ。
「それで……」
リリーナがさらに身を乗り出す。
「このこと、家のお兄は知ってるんですか?」
「いや」
レインは首を横に振った。
「レッドは知らないはずだ」
「そうなんですね」
……ああ。
想像してしまう。
もしレッドに知られたら――
めちゃくちゃ落ち込むだろうな……。
ちょっとだけ、申し訳ない気もする。
すると、リリーナがにやりと笑った。
「じゃあ、このことは――」
指を一本立てる。
「私たち三人だけの秘密、ってことで」
「え?」
思わず聞き返す。
「何で?」
「だって――」
リリーナはくすっと笑った。
「お兄が恋のピエロになってる姿、面白そうじゃないですか」
おい。
なかなかに酷いことを言う。
……いや、でも。
ちょっとだけ想像してしまう。
確かに……ちょっと面白いかも。
「リリーナちゃんがそれでいいなら、俺は構わない」
レインはあっさりと同意した。
「私も……いいよ」
流されるように頷く。
「よし、決まりですね!」
リリーナは満足げに笑い、拳を軽く握る。
「これからは三人で、お兄のピエロっぷりを見守りましょう!」
勢いよく手を上げるリリーナ。
レッド……。
心の中で、そっと手を合わせる。
ご愁傷様です……。




