88,箱入り令嬢の奇策と失策
「ここがビルコン山脈採掘場になります!」
ジーエは高らかな声が、冬のすんだ空気に響く。
令たちはジーエに案内され、洞窟にやってきていた。
今朝、各自朝の支度を済ませ待機しているとジーエがやってきた。ちなみに今回の朝ご飯はシチューだ。
「皆さま、おはようございます!ニージャ様に聞いて参りました!」
各自テーブルに集まる。
「魔石を回収したいとのことだったのですが、実は問題がございまして……」
「問題……?」
ワンミが首をかしげる。可愛い。
ジーエは気にせず、進める。もっと見惚れる時間はないのか。
「はい!実は我々が使っていた洞窟なんですが、ドワーフに占拠されてしまいまして……」
「ドワーフ?」
令は初めて聞く単語に質問する。ジーエは意気揚々と答える。
「ドワーフとは種族のことです。人間族と違い、身長は小さいですが力があります。洞窟内で自由に動けることをいいことに占拠されてしまいまして……しかも彼らは非常に強力な種族、人間が歯向かうことは不可能なのです……なので申し訳ありませんが……」
「構わないわ!その洞窟取り返しにいきましょう!じれったくて、早く行きたいわ!」
薫が立ち上がる。おそらく本音が漏れる辺り、ジーエにやきもきしているのだろう。
ジーエはオーバーリアクションのように手を動かしながら、
「いえいえ!先ほども言いましたがドワーフは非常に強いのです。貴方がたの実力もあるのかもしれないのですが、非常に危険なので辞めた方がいいかと!」
令は心の中で念話と発し、
『奈央さん、どう思いますか?』
『ぶっちゃけきな臭いです』
『分かりました』
令は一呼吸整え、
「構いません。ドワーフからその洞窟を奪還してみせます」
「ええ……?」
令はあえてこの択を選ぶ。
相手は驚く。本来なら本当にドワーフが脅威なら恐怖の顔をするが違う。
(どうする……?)
「……分かりました……ではその洞窟に案内します!」
ジーエは以外とすんなり切り替えた。
薫は楽しそうに立ち上がり、出発の準備を始める。
こうして洞窟に向かった。
(さて……)
洞窟に着き、令はこのきな臭いカードをどう打開するか、頭を捻る。
『奈央さん、何か気づいたことはありますか?』
『あの村と隣接している洞窟があったのも関わらず、この洞窟にきました』
『そうですか……』
ますますきな臭い、しかし魔石は手に入れたい。
『とりあえず目的果たして早く帰るのはどうですか?寒いですし!ワンミがずっとくっついて来るので!』
可愛い理由。
『分かりました』
とにかく慎重に進むしかない。今回の目的は貿易よりも魔石の入手。クルギアスラ村以上にきな臭い村は令も早くおさらばしたかった。
ドワーフには申し訳ないが、戦闘に関してはなんとかなる。もちろん令も頑張るが、ドラゴンを一人で討伐した奈央がいる。
「健闘を祈ります!」
ジーエに見送られ、令たちは慎重に足を前に進める。
洞窟は入ってしまえば、トンギビスタ村の洞窟と見た目はそんなに変わらない。違うのは気温の方だ。凍えるように寒く、令はポケットにあるカイロを手に取る。
昨夜カイロを作って正解だった、後ろを見ると薫も同様に震えながらカイロを手でかみしめている。
令は空いてる左手から火の玉で周りを照らしながら進んでいく。
洞窟をどんどん深く入っていく。すると少しずつ寒さは和らいできた。
洞窟は行き来しやすいように広めに作られている。
令は周りの気配を勘ぐるが静か。
どんどん進む。300mくらい潜っただろうか。
静かな洞窟を進む。
まだ目的のドワーフとは遭遇しない。
どんどん潜っていく。かなり深くまで進んだ気がする。
すると、
「皆さん、行き止まりです」
「あら、ドワーフいないじゃない!」
「令さん、薫さん、静かすぎます。ワンミも気をつけて」
「うん」
「確かに言っていたのと違うわね……だけど見てよこれ!キラキラしているわ!」
薫が少女のように喜んでいる。その先を令は確認すると、細かな魔石が大量に散りばめられていた。
薫が壁に火球ライトを近づけながら、
「これが魔石よね?火に反射して凄い綺麗だわ!」
「……!みんな危ない!」
奈央が声を荒らげた瞬間、地面が揺れる。
(え?)
瞬間、上から岩のなだれが起こる。
「つかさちゃん直撃!」
薫に押され深部の横壁に激突する。痛いが薫が魔法を使っていなければ、令はなだれに巻き込まれていた。
岩なだれはすぐに止んだが来た道が封鎖されていた。閉じ込められた、令のみ。
「皆さん!大丈夫ですか?!」
「あ、つかさちゃん無事でよかったわ!待ってね今これ壊すから!」
「待って薫さん!ドワーフ!先に対処!」
奈央の掛け声と共に、薫たちの気配が消えていった。ドワーフと戦闘をしているだろうか。
だとすれば早めにこの岩なだれをどかして合流しないといけない。
令は安全を考慮して雷魔法を使用する。
「かみなり!」
なだれした岩々に激突する。しかしびくともしない。
「そんな!」
令の攻撃魔法が通じない。令はバフ魔法に特化しているとはいえ、攻撃魔法もある程度使え自信があった。
もう一度、
「かみなり!」
掛け声こそ、ひ弱に思えるかもしれないが、イメージを強めこれでもかと威力を高めている。
しかし岩々は焦げたように色が変化するだけで何も動かない。
「どうして!」
令は完全に閉じ込められた
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