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68,箱入り令嬢の悩み

 帰りも数々の後輩、はたまた先輩から暖かいお声をいただいた令は自宅の豪邸に帰宅する。


(今日も漫画の続きを読もう)


 帰宅後の身支度を済ませ、自室へ。あまりに広すぎる自分の部屋、父からもらった絨毯、父からもらったたくさんの家具たち、それでも十分にスペースのあるこの部屋が埋まるにはこの漫画たちをたくさん買い揃えばできるだろうか。


(その前に床が抜けてしまいますね……)


 前にどこかの雑学で知った、漫画や書物は大量にあり過ぎると家が歪んだり、傾いたりすると。いくら令の家が豪邸とはいえ、部屋を埋めるくらいにしてしまえばもたないだろう。

 令は自室な事をいいことに、薄い白のロングワンピースシャツというラフな格好でダブルベッドにポスンと横になり、漫画をめくる。


(漫画は本当に面白いです)


 今読んでいる漫画は、少女漫画で人気とい言われる典型的な恋愛漫画。クールな男子が主人公にあれやこれや手助けをする王道系。

 だが令は漫画自体を最近知ったコンテンツ。先ずは鉄板から入るのが定石だ。


(どうしてこの男性は素直じゃないのでしょうか?)


 そんな物語でも令とって分からないことが多い。老若男女に好かれやすく、才色兼備でも娯楽関係の知識は無頓着だった。それと異性に対して。後者は単純に関わりがなかっただけなのだが。

 それに気づいた令はクラスメイトに勧められ、こうして新たなジャンルを拡大している。小説とは違った面白さがそこにある。

 とはいえ、分からないままでは先の物語に影響するので、令は明日クラスメイトに聞くことを決めた。

 令は漫画を閉じ、仰向けになる。


(男性の感情は分からないものです……)


 いっそのこと、自身が男になりたい。そうすれば分からないことが分かるようになるのではないか。そんなことはまず現実ではありえないのだが。

 令はストレッチをしながら、男について考える。


(男性は毛がたくさんあるのだとか……。この脚にも……。見たことないので、不思議なものですね……。腋にも生えやすく気になる部分だとか。私にはありませんがこれはある人は女性も生えますよね。一番はひげ。父もはやしていますがあの部分に毛があるのが本当に不思議です……)


 それ以外にも体つきに関してもだ。令には盛り上がるような筋肉はつけられないが、テレビ等で見る男性はかなり体躯が良い。これはホルモンの関係だと習っているが、あそこまで変わってしまうのだから驚きだ。


(それに……)


 令は自室でいるはずのない周りをキョロキョロ確認してから、自身の股を見る。


(男性には本当にあるのですか……?)


 あるのだとしたら邪魔なのではないだろうか、令は真っ先にそういう感想が浮かんだ。



「おう!令!元気にしていたか?!」

「お父様、こんばんは。元気ですよ。前回から2日しか経っていませんから」

「急変するかもしれないだろ?!愛する娘を気遣うのは最低限なんだぞ!」


 夜、少し乱れた自室を整えた令はテレビ電話で父と対面する。

 父の話し方は常に力強く、娘である令ですらたまにびっくりするくらいはきはきと話す。体格も相応によく、筋トレを欠かさない肉体美を保有している。これも商談で舐めらないようにするためとのことだ。


「どうだ学校は?何か気になることはあるか?」

「学校は順調です。気になること……そうですね、自分と同じくらいの男性はどのような生活を送っているのかと……父は私くらいの頃はどのような生活をされていましたか?」

「今の令くらいか……特に話せることはない。あの頃は酷かったからな……」

「そうですか……では、母と出会ったのはいつの頃になるのですか?馴れ初め……?はいつだったのですか?」

「おおう!そういえばまだ令には話したことなかったか!それはだな……」


 父と母の出会い、令はそれが気になる。きっと漫画の影響を受けていることは自分でも十分分かっている。

 ただ気になるのだ。自分は大人になる時いつまでも無知のままではいられない。

 令は19歳、何事もなく不自由なく生活してきてしまったが、それが返って良くなかった。確かに会社や社会には男性があまりいないところに就職すれば影響はさほどないかもしれない。しかしそれが難しい事をだんだん分かってきている。

 父があまり男がいる環境に置きたくないと徹底していることも分かっているし、その意図も知っている。

 結局何事にもメリット、デメリットがあり、極端な行動をすればそれもまた影響が大きくなってしまう。

 男性について、異性について知り、令は将来を想像したかった。

 しかし、


「すまん!会社でどうしてもやらないといけないことが出来た!話はまた今度だ!必ずするからな!」

「分かりました。頑張ってください」


 テレビ電話はすぐに途切れる。わりといつもことだ。父はそれだけ常に忙しい。

 すっかりそんな環境に令は慣れている。水を飲みに自室を出た。


「お嬢様、テレビ電話はもう終わりですか?」

「はい、今日は。また次がありますから」


 お世話役メイドが令を見かけ話しかけてきた。

 令は自分に言い聞かせるように返した。


「今からどちらに?」

「お水を飲みたくて」

「そうですか、ではお持ちしますので自室で待機ください」

「ありがとうございます」


 メイドは微笑みながらキッチンの方に向かっていった。


(気を使われていますね……来年二十歳なのだからいい加減直さなければ……)


 それが五陸令の日常だった。

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