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75,箱入り令嬢と彼女の彼女

「そ、その今日はよろしくお願いします……」

「こちらこそよろしくお願いします」


 奈央との練習の次の日、今回はワンミと二人きりでいつもの林に来ていた。主語述語だけだといかがわしく聞こえるがあくまで練習を合同でやるため、そしてこれからの冒険仲間と仲良くするためだ。

 ちなみに向こう、薫と奈央は別の場所で練習している。うかうかしていられない。

 今日も穏やかな秋晴れだ。今は地面に座りお互い面と向かい合いながら、


「その……こうして2人で話すことはあんまりなかったので……緊張しています」

「……そうですね。冒険中はどうしてもゆっくりできる時間がないですからね。今日は沢山お話できたら嬉しいです」


 ワンミは少し縮こまりながらモジモジとしている。令は最初に出会った頃を思い出す。

 ただ最初と違うのはある程度は信頼されていること。ワンミは緊張の中でも笑おうとしていてくれること。それが可愛いい。


「その……奈央から聞きました。令さんは昔、女だったって。奈央は男らしくてびっくりしました」

「そうですね。では転生……別の世界から来たことも?」

「はい。奈央から聞いています。こちらの世界とは全く異なった世界、行ってみたいと思いました。でも、そうしたら奈央が男になってしまうのかな?」

「男の奈央さんは嫌なのですか?」

「そ、そんなことはないです!ただ今の奈央がその……すごく好きなので、女同士ですごく気が合うから……」

「ふふ。きっと異姓でも大丈夫ですよ。奈央さんは奈央さんのままですから。こういったらすごく変ですが、一応私たちも女性だったので何かあったら薫さんにも聞いてください」

「はい」

「それで昨日は薫さんと何を話されたのですか?」

「……奈央さんとのやりとりをその……グイグイ聞かれました……」

「ははは……」


 少しげんなりしながら話すワンミに、令は愛想笑いで返すしかなかった。


「薫さん、そういう話好きそうですからね。ただ頼もしくていい方です。冒険のリーダー的な存在ですから」

「そ、それはもちろん分かります!」

「ふふ。薫さんは本当にいい方で面白い方ですよね。憧れちゃいます」

「そうなんですか?」

「はい。何事にもグイグイ行く姿勢は見習いたいところがあります。流石におふたりの関係を根掘り葉掘り聞くつもりはありませんが……」

「あはは……そのどっちがリードしているの?とか、将来はもう決めているの?とか……あとは……」

「大丈夫ですよ!言わなくて!」


 ワンミが遠い目をしながら答えようとしていたので、令はすかさず止める。よっぽど昨日の薫との親睦会は疲弊したのだろう。


(恋バナの薫さんは強敵だから……)


 令には好きな人がいたのかしつこく問いだされたことがある。おそらく奈央も同様のことを聞かれされているだろう。しかも向こうは交際経験がある。令も詳しく聞きたいところだが、以前に何気なく聞いた時もワンミと同じ遠い目をしていた。手遅れだった。


「なんだかんだ色々話していますね。私は緊張が取れてきました。ワンミさんはどうですか?」

「……はい。自分もです。ありがとうございます」

「いえいえ、ワンミさんが一所懸命に話してくれることが嬉しいですから」

「あ、ありがとうございます……その令さんって可愛いですよね……?」

「私が、可愛いですか?今の私は男性なので……その、当てはまるのでしょうか?」


 ワンミから放たれた言葉はもう自分には聞かないと思っていたものだった。

 可愛い、ニュアンス的に奈央に使っている可愛いとは違いそうだ。


「は、はい!その……純粋?と奈央が言っていましたが、令さんは普段の姿はカッコイイ……と思いますが、その……自分も最初はそう見えたのですが……魔法の時とか、奈央は呪文をいう時なんだかカッコイイんですけど、令さんの呪文は素直な呪文なので……なんだか可愛いなって2人で……ごめんなさい!」

「別に謝る必要はないのですよ!ただ奈央さんとそういうお話をされているのですね……?!」

「は、はい。あの……!決してからかっているとかそういうことじゃないです!」

「そ、そうですか!」


 ワンミは必死に訴える。

 その必死さゆえにかなり顔近くまで接近していることにおそらくワンミは気づいていない。


(ワンミさんは反則技です)


 こんなに接近されて、目をうるうるしながら、両手を握られながら訴えられてはかなわない。


「わ、わかりましたので落ち着いてください!ち、近くて……当たりそうです!」


 何がだ。何があたりそうなのだ。


(私は何を言って……?1違う合っている!)


 どんどん迫るワンミ。このままでは過去に令が羨ましいと、もっと欲しい思ったものが当たってしまう。


「え……?あ、ああ!ごめんなさい!」


 ワンミはやっと現状に気づき、急いで令から離れる。が、


(その動作も反則なのです!)


 ワンミは自分の胸を隠すように恥ずかしがる。それがとてつもなく可愛らしく思ってしまうあたり自分は男に心まで変わったのではなく変態になってしまったのかもしれない。

 凝視するものではない。令の片方の脳は分かっているのにもう片方の脳がそれを拒む。

 令は二日続いて悶絶することになった。


 それからしばらく2人でソワソワしたのち本来の目的、もとい令の方が確認したかったバフ魔法がワンミに正常に効果が発揮されるか確認したのだった。


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