ストグラ 安城とゆきんこ バレンタイン
きっちゃん、喜んでくれるかな?
初めて作るバレンタインのチョコ
料理はあまり得意じゃない
けど、初めて作りたいと思ったんだ。
一番簡単というトリュフを作ってみようと思って今作っている。
溶かしたチョコレートに、生クリームを混ぜて、一口サイズに取り分ける。
冷蔵庫で冷やして、ラップで形を整えて、ココアパウダーをまぶす。
うん、これなら出来るかも!
るんるん気分でチョコを溶かし始めたのだが、、、
湯煎ってなんなのだ?
ボールに入れたチョコを溶かすんだよね?お湯に浸けるのかな?
沸騰してる方がいいよね?早く溶けるし
そう思って、僕はチョコを溶かしてみたんだけど、、、
え、なんで?チョコが焦げてる??ボールにくっつくのだ~ T T
お湯から引き上げて、回りをこすり落とす。でも、張り付いて取れない
試行錯誤しながら、何とか形を整えることは出来たのだ。
元の材料分より少なくなってしまった上に、まんまるじゃなくて形が歪になってしまった。
どうしよう、でも美味しく出来たから明日、ラッピングしても遅く無いよね?
そう思って、その日は片付けに追われることになった。
バレンタイン前日
そういえば、ALLINメンバーのチョコを用意しないとないけないのだ。
その日は、犬カフェや猫カフェ、ペールノエル、魔法少女カフェで色んなチョコがツイックスで告知のページを見て、悩む。
何を悩んでるんだ?
きっちゃん!
隣から声が聞こえて、振り替えると
肩からきっちゃんが僕の手元のスマホを見ていた。
明日、バレンタインでしょ?みんなにチョコあげたくて、全部可愛くて悩んでるのだ。
ふーん、で、どれにするんだ?
めっちゃ悩むのだ。全部あげたいけど、多すぎるし
僕が悩んでいると、その人っぽい物でいいんじゃないか?
ナリエルやしいかは犬派?猫派?とかさ
おー、なるほど。きっちゃん珍しく冴えてるのだ!
そりゃー何処かの誰かさんとは違うからなw
いつものやり取りをしていると、
雪ちゃーん!
離れた所からつっきー先輩がこちらに走ってくる。
良かった、今日会えて
はい!雪ちゃん、安城くんも
つっきー先輩はそう言って、紙袋から袋の包みを渡してくれた。
それは、手作りであろうブラウニーとチョコ。とても凝っていて可愛くて形が整っている。
わぁ!ありがとう、つっきー先輩!
これつっきー先輩が作ったのか?
うん、簡単なやつだけどね
すごいのだ!とっても綺麗なのだ~
そう言ってくれて、ありがとう!
僕はあまりに可愛いラッピングにニコニコしてしまう。
つっきー先輩は明日は起きてくるのか?
明日は用があって、だから今日会えて良かったよ~
そっかー、今日は何時まで起きてるのだ?
んー、あと、2時間くらいかな?
分かったのだ!じゃあ、あとで僕も渡すのだ!
分かった。じゃあ、あとでね、雪ちゃん
バイバイと手を振って、つっきー先輩と別れる。
じゃあ、買いにいくか?
きっちゃんがそう声をかけてくれる。
え、いいの!
じゃないと、ゆきんこの運転じゃあ、いつまで経っても買い物が終わらないだろ?
きっちゃんはさっさと、車を用意して乗るように促してくる。
くやしいけど、事実なのだ。
買い物に付き合ってくれて、ありがとうなのだ
いえいえ、どういたしまして
きっちゃんはふわっと笑ったように思う。
いつもの返事のはずなのに、
その感じに違和感を覚えてしまう。
なんでなのだ?
その正体はわからないまま、魔法少女カフェにまず着いた。
丁度、お見送りをしていたロギアさんがいた。ロギアさんは車から降りた僕に気がついて、雪ちゃん、いらっしゃい、と声をかけてくれた。
ろぎあさん♪
僕は大好きなロギアさんに声をかけてもらえて嬉しくてついつい駆けてしまう。
こんにちは、雪ちゃん
安城さんも、いらっしゃい
おっとりとした優しいロギアさんに癒されて、ついつい目的を忘れそうになる。
今日は限定の商品を買いにきたんですか?
そ、そうなのだ!
それじゃあ、中へどうぞ。外はまだ寒いですからね
そう言って、ロギアさんはドアを開けて待っていてくれる。嬉しくなって足を踏み出した時、足が段差から落ちそうになる。
わっ
よっと
僕は前へ倒れ混むと思って、身構えていると後ろから、
正確には腰に腕が回り、体ごと持ち上げられた。僕は動転していると、きっちゃんの声が肩から聞こえる。
相変わらず、そそっかしいな。ゆきんこは
そう聞こえて、落ち着いてくると背中越しのきっちゃんに気付く。
も、もう。大丈夫なのだ!おろせなのだ!
