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48,元高校球児、異世界名物を拝みます

<いい加減我慢ならんな、ここまでしてくれるとは!>


 奈央たちがマーナを本来のマーナに戻してから、数分後、地の底から唸り上がるような地響きのような声が聞こえる。

 そしてそのまま地震も起き始める。


「なに!何事!」


 薫が真っ先に驚く。

 このタイミングで新たなアクシデント、何者が起こしているのか奈央には検討つく。


(マーナに取り付いていた奴……)


 姿を現そうとしているのか。だったらこれで顔を拝めることができる。

 だがその前に


「一回外に出ましょう!崩れるかもしれません!」


 令の指示で皆が一斉に避難する。

 今回全員ケガすることなく脱出出来た。

 奈央は周りを見渡すとすぐ山に異変があることに気づく。


「みんな!山が!」

「なにあれ?!マイル知ってるの?!」

「知らないよマーナ!始めてみた!ワンミはあんな山知っている!?」

「私も知りません!」


 地震が収まらないため、若干みな声を荒らげながらの会話。マーナは意識を取り戻して早々だから尚更。

 山頂付近が赤く光っている。クルギアスラ村の山は活火山と聞いていたが、


「まさか噴火するんじゃないでしょうね!」

「分かりませんが、噴火の予兆ってこんな感じです!!」

「それなら噴火しちゃうじゃない!!」


 薫と令はパニックしていた。


(噴火もそうだけど……)


 奈央は冷静だった。こんな未曾有の事態に陥ったことは一度もないが、マーナを救出できたことが冷静さを生んでいる。

 自信がついた。魔法の力があればいざとなれば逃げることは可能だろう。

 奈央は令お手製魔力回復薬を飲んだ後、途中からは魔力回復を図るための魔法を使っている。周りには感じることのできづらい微々たるもの。

 奈央の魔力はそうでもしないと完全回復出来ないからだ。


(魔力、8万超えちゃった……回復するの大変だよ……それより……)


 早く謎の声の主を拝みたい。ワンミを、マーナを、村を困らせた元凶を。

 そう思った瞬間、山頂が勢いよく破壊した。


(マズイ!)


 その影響で落石が奈央たちに向かって落ちてくる。

 ふもとにいた奈央たちに、さらに飛んで村の方に向かっている落石がある。

 とりあえず防御しなければ、全体防御魔法、奈央には持ち合わせていない。本来は薫の領分だが今はパニックでそれどころじゃない。

 防御魔法ではないが、


「みんな伏せて、落石来るよ!」


 奈央は掛け声を発しながら、魔法を発動する。

 以前レンヘム戦や薫の暴走を止めるの使用した、沼。入ったものは沈み込み一気に減速する。あの時の爆速の薫のスピードを止められたのだ、いけるはず。


(黒沼……)


 ちゃんとした名前はつけていないがそうイメージし、ワンミたちを守れるように広範囲に上空に展開する。

 すぐに落石は沼に中に吸い込まれて、沼がネットのように揺れるがやぶれることはない。強度もしっかり上げている。


「ありがとう!なおちゃん!焦ってる場合じゃないものね!」

「すみません、あまりの衝撃でてんやわんやしてまして、魔力大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫ですよ。それより山頂に」


 奈央は再び魔力充電モードに切り替えながら、薫たちに分かるように山頂を指さす。

 崩れた山頂は標高はがっつり削れたはずなのに、それに劣らないくらい巨大な何者かが漂っていた。いつの間にか地震も収まっている。


<村長、村長!これはどういうことだ……!>


 再び、地鳴りのような声が山頂から聞こえる。漂うものから発せられているのだと奈央は気づく。

 逆光になりながらも奈央は観察する。魔法で今度は光度を下げて見る。

 そのものには翼がある。上下に動かしホバリングしているようだ。

 胴体がある、しっぽがある、頭がある、角のようなものが僅かにあるだろうか、色は全体真紅をまとっている。

 ドラゴンが目の前にいる。かなりの大きさ、5mは超えるだろうか、距離が遠いのでちゃんとは測れない。


<村長、どこにいる……!>


 ドラゴンは声を荒らげながら、奈央たちも元に加速してくる。


(凄いスピード!)


 奈央の知っているゲームでは、ドラゴンは力がある代わりに鈍足なものも多かった。それは巨体ゆえの宿命。しかし目の前に迫ってくる真紅のドラゴンは違う。体幹がしっかりしているのだろう、新幹線のように迫りくる。

 こちらに突進してくるだろうか、ドラゴンの目を見る。違う何かを探しているのでそんなつもりはないように伺える。村長を捜索しているようだ。

 ドラゴンは先ほど黒沼を配置していた場所の上空で留まる。


<貴様らよくもわれの邪魔をしてくれたな!>


 近くで発せらたその声はまるで咆哮、奈央たちを気落とす。


(こいつが……!)


 それでも奈央は一歩踏み出し、


「あんたがマーナに取り付いていたのか!」

<取り付いている?違う、強化させてやっていたのだ>


 これだけで分かる、話が通じないと。

 これからどうすればいい、奈央は目つきを鋭く相手から目を逸らさないようにしながらも思考する。


「ドラゴン様!どうかおやめください!申し訳ございません!」


 後ろから息を切らしながら駆け寄ってくる老人、村長がきていた。

 そして老人は足を止めるなりすぐに蹲る、土下座だった。


「ドラゴン様!申し訳ございません!申し訳ございません!今は何卒落ち着いてください!」

<やっときたか村長、これはどういうことだ?>

「これは、と申しますと?」

<われの邪魔ばかりするものが現れたではないか。それにその女の脱走食い止めることができなかったこと、どうするつもりだったのだ。われが行かなければあのまま野垂れ死んでいたぞ>


 その女と言ったときにドラゴンは首をひょいとワンミを指した。


「申し訳ございません!それは私のミスです!処分は私だけでお願いします!本日の夜はちゃんと予定通り行いますので!」

<本当にできるのだな?>

「はい!準備は整っております!」

<なら、頼んだぞ。それが出来れば良い>

「ありがとうございます!」


 そしてドラゴンはゆっくり背を向け山頂に帰っていく。

 村長は一息つきながら立ち上がり、そして奈央たちに鋭い目つきでにらみつけるなり、


「一度来てもらおうか」


 奈央たちを村にまで連れていく。

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