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87,箱入り令嬢は冬の町

「ようこそ!村においでくださいました!」


 令たちを対応する者は気さくな人だった。

 40代くらいだろうか、かっぷくがよく白ひげを少し生やしている。恰好は動物の毛皮に木の皮を編んだような防寒着。それをフードのように頭を覆い寒さ対策している。



 敵意、令たちもそれに対応するように待ち時間を利用して馬たちを移動させた。

 村から少し離れた、背の低い木々が並ぶ隙間を見つけかまくらを作る。

 奈央から作り方を教わってきている。


(水分を少し含ませる……)


 そうすることで雪同士が奈央とワンミのようにくっつく。

 何かを建造するのは慣れている。令は集中し、馬3頭が余裕でくつろげるぐらいの大きなかまくらを作っていく。

 かまくらを3重構造にしてみた。内側を柔らかい雪で、次に氷のように頑丈で、外側は雪を氷を半々して風で削られないように。ただ暖かさは残しながら。

 かまくらの中に、一緒についてきていた奈央が水クッションをおいていく。馬たちは喜んでそちらに向かっていった。

 かまくらに溶けないように魔力のコーティングを施す。これで数日は持つだろう。何かあってもいいように。温風がでるヒーターのような魔法おいていく。


(あとは……)


 結界を張る。令は魔物・動物が入れない結界を、奈央は人が入れない結界を施す。

 これで大丈夫だ。



「この村は素晴らしいです!隣にあるビルコン山脈のおかげで私たちの生活は成り立っています!」

「は、はぁ……」


 門を通り、奥へ進んでいく。

 薫は少し圧のある雰囲気に参っているようだった。

 令たちにアズエ村を紹介している人、名前はジーエ。食い気味に自己紹介を受けた。


「街も美しいでしょう!雪に負けないような石の造りとなっております!」

「どうやって作られたのですか?」


 令は問う。単純に興味があった。


「ありがたきご質問!これはこの街の建築家たちが丹精込めてひとつひとつ丁寧に行ったものになります!この舗装もであります!」

「魔法は使わなかったのですか?」

「とんでもない!手作業で行うから美しい街が出来上がるのです!」


 ジーエは楽しそうに解説してくれた。

 奈央はジッとジーエを見ていた。怪訝そうに。そんな顔をワンミはフニフニと遊んでいる。可愛い。


「さぁさぁ!立ち話は寒いですから早く中に入りましょう!」


 そう言ってジーエは少し早く歩く。

 ほどなくして大きな家にたどり着く。


「こちらが来客者用のハウスになります!中は温めてありますよ!さぁさぁどうぞどうぞ!」


 令たちは左右に開く扉を開ける。


(すごい……)


 中は木造で出来ていた。ログハウスのようになっており、テレビの紹介で見たような美しい作りが目の前にあった。

 外側は石、内側は木造にすることで寒さが中に入らず、温めた熱が逃げない。

 1階はすぐに大きなリビング、奥にキッチンがあるだろうか。2階に寝室がある。

 ジーエはリビングにある大きなテーブルに招待するように、


「さぁさぁ!遠路はるばるようこそおいでくださいました!ゆっくりおくつろぎください!今飲み物を用意します!」


 令たちは防寒着を脱ぎリュックに置きながら各自座っていく。


「かなり進歩している感じね」

「はい。建物は王都より発展していますね」


 王都は王宮以外が質素な木造建て。


「ワタシ、あれ苦手だわ……」

「商人気質な方ですね。したたかなことは仕方のないことです」

「見たことあるの?」

「父は商人……やり手のビジネスマンと常にバトルしていたとおっしゃっていました」

「それは大変ね……」


 薫は想像しげんなりする。よっぽど商人系が苦手なようだ。


(表は気前よく、何か裏があるか……)


 令は冷静に周りを見渡しながら、分析していく。

 暖炉が暖かい。薪が温かみの色を出しながら燃えている。

 装飾はあまりない。そのシンプルさが逆に心を落ち着かせていく。


「さぁさぁ!お茶をどうぞ!」


 そう言って久しぶりにしっかり作られたコップを見る。


「しっかり作られたコップですね。どうやって作ったのですか?」

「お目が高い!これも石ですよ!石を粉々に砂のように砕き焼いて作られたものです!」

「そうなんですね、ありがとうございます。お茶はどんな葉をつんでいるのですか?」

「これは街の外に生えている木の葉からつんだものになります!短い夏のうちにしか取ることの出来ない貴重なものです!」

「なるほど、ありがとうございます」


 かなりレベルが高い。王都ではトンギビスタ村からから輸入してやっと味のある飲み物が作れる。


(これも山のおかげ……?)


「いやはや、まさかこの街に観光される方が来るとは!冬であることが悔やまれますな!」

「観光……?」


 薫が顔をしかめる。令は顔色を変えずに、


「いえ、私たちは観光に来たのではなく……」

「それでしたら旅の途中でしたか!いやはや疲れたでしょう!ゆっくりお休みください!上に温かなベッドがあります!」

「旅でもありません。この街に用があって来ました」


 令は相手のペースに惑わされることなく話す。こちらはこちらのペースで。しかし相手を逆なでしないように。


「……この街に何か御用が?」

「はい。この街と貿易をしたいのです。それと魔石の採取を王からの命令で来ています」

「魔石?ですか?ここはビルコン山脈のおかげで石はたくさん採れますが、魔石というのは……」

「私たちはラマットン、王都の使者です。聞いたことはありませんか?」

「ラマットン……あー!前に冒険者がそのように言っておりましたね!大きな街だとか!」

「そうです。その街の使者、貿易と魔石を採取の許可をお願いしたいのです」

「……そうですか……あー、そうなりますと街長のニージャ様に聞かないといけませんね!なので明日にならないとですな!とりあえず今日はゆっくりお休みください!」

「分かりました」


(魔石を誤魔化そうとした……?)


 何が何でも休んで欲しそうにしているジーエの提案を受け入れ従う。

 令は最後まで内心ずっと疑問の顔を浮かべながら。

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