やだね、またロギアに突進して、怪我するのは目に見えてる
きっちゃんはそう言って、僕を抱えたままお店へ入ってしまう。どう見ても、わんぱくな子供を抱っこしているようにしか、見えないのだ。
ロギアさんはあらあら、と言って微笑ましそうに笑う。
ロギアさん、笑いごとじゃないのだ
お店には他にもお客さんがいて、見られてしまったのだ。
僕が子供みたいなのだ
僕は恥ずかしくなって、うつむいてしまうとロギアさんが頭を撫でてくれる。
なんだろう?と顔を上げると、雪ちゃん可愛い!とロギアさんに抱き締められる。
???
僕が頭の上に?を飛ばし続けていると、きっちゃんが呆れたような声で、ロギアと呟く。
だって、雪ちゃんが可愛すぎて!
持って帰りたいくらいなんですもの
ロギアさんはそう言って、ガシッと音がしそうな勢いで抱き締められる。
僕も嬉しくなって、すりすりしてしまう。
ロギア、持って帰ったら、へルアンが困るだろう?
ゆきんこもさりげにスリスリしない!いい匂いなのだぁ?
まったく、おまえは
きっちゃんはそう言って、ロギアさんと僕を引き剥がす。
ロギアさんと僕はああ、と残念な声を上げる。二人できっちゃんを見つめる。きっちゃんはため息をついて、
早く買い物を済まさないと、月見に渡せなくなるぞ?いいのか?
あ、そうだったのだ!
あらあら、それは急がないといけませんね~
雪ちゃん、続きはまた今度にしましょうw
僕はうん、と頷いて買い物を済ませることにした。
帰り際に、ロギアさんに呼び止められる。
振り替えると、ロギアさんの手に二つの包みが
早いですが、ハッピーバレンタイン!
え!いいの?
はい!大したものではありませんが、頑張って作ってみました
お口に合うといいんですが、
ロギアさんは少し照れた様子で渡してくれる。
つっきー先輩と違った綺麗なラッピングで、チョコのカップケーキ。
フォンダンショコラを作ってみたんです
食べる前に少し温めて食べてくださいね
!
え、すごいのだ!
ロギアさん天才なのだ!
いえ、そんなことないですよ?今回初挑戦なので、上手く出来ているか
ロギアさんは少し苦笑してそう答える。
そうか?前もらった物も綺麗で美味しかったけどな?
きっちゃんがそう言う。
なんだろ?
ちょっとモヤモヤするのは、、、
ゆきんこもそう思うだろう?
うん!ロギアさんの作るものは全部美味しいし、綺麗なのだ!
ホントに?嬉しい、ありがとう!二人とも
きっちゃんにそう聞かれて、相槌を打つ。
ロギアさんは本当にいい女なのだ
へルアン先輩は幸せ者なのだ
そう、ロギアさんに言ったら、照れていたのだ~。
やっぱり、ロギアさんは可愛くて綺麗で、いい女なのだ~
改めてそう思いながら、別れを告げて次のお店へと向かうことにした。
車の中、さっきのモヤモヤが再燃してきた。
一体、なんなのだ?
そう思いつつ、先ほど貰った袋を見つめる。きっちゃんがそれに気がついて話しかけてくる。
ロギアは本当に箱用だよな
この間の和菓子もそうだけど、今回のバレンタインも旨そうに出来てる
へルアンはホントにロギアがいて、幸せ者だよな
その話を聞いて、なんだか恥ずかしくなってきた。
僕はつっきー先輩ほど、可愛く作れなくて、ロギアさんほど綺麗に作れていない。
あれだけ、あげることを楽しみにしていたのに、急に自信がなくなってきたのだ。
ゆきんこ?
おーい
ん?なんなのだ?
店についたけど、どうした?暗い顔をして
なんでもないのだ
僕は首を振って、車を降りる。きっちゃんも慌てて追いかけてくる。
どうかしたのか?
なんでもないのだ。ただ、ボスにプレゼントする分をどんな豪華なものにするか、めっちゃ悩んだだけなのだ
何気ないふりを装おって、ごまかす。きっちゃんはそっか、と言ってペールノエルのドアをあけてくれた。
買い物を全て済ませて、アジトできっちゃんの車から僕の一番最初に買った車に載せ変えた。その間につっきー先輩にお返しのチョコを渡すことが出来た。
つっきー先輩のわぁ!ありがとう!、と喜ぶ姿も見れて、嬉しかったのだ
それは、間違いない事実なのだ
ただ、もやもやとした気持ちは少し残ってしまった。
きっちゃん、手伝ってくれてありがとう!
はい、コレ
ん?
