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62/95

62,元高校球児は最後の力を振り絞ります

(間に合わない!)


 奈央は背後からドラゴンの翼が迫ってくるのを感じる。叩き潰す気だ。

 魔力が消耗している。今影魔法でかわすことはできるが、同時にこれ以上一気に魔力を消費すると完全に動けなくなる自信がある。それで死ぬわけではないがドラゴンがその隙を逃がさないわけがないだろう。

 どうする、しかし使わなければ直撃だ。

 奈央が苦渋の表情をした時だった。

 奈央の上を大きな火炎弾が飛来し、ドラゴンの翼にぶつかる。

 その威力は重く大きかったようで、翼は動作を中止した。


(ここまでの魔法……まさか?!)


 振り向けばワンミがいる。手をドラゴンの方に振りかざしていた。

 これを放ったのはワンミだ。

 薫と令は少し遠くにいたため気づくのに遅れている。それに二人はここまで強力な火炎弾を使えない。

 ワンミが救ってくれた。


「ワンミ!」


 土煙が消えない中、ドラゴンは続けざまに攻撃を仕掛けていた。ワンミに突進しようとする。


(ドラゴンより早く!)


 地面を駆けるだけなら魔力はそんなに使わない。

 奈央はドラゴンより速く影となり加速し、ワンミを抱きかかえその場を離脱しかわす。そのまま薫たちの元に合流する。


「ありがとう!奈央」

「ううん。こっちこそありがとうワンミ」

「二人とも大丈夫?!大丈夫そうね!速すぎて気づくの遅れたわ!」

「対応できるように私たちはバフをかけますね!」


 奈央は抱きかかえていたワンミを降ろす。

 薬の効果も効いてきたようで身体が軽くなるのを感じる。それともワンミに触れたからだろうか。

 ワンミは何もしていない。むしろ抱きかかえたのは奈央の方。不可抗力とはいえ、不覚にも暖かさを感じた。温もりを感じた。

 それが奈央の原動力となる。

 ワンミは態勢を立て直しながらドラゴンに再度構える。

 二人とも戦闘中で呼び捨てになっていることに気づかないまま。

 薫もしまっていた剣を取り出し構え、令は反射速度を上げるバフをかける。


<歯向かうな!しねぇ!>


 ドラゴンは完全に我を忘れ、目的を忘れ逆鱗状態は続く。

 ここからが最終局面だ。



「ワンミちゃんはワタシの後ろに隠れて!」

「はい!」


 薫は指示を出し、ワンミはそれに従う。令は前回の戦闘で慣れているので無言で薫の背後に入る。

 ドラゴンの突進、薫たちに仕掛ける。

 薫は自身の専用魔法、光の盾を展開し受け止める。


「うー!レンヘムの時より重すぎる!」

「魔力は大丈夫ですか!?」

「そこらはなんとかなるみたい!」


 ドラゴンは薫たちに突進し、そこに隙がある。奈央の出番だ!


「地上なら!」


 奈央はもう魔力を制限かけて動き回る必要はない。全力でぶつかる。

 魔力剣を全開でドラゴンの横っ腹を切り裂く。


<ぐわっ!>

「今だ!ワンミ!」

「はい!」


 ワンミは薫の壁から顔を出し、重い火炎弾をドラゴンの顔面に直撃させる。

 奈央はそのままキックターンし、再度ドラゴンに攻撃を仕掛けようとした時、


<のぉぉぉぉぉ!>


 ドラゴンが翼を広げる。一心不乱に翼を動かし、風を起こし始める。ドラゴンの翼は巨大で一つ一つの風が速くこれも重い。


「近づけない!」


 奈央は風で飛ばされる。


「ワンミちゃん早く入って!なんて風なの!」

「こちらの重量上げて対応します!」

「体重増えるのイヤー!」


 令の対応で薫たちは飛ばされずにすんでいる。しかしこのままでは攻撃ができない。

 それどころかドラゴンはさらに翼を乱れるように降り続けそのまま薫の光の壁にぶつける。


「みさかいなさすぎない!結構強いし!」

「くっ!」

「うう……」


 強風と強力なはたき。それにより薫たちは完全に身動きが取れなくなっていた。


「下からなら!」


 突如地面からスッと奈央がドラゴンの翼の下から現れる。

 影魔法で風を受けずに近づくことに成功していた。

 奈央はそのまま右翼を切り裂く。


<ぐわぁぁぁ!>


 ドラゴンの動きが止まる。


「ワンミ!左の翼を!」

「はい!」


 ワンミは火炎弾を放ちドラゴンの翼の皮膜を燃やし尽くす。


「奈央!尻尾を切って!」

「うん!」


 ドラゴンの尻尾が薙ぎ払おうとしていた。それを奈央は影魔法でかわし、尻尾を根本搔っ切る。

<くっ……!>


 ドラゴンの動きが完全に止まる。

 それを隙と見て、薫が令のバフをもらいながら光の魔力剣でドラゴンを八つ裂きにしていく。


<舐めるなぁぁぁぁ!>


 ドラゴンの起死回生の咆哮、薫たちは怯み後ずさりをする。


(魔力の流れが……危ない!)


 魔力回復魔法を使っているからか、奈央は空気中の魔力の流れが変わるのを感じとった。こんな時は大抵強力な魔法や技が飛んでくるのが定石と漫画で見てきた。

 薫と令はなんとかなる、防御に不安なのは、


「ワンミ!」

「奈央!」


 ワンミもドラゴンが最後の一撃を放つことを理解していたのか、奈央を真っ直ぐ見ていた。

 奈央はワンミの元へ加速し再度抱きかかえる。ドラゴンの見える位置で上に飛ぶ。


<消えてなくなれぇ!>


 奈央たちに向けて、これまでより一番威力もなにもかも最強なブレスを吐き出す。

 そのために奈央たちは上に飛んでいた。そんなブレスが地面に当たりでもしたらおそらくこの山は崩れ無くなり、クルギアスラ村も大変なことになってしまう。

 奈央はワンミと共に消える。もう最終盤、魔力管理はどうだって大丈夫だ。たとえその後が辛くなっても勝てるのなら。

 薫と令はドラゴンに接近し、バフをかけドラゴンを上空に投げ飛ばす。


「お二人お願い!」

「「はい!」」


 二人は影から戻りそのまま火炎弾を放つ態勢に入る。まだ空中にいるので不安定だが二人ならいけるはず。

 ワンミはこれまでで一番大きい火炎弾を手元に集める。奈央はそれにイメージを強める。


(合体すれば!)


 ドラゴンには申し訳ないが跡形もなく吹き飛ばしたい。あの巨体を木端微塵にするにはそれ相応の魔力が必要。ドラゴンの最後のプレスと同等クラスを。

 ワンミ単体ではそれに届かない。なら掛け合わせるように、ここの空気中の魔力を集め焼き切るだけの威力を。

 奈央はイメージを強める。火の魔法では難しい、イメージしきれない。だから黒魔法で代替えする。

 ワンミの大きな火炎弾に漆黒がまとわり、混ざっていく。

 それは黒炎のようでまがまがしい火炎弾を上空のドラゴンに放った。

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