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警察を呼びに行っていた家人が警官を連れ帰ってきて、ニコルは逮捕された。
レイモンドはほぼ即死だった。
ダニエルとダイアナは何も知らず眠っていたこと。
アニーは情状酌量が認められ、事情聴取のみとされた。
事件が起きてかなりの日数が経った頃、ニコルがぽつぽつと取り調べで話し始めた。
初めての殺人は四歳の頃、預けられていた家の主人で、人が簡単に殺せるのだと知った。時間をかけ毒草を集め、食事に毒を混ぜて妻と子も殺していた。
その後、私達の元に来たが、私を殺そうとして失敗して修道院へ入れられてしまった。
修道院でも食事に何度か毒草を混ぜ、全員を殺そうとしたけれど、毒草が足りず調子を崩す程度にしか出来なくて悔しい思いをしたと。
それを裏付ける祖母とレイモンドの覚書と書類が出てきた。
赤ん坊のニコルが息子夫婦の屋敷にいると、夫婦の言い争いが絶えないと思い、一度は祖父母の屋敷に連れて帰り育てることに決めた。
だが、母が逃げて来たために慌ててお金を握らせて家人にニコルのことを頼んだ。
その家人はまだ若く、子育ての経験がなかったため知り合いに預けた。
始めのうちは祖母もニコルのことを気にかけていた、だが父の凄惨な行いでダニエルと祖父が亡くなり、ニコルを気に掛ける余裕がなくなった。
私は生きているのか死んでいるのかわからない状態になり、母親に向かって『死ね』と紙に書く。
その母親がしっかりしてくれればよかったのだが、直ぐに床についてしまう。
母が亡くなり、祖父がこなしていた仕事に、私の世話で、祖母はニコルのことを記憶から薄れさせてしまう。
ニコルのことを思い出したのは預けた家人が、世話をしていた人達が不審死したとニコルを連れてきたときだった。
ニコルはガリガリに痩せ、目だけがギョロギョロとしていて、お風呂にも入ったことがないと思えるほどの見てくれだった。
祖母は家人にどういうことか尋ねたが、よくわからないとしか答えなかった。
祖母は私に隠して暫く屋敷で面倒を見ていた。
人としての体裁を整えて私に引き合わせた。
ニコルのことを忘れてしまっていたことを悔いて、祖母は愛情をかけたが、ニコルの様子はおかしなままだった。
来た当初から口を開くとずっと人を恨むことばかり言い、その恨みは私と引き合わせてからは、私に向かった。
祖母はニコルが恐ろしいと感じていたが、愛情をかければなんとかなると信じていた。
ニコルは祖母がニコル以外に目を向けると、その目が向いた方に酷いことをするようになっていった。
私をなんとしても学園に入れなければならないと記されていた。
三年あればニコルもきっと落ち着くと何度も書かれている。
けれど夏休みで帰ってきた私を殺そうとしたことでニコルをどうにもできないと諦め、修道院にニコルを入れた。
明日で最後です。