もうバレンタイン、今日なのだ。一番最初
ああ、そういうことか、ありがとう
嬉しそうに受けとるきっちゃんを見て、これで良かったんだと思った。
やっぱり、綺麗で、美味しい方がいいのだ
あれは、あとで僕が食べよう
僕はそう思った。
今日もお仕事の大型をもこなし、落ち着いてきた頃、みんなに昨日買ってきたチョコを渡していく。
みんな、喜んで受け取ってくれて本当に買って良かったのだ。
ふと、人数分より多めに余ってしまったことに気がついた。
どうしようか?と悩んでいると、きっちゃんがPY横の家に置いてはどうか?と提案してくれた。
確かに、近いし次の大型にも時間的にちょうどいい。
じゃあ、行ってくるのだ
ゆきんこじゃ、事故るだろ?それに量が多すぎて大変だろし、手伝うよ
きっちゃんはそう言って、運転席に乗ってしまった。
といってもすぐ近く、すぐに着いてしまう。
あいかわらず、多いな
それは、ゴメンなのだ
手が塞がっているきっちゃんを後ろに待ってもらって、家の鍵を開ける。
僕、残りの荷物持ってくるのだ
そう言い残して、僕は残りの荷物を取りに行った。
そう、その数分
その数分の間になぜなのだ
きっちゃんが僕が作ったチョコの箱を持ってるのだ!?
部屋に入った時、きっちゃんは僕が入れておいた冷蔵庫の中のチョコをもっていたのだ。
え、なんで!
あ、これ、
何か言いかけた気がするけど、そんなことどうでもいい
早く取り返さないと
きっちゃん、それを返すのだ!
え、ちょっ
きっちゃんはひょい、と箱を持ち上げてしまう。僕はピョンピョンとジャンプして、取り返そうとするけれど、
届かないし、器用に避ける。
取りたいのに、取れなくて、段々と泣けてきた。
ゆきんこ?
ピタリと動きを止めた僕に心配そうにきっちゃんが声をかけてくる。
かえして
泣くほど嫌だったのか?
泣いてないのだ
いや、泣いてるし
グスグスと鼻をすすりながら、そう答えると目の前にはい、と箱を渡される。
え?
からかわれると思った。
なんで?
ん?なにが?
おまえ、下手だなって
いつもみたいに冗談目かして、
言うわけないじゃん
というかチョコ作ってたのか、ていうか、すげぇじゃん!
きっちゃんは改めて気付いたみたいに、すっげぇ~!と、いつものオーバーリアクションをしてくる。
慌てた僕の方がバカみたいなのだ、、、
で、そのチョコ誰に渡すの?
え、なんでそこで聞いてくるのだ!?
心の声が漏れるかと思ったけれど、、、
だって、頑張って作ってまで食べて欲しいかったんだろ?
少し拗ねたような声が聞こえた気がする。でも、顔を上げて確かめる勇気は今の僕にはない。
だけど、
きっちゃん
え?
恥ずかしくて小さく呟いたけれど、聞こえなかったみたいに返事を返すから、
勇気を振り絞って真実を告げた。
だから、きっちゃんに作ったのだ!
...
何で何も言わないのだ?
勇気を出したのに、少しバカみたいに思えてきた。
ヒョイ
僕の目の前を何が伸びてきて、すっと引っ込む。その先にあるのは、歪なチョコで、
それはそのままきっちゃんの口の中に消えた。
うん、上手いよ
きっちゃんは口をモゴモゴとしながらも、チョコの感想を言う。
僕は呆気にとられて、きっちゃんを見つめるしかなかった。きっちゃんは呆然とする僕に再び取り出したチョコを口に放り込む。
口に入ってきたことで、ハッと我にかえってモゴモゴしながら、反論しようとすると人差し指で止めた。
うまいじゃん!
きっちゃんはニカッと笑う。そして、箱を再び奪われる。
え、ちょっと!
えー、コレ俺のために作ってくれたんでしょ?
なら、俺の~
そう言って、ラッピングもしていない箱を持って走り去る。
ちょっと待つのだ~!
僕は慌てて、追いかけるとすでに車に乗っていて、運転席からヒラヒラと箱を見せる。
そろそろ、次の客船の準備してー
へルアン先輩の無線が入る。
はい、タイムアウトでした~
へらりと笑うきっちゃんにイラッとしたけれど、グッと僕は我慢して助手席に乗った。
すっと、近付いてきたきっちゃんが耳元で囁く。
今日一番嬉しい
ボソッと囁くとまた戻って、車のエンジンをかけて発進させる。
その声がとても嬉しそうで、ドキドキしてしまう。
僕の顔はきっと目はボロボロで顔は赤いだろう。
みんなにどんな顔をして、合えばいいのだぁ~
僕は頭を抱えていると、きっちゃんが笑っていてとても悔しい。
あとで、一緒に食べような
そう言って、きっちゃんは車を降りて行ってしまった。僕も諦めてみんなの元へ戻ることにしたのだった。