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9,フェミニスト渾身の励まし

注;これはあくまでフィクションです。

 薫は目が覚める。


(今回の天井は木造ね……)


 あれからどうなったのか、まずは状況把握、令と奈央を探そうと起き上がる。そこにたまたま部屋の前を通り過ぎようとした、女性が薫に気づき声がかかる。


「あら!目覚めたのね、良かったわ!一日以上寝ていたから心配だったのよ!」


 その声ともに薫の方へ来た。メイだった。トンギビスタ村に戻ってきたことが分かった。

 メイは薫が寝ていたベッドの近くにあるいすに座る。


「メイさん、どうしてワタシはここに?」

「その前に体調は大丈夫?身体も痛くない?」


 そう言われ薫は確認する。と言っても感覚で痛みがあるかどうか、身体を見ようものならここでもう一回寝ることになるからだ。


「えっと……大丈夫だわ。心配かけたわね」

「無事に戻ってきてなによりよ!そうそう!令さんと奈央さんもこちらにいるから大丈夫よ!二人とレンヘムの仲間に連れられてここまで来たんですから!」

「そうなのね、こちらの方が近かったのかしら」

「そうじゃなくてね……実はオークの集落壊れちゃったの」

「えっ?!」

「令さんが言うには……薫さんたち、レンヘムと戦闘したのね?その時に洞窟内の壁の破壊が多くて天井、山が潰れたらしいわよ」


 薫は思い出す。終盤の方は壁を破壊しまくり、軽く広場になっていた。当然耐えられるわけもなく崩壊したのだろう。


「集落にいたみんなは無事なの?」

「令さん奈央さんとリーダー?っていうものが迅速に避難誘導したみたいだから全員無事よ」


 それを薫は聞き安堵する。戦闘で犠牲が出てしまっては元も子もない、殺生せずがモットーでいくと決めているのだから。


「……ただね、とりあえず令さんの提案でオークたちも一時的にこの村にいるのだけど、出ていってほしいのよね~」


 メイは窓を見ながら黄昏るように言う。


「……どうして?」

「急に大人数来られたら誰だってびっくりするわ。それに行く当てもない感じなんでしょう?レンヘム今は弱ってるからいいけど、もし元気になったら荒らされそうだし、困るのよね~」

「……レンヘムは今どこにいるの?」

「使っていない倉庫で休ませているわ、人間の家じゃ狭いでしょうから」

「会うことってできる?」

「大丈夫だと思うけど、平気なの?」

「ええ」


 メイに不思議そうな顔で見られるも、薫は気にせずにベッドから降り、部屋を出た。



 トンギビスタ村、こうして見渡すことが薫は懐かしく思えた。前より人通りは多かった。しかし笑顔はなく不安げで焦るように足取りはせかせかしていた。そこに男性の姿は見えない。またいつ襲われるか分からないからだ。


(メイが言っていることは間違っていないわ、だけど……!)


 遠くまで見渡すと、少し離れたところにオークたちがいることに気づいた。その近くには大きめな倉庫のような建物があり、メイが言っていた倉庫だろうと思い、向かった。


 到着すると、仰々しい光景だった。倉庫前の敷地に約200体のオークが地面に座っていたり寝っ転がっていたりしていた。よくよく見ると負傷しているものもいた。生存はできたみたいだが、オークの作った洞窟の通路は広いとは言いけれず、逃げる時に追ったケガだろう。薫はそう推察し申し訳ないと感じる。

 オークたちの治療を手伝っていたのだろう、奈央が薫が来たことに気づき側に向かう。一般のオークの身長は大体2m前後、小柄で華奢な姿がより際立っていた。


「か、薫さん!無事なんすか?!心配だったっす!」

「ごめんなさいね、長いこと寝てたみたいだったのよね?」


 遅れて令も薫のもとに来る。


「薫さん、ご無事でなによりです!」

「つかさちゃんも元気そうね!二人はケガとかなかった?」

「だ、大丈夫っす!自分は大丈夫なんすけど……」

「何名かのオークたちが負傷してしまい、私たちはその治療をしていました、事情は把握していますか?」

「……ちょっとだけね、詳しく教えて貰える?」

「分かりました」



 あの日の夜、薫とレンヘムが消えた後、洞窟内はすぐに異音がし、令と奈央は崩落すると直感的に思い、駆け付けたリーダーとともに洞窟から出るように指示を出した。人間たちは集落の外側に部屋があったので難なく出られた。しかし女性オークや内側に住んでいた者たちは、崩れる音が恐怖を駆り立てられ、急いで逃げようとした時に転んだり、途中で詰まり通路の壁に押されたり、それで負傷してしまったものが出た。崩落は、全ての部屋の壁が壊れたわけでは無かったのでそれが支えになったおかげが、猶予があり誰も巻き込まれることはなかった。

