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86,箱入り令嬢と着いた村は

「これがビルコン山脈……すっごいわね……」


 薫が感嘆を漏らす。

 北風が強くふく。雪が令の服につき続ける。横凪で振り続ける雪は寒く耳が痛い。

 そして目の前には頂上を見上げようとすると首が痛くなってしまうような標高、ビルコン山脈がそびえ立っている。

 連なっているそれは東側をこれでもかと覆い、山脈を抜ければ海が見えるというらしいが到底分かるはずもなかった。

 奈央とワンミは少し寒そうにしている。防寒着が来ているとはいえ雪まで強く降っていると身が震える。


「もうちょっと行った先に村があるんだっけ?」

「はい、アズエ村という村があると王から伝えられています。ここから少し北に行ったところだと思います」

「早く暖かいところに入りたいね~いくら魔法で身体を補えるとはいえ、流石に限界があるわ」

「そうですね」


 薫の言っていた通り、各自で魔法を使って、ホッカイロのように身体の暖をとっている。魔法の特権。

 再び山に沿って移動を始める。

 馬たちはこんな凍える状況でも、顔色変えずにいる。頼もしい限りだ。


(それにしても寒い……!)


 令も火の魔法で内側から温めている。それでも寒いものは寒い。それにこれ以上魔力を上げると火だるまになってしまう。そんなことはイメージしなければならないが、上手く調整することが難しい。

 彼女たちは大丈夫だろうか、


(念話……)


『奈央さん、ワンミさん体調は大丈夫ですか?』

『あ、令さん!大丈夫ですよ……その……』

『奈央とくっついているからあったかい』

『なるほど!』

『令さん、恥ずかしいんですよ!』


 2人の想像が容易にできる。最近はワンミの方が積極的だ。可愛い。


『もし寒くなったら教えてください、カイロを作ってみたいので』

『大丈夫、奈央に引っ付いているから』

『密着しすぎだよ~!』


 可愛い。


『薫さん。薫さんは寒くありませんか?』

『あらこっちの会話は久しぶりな気がするわね。ワタシは大丈夫よ。馬が少し寒そうにしているわね。なんか気使ってあんまり表に出してないけど、多分この子寒がりだわ』

『そうだったんですね。村に着いたらカイロを作ってみます』

『助かるわ~。そうしたらワタシもひとつ貰っておこうかしら』

『分かりました』


 カイロは袋に小石か何かをつめ、魔力を注げば行けるはずだ。

 帯電しながら暖かさを放つように。

 カイロの作り方を考えながら、令は何かを発見する。


『薫さん、奈央さん、ワンミさん。前方に村らしきものが見えてきました』

『あれね!すごいわ石レンガの家があるじゃい!』


 見えてきた恐らくアズエ村。迫っていくごとに村はどんどん広くなっていく。

 クルギアスラ村よりもかなり広大に土地を使っているようだ。石レンガで出来た家のひとつひとつの間隔が空いているからだ。

 これはおそらく雪を除雪するためだろう。

 雪が降っているので寂しい雰囲気を思わせるが、かなりの人口がいそうだ。軽く町と呼べるのではないか。

 王から前情報はあまり聞いていない。というより情報がない。なぜなら一回しか訪問していないようだ。

 その1回だが、温厚に丁寧にもてなされたとのことでクルギアスラ村のようにギスギスしないで済みそうだ。

 村の木でできた正門にたどり着き、馬から降りる。


「すごい、道まで石レンガでつくっているじゃない!近代的!」

「そうですね」


 大通りは石レンガ、それ以外の所もある程度舗装されている。最初からこのようにしてあることに令は驚く。この町はかなり技術が進歩している。


「ワンミ、ちょっとごめん」

「カイロが~」


 奈央は令の方に近寄る。


「令さん、ちょっといいですか?」


 奈央は耳を貸してほしいと動作する。

 令は奈央の身長に合わせるようにかがみ、


「家の窓から監視しています。住民たちが警戒しています。そのことを伝えたくて」

「……ありがとうございます」


 それよりも奈央から降りかかる暖かい息がこそばゆい、くすぐったい。令は奈央にバレない程度にゾワゾワした。

 切り替える、令は辺りを見渡す。こちらから見ると窓に人影は見えない。奈央が言っているのはおそらく気配の問題なのだろう。

 怪しまれている。馬がいるからか。クルギアスラ村の時も見慣れない動物にいぶかしげに見られた。

 こちらに近づいてくる住民がいた。


「……この村にようですか?」

「はい、少しお話したくてこの村にやってきました」

「……そうですか。今対応するものを呼んできます」


 住民、防人か。こちらをジロジロにらみつけるように見ながら、村の中に入っていく。


「しかし立ち止まると寒いわねー!」


 相変わらず雪は止まずに振り続けている。令も身震いをする。


「今、私たちを対応する方を呼んでいるみたいなので」

「誰もいないよね……ワンミもおいで。ってくっつかなくていいよ!じゃなくて!なんだか自分らに敵意を感じるんです……」

「敵意?」


 薫が尋ねる。


「はい。怪しげに見られている……とは違った気配を魔力ごしに感じるのです。気のせいだったらいいんですが……」


 アズエ村とビルコン山脈。ここから始まる冒険は難航を示しそうだった。


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