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読んでいただけると幸いです。

 お茶会当日、レイモンドが早くこないかと私は首を長くして待っていた。

 バタバタと走る音が聞こえ、私に声がかかる。

「ニコルお嬢様が調理室に忍び込んでお菓子や軽食をひっくり返してしまいました」

『なんでそんな事を?新しいものは作れる?』

「招待人数が少ないので大丈夫です」

『急いでお願い』


 レイモンドが笑顔で私に手を差しだす。

「今日はいい話があるんだ」

 首肯き『楽しみ』

「初めてお祖母様に会うので私は緊張しているよ」

 クスリと笑う。


 祖母にレイモンドを紹介し、婚約を申し込まれていると伝えた。

 祖母はとても喜んでくれて、賛成してくれた。

 レイモンドの両親に反対されていることを打ち明ける。

「レイモンドの両親と直接話をさせてもらってもいいかしら?」

「勿論です。助けていただけたら嬉しいです」


「レイモンドは長男なのかしら?」

「いえ、三男です」

「結婚後はこちらの家に入ってもらえるかしら?エリーの相手には当家を任せることになってしまうのだけれど」

「私は精一杯努力したいと思っています」

「そう、ありがとう」

 祖母の目尻に涙が浮かんだ。


 ニコルが全身泥だらけで突然私達の前に現れた。

 レイモンドに抱きつき、その汚れた手で茶菓子を鷲掴みにしてバリボリと食べた。

 祖母は悲鳴を上げ、慌ててやって来た家人にレイモンドの衣装を綺麗にしてもらうよう頼む。

 テーブルの上にはニコルの体についていた泥が飛び散り、茶器は倒れていた。


 祖父の衣装を着たレイモンドに祖母と私は謝った。

 祖母は意気消沈して何度も謝っていた。

「気にしていませんから」

そう返してくれるレイモンドに過去の話を私から打ち明けた。

 噂ではなく、本当のことを知って欲しかった。

「それで声が出なくなったの?」

 私は小さく首肯いた。

 優しい仕草と優しい強さでレイモンドは抱きしめてくれた。


 家人達の頑張りで、レイモンドが帰る頃には服は乾き、着替えて帰っていった。



「エリー」

 首を傾げる。

「ニコルのことなのだけど・・・」

 首肯く。

「あの子をどう扱えばいいのか分からなくなってしまって」

 

 昨日、お祖母様のお茶会もニコルは駄目にした。

 レイモンドとのお茶会と同じでいきなり乗り込んで来て、お菓子を鷲掴みにして食べてみせ、お客様の見ている前で池に入りどろどろになった体で驚いているお客様に抱きついた。


「あの子はどうして私に恥をかかせたり、自分が困るようなことをするのかしら?」

『聞いてみた?』

「あの子は普段から口が重くて、ほとんど何も喋らないの。

 そんな所は父に似ているのかもしれないと思った。

『話しておかないと、お父様のようになる』

「ベイルートは幼い頃は賢い子だったのよ」

 そう寂しそうに語った。


ここにきて明かされる父の名ベイルート。

知りたくないわっ!

と言われそうです。

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