 令はオークたちにバフをかけて速く逃げてもらおうと思ったが、急に慣れないスピードになってしまったら転倒するものが増えると考え、呪文は使わなかった。その代わりに避難の指示出しを率先して行った。

 奈央は崩落するギリギリまで、オークたちから言われた各々の必要なものを回収して届けてを黒魔法で繰り返した。


「そうだったのね。二人ともしっかり頑張って偉いじゃない」


 薫がそう言うと二人は申し訳なさそうな表情で話す。


「これぐらいしか出来なかったので、それより薫さんが昏睡するくらい負担えおかけてしまって……」

「じ、自分ももっとレンヘムを抑えていたら……」


 きっと二人は再会するまで申し訳なく感じていたのだろう、それを感じ取り薫も申し訳なく感じる。

 しかし、それを薫は笑顔で返す。


「反省会は後でキッチリやりましょ!ワタシにもあるもの!それよりもオークたちが起これている状況をどうにかしないと!一日もこの状態だったんでしょ?」


 令と奈央は薫の意図をくみ取り切り替える。


「そうですね、洞窟は完全に崩落して埋まってしまい、復旧するにしても相当の時間がかかるとリーダーさんが言っていました」

「じょ、女性オークさんたちが、この野ざらしを嫌っていて早く何とかしてほしいって言ってるっす」

「当たり前よ!しっかり休みたいものね!肝心のレンヘムは?」


 薫のその言葉を聞き、令たちの表情が再度曇る。


「その建物の奥で休んでいます。起きてはいるのですが……」

「そ、その……多分落ち込んでいるっす……このような状況になってしまって……」

「……そう、わかったわ。レンヘムにところに案内してもらえる?」


 薫の真剣な表情で答える。令たちは察し、真っ直ぐレンヘムのところに案内する。


 使っていない倉庫、メイがそう言っており、中の日当たりは悪かった。ただ風通りはよく心地いい風はなびいてきた。入ってすぐ何名かの女性オークが休んでいる。下には申し訳程度の藁が置いてある。そして奥に、レンヘムの影があった。近くにまでに行くとリーダーがいることに薫は気づく。


「あら、リーダー!レンヘムのことしっかり見ていたのね、流石だわ!」

「何かあったようのためにここにいるだけですよ。それにレンヘムからの指示を待っているので……」


 リーダーは愛想笑いで答える。その様子は少し疲弊していた。

 薫はレンヘムに顔を向ける。


「レンヘム!起きているの?!暗くて分からないの!」


 薫は噓をつく。レンヘムがうつむいてしょげているように座っているのは分かっていた。薫なりの道場破りだ。


「……起きているわぁ。カオルちゃんそんな大きな声出さないでぇ……」

「なんでそんな元気ないの?!ケガそんなに痛かったかしら?!」

「……大丈夫よぉ、ツカサちゃんにもしっかり治療してもらったからぁ」


 薫の何気ない煽りもレンヘムには効かなかった。


(どれだけ落ち込んでいるのよ!こりゃ大変ね!)


 薫は長くなることを悟り、その場に胡坐あぐらをかく。正座をしたいところだが男になってからし辛くなったため、この座りが楽だった。


「つかさちゃんなおちゃんごめん、一度はけてもらえる?」

「分かりました」

「り、了解っす」


 二人は素直に従い倉庫を後にする。


(こういう時の二人は察しが早くて助かるわ)


再度レンヘムを見直し、


「それで?レンヘムたちは今後どうするの?」

「……」


 レンヘムは無言だった。相当メンタルの方にダメージが残っているらしい。薫は、リーダーが疲弊している意味がなんとなく分かってきた。

 薫は声のトーンを落とし、落ち着いた声色で話す。


「……レンヘム、あなたは何に落ち込んでいるの?」

「……全部よぉ……全部ぅ……」

「でもあなた、今後どうするか決めなきゃいけないのよ」

「……アーシには無理よぉ」


 レンヘムは子供のように落ち込み、拗ねていた。上の立場になったことのない薫でも、なんとなくレンヘムの今の気持ちは分かる。集落を崩壊させた一番の原因はレンヘムだ。そのことを感じているはずだ。そんな今の状況で指示を出して従ってもらえるか不安なのだろう。


(でも今の野ざらしの環境が一番サイアクよ!)


