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読んでいただけると幸いです。
がっかりと肩を落としていた時、2つ上のレイモンドが「是非お茶会に招待して欲しい」と言ってくれた。
たった一人のお客様だったが、私は嬉しくて直ぐに招待した。
私は紙に書き、レイモンドはそれを読み、返事をしてくれた。
楽しいお茶会だった。
お茶会の帰り際レイモンドは「また招待してくれるかい?」と聞いてくれ、私は涙が出るほど嬉しかった。
何度も頷き、唇を動かしありがとうと言った。
残念なことに声は出なかったが、レイモンドは聞き取ってくれた。
それからは何かとレイモンドが何かと気にかけてくれた。
父の犯した事件の事がどこからか漏れた。親世代なら誰も知っている話だし、隠してはいなかったが話が繰り返される度にダニエルが殺されていくような気がした。
私が体験した過去は人には面白いのか、ヒソヒソ話され指差される。
喋れないから耳も聞こえないとても思っているのか、隠す気がないのか、色々な言葉で私は傷ついた。
そんな人達からもレイモンドは私を守ってくれていた。
自ずと私達の仲は深まった。
夏休み前の最後のお茶会をしようとレイモンドが誘ってくれた。
いつもは筆談と声の会話なのに、途中からレイモンドも筆談を選んだ。
『もし、エリーが私のことを嫌いじゃなかったら、私との将来を考えてくれないだろうか?』
『将来って?』
『私との未来を考えてくれる?』
『私なんかを選んだら、レイモンドが不幸せになってしまうわ』
『君に選ばれなくても私は不幸せになってしまう』
私の頬に掛かる髪を後へ流し、耳元に顔を寄せ囁く。
「君が好きなんだ。未来を考えて」
私の反応を見て嫌がっていないのを知ったのか、耳にリップ音を立てながら、耳にキスをした。
瞬間に顔が真っ赤になり私は何度も頷き涙した。
レイモンドは直ぐにご両親に話したが、いい顔をしなかった。
口の聞けない人をわざわざ選ばなくてもと諭され、レイモンドの方が説得されたが、一度エリーと会ってくれとご両親に頼み続けてくれた。
「説得に時間がかかるのはわかっていたことだからね。僕達は僕達のペースで行こう」とレイモンドが言ってくれた。
夏休みになり、祖母が待つ自宅へと戻った。
『お祖母様ただいま』
祖母の居るサンルームに向かうと祖母とニコルがお茶を飲んでいた。
私はニコルの存在が疎ましかったがグッとこらえ、そこに居ない者として扱った。
祖母は複雑な顔をし、孫同士仲良くして欲しいと私達2人に言った。
それは無理だと思ったが何も反応を返さないことで、答えを返した。
祖母にどう頼まれても私の心情では異母姉妹では無いのだ。
祖母は知らないのだ。あの日、父が言ったことを。
『お祖母様、着替えてまいります』
「ゆっくりしなさい」
首肯いて了承した。
婚約の年齢が高すぎると思われるかもしれません。




