第13話 知らぬが何とやら
「レッドさんと一緒に寝るなんて、嫌です」
きっぱりと言い切る。
だが――
「またまた~」
レッドはまるで堪えていない様子で、軽く肩をすくめた。
「俺みたいなイケてる男と、本当は一緒にいたいんでしょ?」
「いたくありません」
間髪入れずに返す。
食い気味に否定してやった。
「フェリスちゃん、素直になっていいんだよ?」
「私は、いつでも素直です」
これ以上ないくらい真っ直ぐな事実だ。
「ええ~、そんな~」
レッドは大げさに肩を落とし――
次の瞬間、にやりと笑った。
「俺は、フェリスちゃんを食べたいのです!」
おい。
今、完全に本音漏れただろ。
アウトだろそれ。
「レッド」
低い声が、空気を一瞬で凍らせた。
振り向くと、レインが静かに立ち上がっている。
「それ以上、フェリスが嫌がることを言ったら――」
その目は、冗談の色を一切含んでいなかった。
「殺す」
うわ、出た。
本気のやつだこれ。
表情は変わっていないのに、圧だけで解る。
これは普通に実行するやつだ。
「お、おう……わかったわかった!」
さすがのレッドも両手を上げて降参のポーズを取る。
「ちょっと冗談が過ぎたな。悪かった」
そう言って、今度は真面目な顔でこちらに向き直り――
深々と頭を下げた。
「フェリスちゃん、気分悪くさせてごめん」
……おや。
ちゃんと謝れるんだな。
「いえ、別に怒ってないので大丈夫です」
軽く首を振って答える。
まあ、半分は本音だ。
半分は……呆れだけど。
「ほんと?」
「はい」
短く頷く。
「そっかあ……よかったあ」
レッドはほっとしたように胸を撫で下ろした。
「フェリスちゃんに嫌われたら、立ち直れないからなあ」
残念だったな。
心の中で、静かに呟く。
お前は最初から、わりと嫌われてる側だ。
もちろん、口には出さないけどな。