 この状況をどうしたものかと薫は考え、閃く。


「リーダー!今後どうしたい感じ?」


 自分に話がくると思わなかったのか、リーダーは驚いた。


「オレですか!?オレはレンヘムの……」

「いいから!いいから!リーダーの意見が聞きたいの!」

「と言われましても……こんな状況、オレの頭じゃ……」

「ワタシも難しいわー!でもとりあえずお金があったらきっとなんとかなるわ!」

「オカネ?ですか?なんでしょうそれ?」

「人間と色々なものを交換できるものよ!たくさんあればたくさん交換できるわ!」

「そ、そうですね……?」

「とりあえずオンナオークを王都に売っちゃいましょう!きっと珍しがって高値デ売れるわよ!」

「……薫さん、何言って?」

「数率いるの大変でしょ!売っちゃえばいいのよ!そうすれば……」

「そんなことぉ!できるわけないでしょぉ!」


 怒声が倉庫に響いた。レンヘムからだ。


「カオルちゃん、何口走ってるわけぇ!」

「なによ。元気あるじゃないレンヘム、良かったわ!冗談よ!そんなことできるわけないからね!」


 薫はしてやったりの表情でレンヘムを見る。レンヘムは驚いたような変な顔で薫を睨んでいた。


(でも変なことするもんじゃないわね、ところどころイントネーションおかしかったわ!)


 薫の笑みにちょっぴり冷や汗を浮かべながら。

 そして薫は言葉を続ける。


「ほらいいの!?あなたがパッパッと決めないとワタシや村長が変な要求するかもしれないよ!」

「そうねぇ、そんなのたまらないわぁ!……でもアーシもぉ、どうすればいいか分からないわぁ…それにみんなアーシのこと聞いてくれるかしらぁ……」


 レンヘムは再度うつむきそうになる。その前にリーダーが口を開いた。


「レンヘム、あの時も言ったけど、我々にはあなたしか長は考えられない。他の連中は文句は言うかもしれないけれど、結局自分では決められない……だからこんなことで長を変えたいなんて思わない。レンヘム、あんたは口は悪いし男を嫌ってるからこっちも話しかけ辛いけど、なんだかんだみんなあんたことある程度は慕っているんだ、今日までこうして率いてくれたこと、少なくとも俺は感謝してるよ」


 リーダーの力のこもった言葉に周りにいたオークたちも頷いていた。


「……あんたぁ、言うときは言うよねぇ……」

「テキパキハッキリした性格が良いって言ったのはレンヘムでしょ」


 薫はふたりのいい雰囲気に妬けた。そんな時、令から念話が飛んでくる。


(薫さん、今よろしいですか?)

(うん、大丈夫よ。どうしたの?)

(ちょっと村の周りの森を散策してまして、蔦の植物がいくつか見つけ、これを使って簡易テントにようにできないかって、奈央さんが伝えてほしいと)

(……なるほどいい考えね!流石!こういう時男の子だった知恵が役に立つものね!さっそくレンヘムに伝えるわ!)

(お願いします!)


 そんな念話の合間もレンヘムとリーダーはまだぎこちない表情で見つめあっていた。薫はわざと咳払いしながら遮る。


「おほ!おほ!おふたりよろしいかしら!?今つかさちゃんなおちゃんに言われたのだけど…」



 こうしてオークたちは急いで柱になる木材、屋根の蔦、葉っぱを集め応急テントを完成させた。

 薫、令、奈央、レンヘム、メイを交えて会議することも決まった。

 これは薫の発案で、やはりここは一度話し合いで諸々を決着してしまおうと思ったからだ。人間たちの不満、オークたちの現状、どうまとめたものか薫は精一杯考えた。

鴨鍋ねぎま:誰だってそしてへこむ時はいつだって子供っぽく見える、なんでなのでしょうね

赤烏りぐ:どんな人にも良いところって絶対あるしそれを見てくれてる人っているんですねぇ〜 他種族間の絆もそう遠くはない!

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