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64,元高校球児は村の栄光を取り戻します

 ドラゴンの討伐、それは村にとってはかなりの事態らしい。

 奈央たちが村に戻り、回復を待ってから早速会議が始まる。

 応接間の村長の席にはマーナがドカッと座っている。


「それじゃ始めるわ!マイル進行よろしく!」

「えー!どうやるの!」

「おじいちゃん!マイルにやり方教えて!」

「は、はぁ……」


 村長はマーナに変わり、補佐役としてマイルが隣にいる。元村長はその二人にしどろもどろに教えているという感じだ。


(素直に喜べないのかな?)


 奈央はその光景を少し遠くから見つめる。

 元村長の心情だけがどうしても分からない。

 奈央の父親もそんな感じだった。やはりまだ自分は子供なのか、大人になれば理解できるのか。


「奈央?どうしたの?」

「マーナのおじいちゃん、どうして他人行儀なのかなって」


 隣にいたワンミが優しく奈央に話しかける。最初に出会った頃の緊張感はもうどこにもなかった。


「きっと、自分のやったことがいけないことは自身でも分かっている。マーナと面と向かって話すことに怯えているのかな?それだけじゃないと思うけど……自分には目も合わせてくれないから」

「そっか……」


 怯える。そうなのか。奈央は納得するのにはやっぱりの自身の知恵が足りない。経験が足りない。野球ばっかしてゲーム・漫画に逃げた知識だけでは限界があるか。


(これからもっと勉強しないとな……)



 ドラゴン討伐後、村人たちは大混乱となっていた。

 特に今後の生活はどうしていくのか。どうやって生き抜くのか。

 今まではドラゴンの力に借りて作物を育てていたらしい。魔力で作物が育つらしく定期的に供給していたようだ。村人たちが味方になっていた理由が分かった。

 ただドラゴンが消えてから一番に変化したことがあった。それは気候。

 ワンミから話は聞いていた通り、砂漠化するくらい暑くなっていたのはやはりドラゴンのせい。本体が消えた影響で気温がぐっと下がっていた。

 そのことに気づいた令がマーナを始め、村人たちに持ち寄った。

 村は今後王都と貿易すること、それはお風呂関係で。

 王都にお風呂の技術の提供、そしてシャンプーの原料の抽出。

 ドラゴンとの戦闘で山の地形が若干変わり、まだ見ることのなかった原料が顔を出す形になり、しばらく掘削するには問題なそうだった。

 それを約束できる場合、村を中心に木々を一気に生やし、畑が作れるように整備すると。村は王都から、そして自分たちで賄えるだけの食料を確保できるだろうと。気候が穏やかになったことにより人間の力だけで育てられるようになったためだ。

 しかし、作物はドラゴン任せで育てていたため分からないらしい。令は王都から作物の育て方の伝授をさせると約束した。



「つかさちゃん、ワタシはいつでも大丈夫よー」

「ちょっと待ってください、私がイメージを高めているので」


 今から村を中心に森を作る。山も含めるので半径3kmくらいを一気に緑に変える。

 薫・奈央・ワンミは令に魔力提供する係。

 今回は前回作成した森の倍以上の広さ。そして森はただ作るだけでなく、木がたくさんあるエリア、木は少なめで草原にするエリア、などどうエリア分けするか令は頭の中で構築している。

 令は流石に緊張しているらしく、いつもより少し硬めになっている。


「令さん、自分もいつでも大丈夫です」


 奈央は励ますように右手を取る。

 ワンミも続き、令の左手を取りながら、


「自分も大丈夫です。よろしくお願いします」


 それを見た薫が、


「いいなー!両手に花になっているじゃない!ていうかワタシの場所なくない?!うーん、こうだ!」


 薫は令の両肩を掴む。


「皆さん、ありがとうございます。それじゃあ始めますね!森の作成!」


 令らしい素直な魔法の掛け声と共に周りが光り始める。

 今は村の中心なので劇的な変化はないものの、家の隅に花や草が伸び始める。

 山は砂地だったところを草原に変えていく。

 村から出たところは一気に木々を増やしていく。一部は畑が作れるように空き地を残しながら。

 そして最後に山から流れる川を作る。元々山の中にも水脈はあったのでこれで困ることはないだろう。


「……皆さん、ありがとうございます。終わりました」

「あら、もう終わりなの?前より時間短くできたわね」

「はい、皆さんがいたくれたおかげです。魔力を上手く使うことができました」

「せっかくなら出来た風景見れたらいいんだけど……」

「なら!」


 奈央は顔を輝かせる。


「上空に上がるだけなら、今の状態で自分に魔力お願いしてもいいですか?!」

「そっかなおちゃん飛行魔法!ワタシたちも習得しないとね~」

「帰ってからの宿題ですね」

「宿題って聞くとなんかやだ~!」


 薫と令の会話を聞いてワンミは笑う。

 奈央はイメージを高めていく。今回は4人を上に、相応の力がいる。


「いきます!」


 奈央の掛け声と共に4人の足が浮く。そしてそのまま上へ500mくらいまで上昇させていく。


「凄いわね!ホントに飛んでるの?!」

「凄い……!」

「これが奈央の見た景色!緑がいっぱい!」


 上昇していくと木々が、草原が見えてくる。山の風景もガラッと変わっている。令が変えた場所より外側はまだ砂漠が残っている。遠い将来になるころ、マーナの孫を見る頃くらいには緑が増えているだろうか。

 4人は人間離れしたその光景をしばらく堪能した。

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