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二七歳の男が無敵のシスコン兄から溺愛される妹に転生した異世界物語  作者: key@holder
第一章 第二部 レミリス王国編 ~辺境の村サイダール~
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第21話 フラグかも?

 豪炎を纏う死神――ゼヒド・スクワローの脱獄。その報せは、まるで冬の風のように静かに、しかし確実に俺たちの心を冷やした。生徒たちの安全を最優先にと、今日の授業はいつもより早く切り上げられることになった。


 教会の重い扉を押し開けたとき、外の空気は妙に澄んでいて、かえって不安を際立たせていた。


 俺とリリーナは並んで歩き出し、石畳の道を帰路へと進む。


「豪炎の死神ゼヒド・スクワロー……だって。なんだか、すごく怖いね」


 リリーナが肩をすくめるようにして呟く。


 その声は冗談めかしているのに、指先はわずかに震えていた。


「心配する必要はないと思うよ」


 俺は努めて軽く言った。


「フェリス、どうして?」


「この村にはSランク冒険者のレッドさんがいるでしょ。それに――お兄ちゃんだっているし」


 言葉にすれば、不思議と現実味が増す。


 そうだ。あの二人がいる限り、この村に危険が及ぶことなんて――。


「でもね、もし……もしだよ?」


 リリーナが足を止め、こちらを見上げる。


「家のお兄とレインさんが、この村にいなかったらどうするの?」


 その一言が、胸の奥に小さな棘のように刺さった。


 あの二人が、ここにいない時――。


 万が一、その隙を突くように奴が現れたら……この村は。


 嫌な想像が、頭の中でじわりと広がる。


「ねえ、リリーナ」


「なになに?」


「レッドさんって、今どこにいるんだっけ?」


「お兄はね、王都に行ってるよ。なんか偉い人に呼ばれたんだって」


「そう……なんだ」


 思考が、一瞬だけ空白になる。


 ――待てよ。


 今、レインも探索者の仕事で村を離れているはずだ。


 つまり――守りの要が、二人とも不在。


 胸の奥で、嫌な音がした。


 おい……これ、まさか。


 静かだったはずの村の景色が、急に不穏な影を帯びて見える。


「フェリス? どうしたの? なんか、不安そうな顔してるよ」


「え? あ、うん……大丈夫。なんでもない」


 無理やり笑ってみせるが、自分でも解る。声が少し上ずっている。


「ほんとに?」


「うん。心配いらないって」


 そう言いながらも、胸のざわめきは消えない。


 王都へ向かったレッドが、すぐ戻れるはずはない。


 レインも、今日は帰れないと言っていた。


 ――守る者がいない村。


 ……これ、普通にヤバくないか?


 夕暮れの空が、やけに赤く見えた。


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