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60,元高校球児の空中戦

(これが飛ぶ感覚!)


 奈央は背中の翼を羽ばたかせながら上昇する。

 本当はもっと飛んだ感覚の感想に浸りたいところだが、今はそれどころではない。ドラゴンとの戦闘中だ。 

 奈央は姿勢を修正しながら、一気にドラゴンにつめていく。

 上空1,000mくらいだろうか、かなり上がっている。これなら周りの心配はしなくても良さそう。


(とにかくドラゴンの魔力を消耗させる!)


 奈央はドラゴンと同じ高さまで上昇し、身構える。


<ほう、人間もそこまでの魔力を使って飛べるか。ここから地面に突進しようと思ったが、このまま空中でほふってくれよう!>

「負けない!」


 今回の奈央の目的は持久戦、それでいて自分は余力を残しつつドラゴンの魔力を削る。

 方法は様々。


(先手を取る!)


 奈央はもう一度ドラゴンの片翼を切り裂く。今度は左側。

 空中で使用する影魔法は維持が難しい。魔力がどんどん消えていく。

 それに魔力回復量が空中では減少している。どうやら魔力源はこの地球の中心にあるらしい。効率が悪くなっている。


(燃費が悪いのは使えない……)


 ドラゴンは回復しながら、ブレスを放つ。

 奈央は迎撃せず、無理せず回避に専念する。ドラゴンは立て続けに放ってくる。

 ブレスを引きつけ右へ、上へ、下へ、左へ、360度全てを活用して回避する。


(楽しい……こんなこと今思ったらだめなのに)


 空中で自由に動けることが奈央は何より楽しいと思ってしまっていた。

 こんなことは前の世界ではできない、できるわけがない。そもそも人間は飛べるいきものじゃない。

 異世界にきたから、魔法のある世界に来られたから自由に飛べる。

 もう地面に這いつくばっている必要はない。


<……!>


 ドラゴンは翼を修復し終え、肉弾戦を仕掛けてくる。音速で加速して向かってくる。


(真正面からは危ない……!)


 向こうは空中戦に慣れている。加速のかけ方を分かっている。地上の重そうな動きはそこにはない。

 奈央は上昇しながら、剣先から魔力を銃弾のように放ち牽制しながら距離を取ろうとする。

 自分は脆い、影魔法で消えることはできるが空中で消える行為はかなりの魔力を使うことになるだろう。今はとにかく低燃費で逃げることを優先する。

 奈央は直角で曲がる。魔力飛行だからできる技。


(ドラゴンはどうする……!)


 奈央は後ろ気配を探る。

 ドラゴンは翼を胴体に畳み、身をよじり始める。バレルロールしながら奈央に迫る。


(くっ……!)


 奈央は再度直角に上昇し逃げる。

 ドラゴンは再度バレルロールし、対応してから翼を広げ一気に上昇する。

 加速はドラゴンが上、小回りは若干奈央の方が有利。しかし逃げてばかりではいずれやられる。


(真似をすれば……!)


 奈央はバレルロールしながら急下降する。加速がつく。

 このままドラゴンとすれ違う。ドラゴンのかぎ爪が奈央に迫る。

 それを間一髪かわし、奈央の魔力剣をドラゴンの腹部を割く。

 翼とはまた違う感触が奈央を襲う。翼以上に嫌な感覚だった。


<舐めた真似を!>


 ドラゴンは逆鱗状態になり、血しぶきを上げながら奈央のいる方向に急旋回する。


(思惑通り、後は逃げる!)


 奈央は令の魔力回復薬をかじる。



 奈央が上空で戦闘中の頃。


「なおちゃんやってるわねー」


 薫は手をかざしながら上空を見る。


「はい、奈央さんを信じて待ちましょう」


 令は夜なので手をかざさずそのまま眺める。


「さて、やることやりますか!」

「はい」

「まずは村長!」

「なんだ?!」


 薫は村長に近づく、それに村長は驚く。どうやら薫同様上空を眺めていたらしい。


「これで分かったでしょ?ワタシたちはドラゴンと対等に戦えるの。だからワンミちゃんは渡さないわよ」

「く……!しかし対等では負けるかもしれんだろ!その時はもうおしまいだ!どうしてくれるんだ!!


 村長は薫に組みかかろうとする勢いで前のめりで話す。


「だから近づかないでよ!セクハラ!」

「村長さん、取引しませんか?」

「取引だと?」


 令は薫から村長を引き剝がすように制止させる。


「もし奈央さんが負けるようなことがあれば、ワンミさんをドラゴンに。だけでなく私たち全員食べられます。そうすればドラゴンも納得し力を得るでしょう。ただ、奈央さんが勝てばワンミさんは渡さず、あなたは村長から降りてもらいます」

「ふん、勝手にしろ!どうせドラゴン様が今から全て焼け野原にするんだ」


 村長は不貞腐れながらその場に座り込む。

「ではもしそうならなかったらあなたは、今後村のために手伝いますか?」

「ふん、できもしないことを。生きられればそれでいい」

「分かりました、行きましょう薫さん」

「そうね」


 薫たちはもう一つの目的である。ワンミ班に向かう。


「ワンミちゃんたち大丈夫~?!」

「え、あ、薫さん。はい、無事です」

「良かった、そっちのちびっ子たちも元気そうね!」

「だれがちびっ子だ!」

「あいた!」


 マイルはちびっ子呼ばわりする奈央に足を踏むという制裁を下す。

 令はそれを苦笑しながら、


「マーナさん。村長はこの戦いに勝てば村長を譲るそうですよ」

「ほんと?!なら絶対私が村長やってこの村を発展させてやるわ!」

「ぜひそうしましょう。その前に勝たないといけないので、先に村に戻ること、お願いしてもいいですか?ここは戦闘で危ないので」

「分かった!えっと……令さん、ありがとうね!ほらいくよマイル!」

「痛いよ!マーナ」


 マーナはマイルの手を思いっきり引っ張りながら下山を始めた。

 その光景を薫は踏まれた足をさすりながら、


「ほんと、元気な子たちね。今後が楽しみだわ。さて……ワンミちゃん、ちょっといいかな?」

「はい」

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